赤ちゃんが指しゃぶりをする理由は? 指しゃぶりをすると出っ歯になるってホント? 指しゃぶり、いつまで大丈夫? など、指しゃぶりについての疑問を、尚絅学院大学名誉教授で歯学博士、尚絅学院大学附属幼稚園園長の岩倉政城先生に伺いました。
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そもそも、どうして赤ちゃんは指をしゃぶるのでしょう。
「人間はおなかの中でだんだんと成長していきますが、その中で、1番はじめに作られる臓器が口です。口は、人間が生きるために食べものを取り込む大切な臓器であるため、とても敏感にできています。赤ちゃんは、自らが生きるために、生まれて5分でお母さんの乳首に吸いつくことができます。口というのは触れることをいつも求めている臓器なのです」
「赤ちゃんにとって口は、外の世界を知る入口になっています。そのため、指をしゃぶったり、足をなめたり、タオルを口に入れたりするのは、生き物として自然なことなのです」
赤ちゃんの指しゃぶりは成長過程において必要なもの。いろいろなものをしゃぶらせてあげることで、世の中のことをたくさん知ることになるのだそうです。
指しゃぶりを「やめさせる」必要はあるのか
その後、赤ちゃんから幼児へと成長するにつれ、口の中で知った世界だけでは物足りなくなり、自然と指しゃぶりをやめて外の世界へと向かっていきます。そうした過程において、親が気になるのは、「指しゃぶりはいつ頃までしていていいのか?」ということではないでしょうか。
「1〜2歳くらいになり、指しゃぶりをしている姿がみっともないとか、出っ歯になったらどうしようと感じた親の中には、それをやめさせようとする人がいます。しかし、やめるようにと叱ってしまうと、子供は『自分が受け入れられていない』と感じてしまい、怖くなってしまいます。すると、自分を決して裏切ることのない、自分の指をしゃぶることにこだわってしまうのです」
親が子供の指しゃぶりを叱ったり、不満そうな表情を見せるだけで、不安感から余計に指しゃぶりがやめられなくなるのだそう。
「子供は指をしゃぶる権利を持って生まれてきます。それを奪うようなことはしないでください。大切なのは、受容してあげることです。みっともないからとやめさせるのではなく、どうぞ笑顔で抱っこしてあげてください。口が指と触れ合う100倍の触覚刺激が抱っこから生まれ、子供は安心して指しゃぶりから自由になります」
「親が自分を受け入れてくれたと感じた子供は、安心して自然と指しゃぶりよりもっと面白い絵本や友達との遊びに飛び移っていきます。それが成長です」
大人の都合でむりやり「やめさせる」のではなく、子供を受け入れてあげることで、無理なく指しゃぶりを卒業できるようにしてあげるとよいでしょう。
心細さや不安が指しゃぶりの原因に 親子関係の見直しを
それまで指しゃぶりをしていなかった子が、保育園や幼稚園へ入園した直後に指しゃぶりを始めることもあるようですが、心細くなったり不安を感じたりしたときに指しゃぶりをするのだそうです。
そんなときは、子供の不安な気持ちに親が寄り添い、優しく接することで指しゃぶりは減っていくとのこと。そして大切なのは、親が自分の子供の欠点だと思うところに目を向けるのではなく、素敵なところ、良いところ、嬉しくなるところに目を向けるということです。するといつの間にか子供を受容できる親子関係が築けて、結果として指しゃぶりが止まっていくとのことです。
「なかでも、子供を通して自分の生きがいを見つけようとする親は、どうしても自分の身代わり看板として子供を操縦する子育てになりがちです。すると、あれはダメ、これはいけないという親子関係になって、子供は受容してもらえないので、指をしゃぶる、爪を噛むなどにはまりがちになります」
「○○ちゃんのお母さん(お父さん)」としてではなく、1人の人間として自分らしく活き活きとしていることで、子供も安心し、自然と指しゃぶりも減っていくことでしょう。
指しゃぶりによる悪影響はある?
よく、指しゃぶりを長く続けていると出っ歯になるなどといいますが、指しゃぶりを続けることで何か悪い影響はあるのでしょうか。
「幼い子どものあごはまだ出来上がっておらず、形もどんどん変わっていきます。この時期、指しゃぶりにより一時的にあごの形が変わったとしても、可逆的変化といって時間が経てば元の形に戻りますので心配しなくても大丈夫です。その後、永久歯が生えてくる5〜6歳頃になると100のうち60くらいしか戻りませんので、少しは影響が出てくることがあります」
基本的には、永久歯が生えてくるころまでに指しゃぶりがなくなっていれば問題ないとのことですから、子供の成長を焦らず見守ってあげましょう。
もし4歳を過ぎても指しゃぶりが続いているようであれば、親が過剰に指しゃぶりや子供の欠点をあげつらっていないかを見直し、必要なら自治体の子育て相談や、小児科医や歯科医と話し合ってみるのもいいですね。