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親子落語入門-落語で子どもの集中力と想像力を養おう!

掲載日: 2016年8月16日更新日: 2017年7月19日青柳直子

落語は聞いて楽しいのはもちろん、子どもの集中力や想像力を養うにもうってつけなのだそう。25年以上にわたり、全国各地で「おやこ寄席」を開催している落語家の桂文我さんに、落語が子どもに、どのようなよい影響を与えるのか、お話をうかがいました。

落語の面白さに引き込まれ集中力、想像力がつく

ストーリーを自分の頭の中に描く

「何の舞台装置もなく、噺家(はなしか)の身振り手振りと耳で聞く物語だけで楽しむ落語は、お芝居などの他の演芸と比べて、お客さんが想像する『仕事量』が多いんです。お客さんがお仕事しやすいように誘うのが、噺家の仕事です」と文我さん。

「例えば『木があります』と聞いて、ある人は桜の木を、またある人は柿の木を思い浮かべます。続けて『柿がぎょうさんなって』と言うと、桜の木を想像していた人は『あ、柿の木だったんだ』と瞬時に頭の中の木を桜から柿に変化させます。このように噺家が言葉でデッサンをし、お客さんには自分の経験に照らし合わせて色をつけていくという、お仕事をしてもらうんです。」

情報が少ない、ある意味「不自由」な状況で頭をフル回転させることは、想像力を鍛えることにもなり、また「その状況で楽しめた時の達成感がすごい」のだそう。

話の展開が楽しいから、どんどん引き込まれていく

しかし、現代の子どもたちは映像やゲームに慣れすぎています。そこまで集中して落語を聞くことはできるのでしょうか。

「本来、子どもは大人以上にその世界に入り込んで、興味深く聞くのが好きなものです。グーッとお話の世界に入り込んだからこそ、時に爆発的な笑いが起きるんです。子どもたちを引き付けて離さない、そこが噺家の腕の見せ所です。」

このように「集中して想像する」経験は、子どもの心を豊かにするとともに脳の発達にもよい効果が期待できそうですね。


子どもにおすすめの古典落語

大人にとって落語は『鑑賞』するものかもしれませんが、子どもとっては『疑似体験』でしょう。子どもは大人以上に、その世界に没頭しやすいので、子どもが固唾をのんで、興味深く聞くことができるものがよいと思います」と文我さん。

古典落語は、350年以上も愛され受け継がれてきたものですから、余計な部分がそぎ落とされ、誰が聞いても共感できるものが多いですよ。」

そこで、古典落語の中から、子どもにおすすめのものを2つ選んでいただきました。

皿屋敷(さらやしき)

桂文我落語紙芝居「さらやしきのおきく」(童心社)桂文我 脚本/久住卓也 絵

家宝の皿をなくしたという無実の罪を着せられ、当主に斬り捨てられ、井戸に投じられたお菊。亡霊となったお菊は、夜な夜な井戸から現れ、「いちま〜い、にま〜い」と皿を数えます。そんなお菊の亡霊をひと目見ようと、見物人が多くなった結果、怖いはずのお菊が意外な行動に出ます。

「お菊さんの亡霊を見ようと、皿屋敷の井戸に向かって5人の男が夜の道を歩く場面などでは、子どもたちは半分震えるような目をしながら聞いています」。

七度狐(ひちどぎつね)

桂文我落語紙芝居「七どぎつね」(童心社)桂文我 脚本/渡辺有一 絵

きろくとせいはちの2人組がお伊勢参りに行く道中、草むらに投げた石が「人を7回化かす」という狐に当たり、怒った狐があの手この手で2人を化かしていきます。狐に化かされているとも知らず、一生懸命、目の前の難関に立ち向かう2人の姿が気の毒だけど、おもしろいお話。

「昔の人の旅の大変さを、今の子どもたちに分かってもらえるのも、よいことだと思います」。


子どもと一緒に楽しむための寄席の選び方と親の心得3か条

子どもが心から落語を楽しむためには、どのような寄席を選んだらよいのか、また、マナーなど親の心得についてお聞きしました。

【1】広すぎず、音響などの設備が整った会場を選ぶ
体育館など広すぎる会場では、演者の姿が観づらく、また音響設備が悪いと集中して聞く事ができません。多くても200名程度の収容人数で、集中して「聞きやすい」環境が整った会場を選びましょう。

【2】事前学習はほどほどに
落語に興味があるお子さんは、ワークショップなどで落語を習いたいという気持ちもあるでしょう。でも、子どもは「知っている→言いたい」気持ちから、噺の途中でオチを言ってしまったりすることもあるので注意。また、同じ演目でも噺家によって演じ方が異なるので、CDなどで事前に聞き込みすぎると「知っているのと違う」と口に出してしまい、自分も周りも集中できなくなるケースも。事前学習はほどほどにして、新鮮な気持ちで落語を楽しめるようにしましょう。

【3】寄席に行くのは、小学生になってからがおススメ
小学生になると、全校集会などがあり「座って黙って聞く」ということができるようになります。個人差はあると思いますが、それより小さいお子さんは、長時間座って聞くということは、なかなか難しいでしょう。騒いでしまうと、ほかのお客さんの迷惑になるということもありますが、我慢して長時間座ることはお子さんにとって、楽しい経験にはなりません。

知識を蓄える勉強は『足し算』ですが、落語のような教養を深める情操教育は『かけ算』になると思います」と文我さん。

一度、親子で生の落語を楽しんでみてはいかがでしょうか。

おやこ寄席スケジュール
2016年8月27日(土) あべのハルカス・スペース9(大阪市阿倍野区)
2016年8月28日(日) メリーゴーランド(三重県四日市市)

「四代目桂文我のおやこよせ」公式サイト

■参考文献

お話を聞いたのは…

  • 桂文我さん

    昭和54年桂枝雀に入門。桂雀司を名乗る。平成7年四代目桂文我を襲名。
    年間約300回の高座をつとめる。大阪・東京・横浜・名古屋・京都・岡山・徳島をはじめ、各地で「桂文我独演会」「桂文我の会」を開催。また、子ども向けの落語会「おやこ寄席」も各地で開催。
    ABC落語漫才新人コンクール審査員奨励賞、NHK新人演芸大賞優秀賞、国立演芸場花形演芸会金賞、国立演芸場花形演芸会大賞、大阪市咲くやこの花賞、芸術奨励文部科学大臣新人賞、芸術祭賞優秀賞などを受賞

  • 桂文我倶楽部
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ライター紹介

青柳直子

ライター暦16年。神戸生まれ・育ち・在住のアラフォー世代。芸能・インタビュー、舞台・コンサートレポをメインに、子育て関連、街取材まで“守備範囲を広く”がモットー。小学1年生の長男、1歳の長女、ヨーゼフ(ハイジの犬)似の夫+猫2匹と、毎日てんやわんやな暮らしぶり。娘が歩けるようになったのを機に、家族キャンプ再デビューを計画中。

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