子どもが寝ている間に「キリキリ…ギリギリ…」という「歯ぎしり」が気になったことはありませんか? 「体に悪影響があるのでは?」と心配になってしまいますが、じつは、子どもの歯ぎしりは成長過程によく現れるもので、特別に気にする必要はないそうです。
その理由を「歯医者が書いた歯医者に行かなくてすむ本」の著者・井出徹先生に聞きました。
大人と子どもで「歯ぎしり」の原因は違う!
睡眠中に歯と歯をこすり合わせて音を立てる歯ぎしり。子どもがしていると、「病気なのでは?」と心配になってしまいます。
「子どもが大きな音を立てて歯ぎしりしていると、驚いてしまう親も多いでしょう。でも、子どもの歯ぎしりは成長過程でよく見られる現象なので、心配する必要はありません。」と語るのは、井出デンタルクリニックの井出徹先生。
歯ぎしりの原因は「ストレス」だとよく聞きますが…?
「そもそも大人と子どもでは歯ぎしりの原因が違うのです。確かに大人の歯ぎしりは、ストレスだったり、姿勢の悪さに起因する上顎骨のズレなどから発生したりします。でも、上顎骨が成長過程の子どもは、歯の噛み合わせを自分自身で調整するために無意識のうちに歯ぎしりをしているのです。」
大人と子どもでは歯ぎしりの原因自体が違うのですね。幼児の約20%が歯ぎしりをするというデータもあるそうです。
子どもの歯の成長と歯ぎしりの関係とは?
子どもは、12歳頃までに乳歯から永久歯に生え変わりますが、それも歯ぎしりと関係あるのでしょうか?
「子どもは、歯の成長に伴って自分で噛み合わせを調整しています。生後6カ月くらいで下の前歯が出てきて、乳歯が生えそろうのがだいたい3歳頃。この時期は、生えてきたばかりの乳歯をギシギシと噛み合わせることで、歯を使う練習をしているのです。」
「さらに6歳頃になると、乳歯が抜けて永久歯が出てきます。生え変わりの時期は、歯と歯の間に隙間ができて噛み合わせが悪くなるので、歯ぎしりすることでバランスを調整します。」
「9歳頃になると、前歯の4本と奥歯の6歳臼歯がうまく噛み合うようになってきて、12歳頃にようやく親知らず以外の永久歯が生えそろいます。そういう歯の生え変わりや噛み合うようになるタイミングごとに、歯ぎしりをしながらコンディションを整えていくのです。」
数年の間で激しく歯が生え変わる子どもだからこそ、噛み合わせを調整するための歯ぎしりが必要なのですね。
歯ぎしりが「できない」子どもも急増中!
子どもの歯ぎしりは成長過程で必要なことなので、特別な対策をとる必要はないと井出先生はいいます。それよりも問題は「歯ぎしりができない子どもにある」のだそう。
「生活が便利になった現代社会では、子どもたちが体を十分に動かす機会を失っています。そのため、運動能力の低下や姿勢の悪さなどに起因して頭蓋骨や首の部分が劣成長し、上の歯が下の歯に完全に覆いかぶさっている子どもも増えています。すると、そもそもうまく歯を噛み合わせることができず、歯ぎしり自体ができないのです。」
井出先生によると、片足立ちを5秒以上できなかったり、腕を頭上まで持っていくことができなかったりと、発育不全の子どもが増えているそう。
「つまり歯ぎしりができるのは、歯や骨が健全に成長している証拠でもあるので、しばらく様子を見てあげましょう。ただし、歯ぎしりがひどくてアゴの痛みなどがある場合は、受診することをおすすめします。」
歯ぎしりは、噛み合わせを自分で調整するための行為だったのですね。歯や骨が成長している過程なので、優しく見守ってあげましょう。