一生の虫歯(むし歯)リスクは3歳までに決まると言われていますが本当なのでしょうか? そこで、小児歯科専門の歯科医院「アリスバンビーニ小児歯科」で理事長を務める丸山進一郎先生に噂の真相を聞いてみました。
赤ちゃんに虫歯菌はいない!感染経路はパパとママ
「生まれたばかりの赤ちゃんは無菌状態」と丸山先生。
「けれど、出産直後から様々なばい菌がつきはじめます。口の中にもたくさんの菌がすみつき、常在菌となります。むし歯の原因になるむし歯菌(ミュータンス菌)も常在菌の1つで、お父さんやお母さんなど、身近な大人から感染することがほとんどです。」
むし歯菌は唾液を通して親から子に感染すると言われています。例えば、スプーンや箸、コップを共有する、大人の食べかけを子どもに与える、熱いものをフーフーしてから与える、親が口で噛み砕いたものを与える、キスをする、といった行為で感染するそうです。
それでは、3歳までに親がこうした感染行為をせず、感染したむし歯菌が少なければ、子どもは一生むし歯にならずに済むのでしょうか?
むし歯のなりやすさを決めるのは菌の多さよりも生活習慣
「確かに3歳までにむし歯がゼロだった子どもは、永久歯になってもむし歯になりにくいというデータがあります。しかしそれは、3歳までにむし歯菌に感染しなかったからというよりも、3歳がおおよその生活習慣ができあがる年齢だからです。3歳までにむし歯ができにくい生活習慣を身に付けている子どもは、大きくなってもむし歯になる可能性が低いと言えます。」
むし歯は、むし歯菌が食べ物の糖分を分解して酸を作り、この酸に歯が長時間さらされ歯が溶けることでできます。つまり、むし歯菌が口内にいても、甘いものを口にしなかったり、きちんと歯磨きをしていれば、むし歯にはなりません。
「3歳までにむし歯にならなければ大丈夫」は間違い!
「逆に言うと、3歳までにむし歯ができなかったからといって、一生むし歯ができない訳ではありません。3歳までむし歯がなかったのに、幼稚園に入って急に甘いものをたくさん食べるようになってむし歯ができたという子どももいます。」
つまり、3歳までにむし歯菌に感染したかどうかで、一生のむし歯リスクが決まるという訳ではないのですね。
むし歯予防のために、親ができること
もちろん、むし歯菌が口の中にいなければむし歯にはなりません。しかし、「一定期間だけならむし歯菌に感染しないようにすることはできるかもしれませんが、生涯にわたってむし歯菌の感染を防ぐことは、現実的には難しい」と丸山先生。
「赤ちゃんや親にとってスキンシップは大切なので、唾液によるむし歯菌の感染を気にし過ぎる必要はありません。一番重要なのは、むし歯ができないような生活習慣を子どもに身につけさせることです。」
「例えば、人工的な甘味を与えるのではなく、フルーツなどの自然な甘味のものを選ぶ、だらだらと食事をするのではなく、時間を決める、食事をしたらきちんと歯磨きをする、といったことを親が意識して、子どもに教えるようにしましょう。」
甘いものを食べる食習慣は控えて!大人も一緒に口内ケアを
とくに、甘いものはどんどん甘さがエスカレートしていくので、気を付けた方が良いそう。
「3歳までに甘い物を口にするような食習慣ができあがってしまうと、なかなか変えることができません。なるべく早いうちからと砂糖を使ったお菓子や糖分が多い飲み物などをあげないようにしましょう。」
「こうした生活習慣に気を付けたうえで、子どものむし歯菌の感染を減らしたいのであれば、感染につながる行為を控えるのはもちろん、むし歯菌の感染源となる周囲の大人が口内ケアをしっかりすることが大切。むし歯菌を口の中から完全に除去するのは難しいですが、数を減らすことができます。むし歯の治療をする、かかりつけの歯医者を決めて定期的に汚れを清掃してもらうようにしましょう。」
3歳を過ぎたからと安心するのではなく、親子でむし歯を防ぐ生活習慣を身に付け、しっかり予防したいですね。