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子どもの夢応援企画 第17回:パン職人 井上克哉さん

子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、子どもたちの夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。今回は日々の食卓に欠かせないパンを作る「パン職人」。東京都葛飾区に「ブーランジェリー オーヴェルニュ」、「ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ」の2店舗を構える井上克哉さんにお話を伺いました。

夢は格闘家!そのために始めたのがパン屋の仕事だった

中学生の頃に格闘技を始め、以前は格闘家を目指していたという井上さん。22歳の時に「好きな格闘技を続けながら働けるから」という理由でパン屋さんに就職します。

「パン屋さんは朝が早い分、終わるのも早いので、仕事が終わってから道場に通えると思って(笑)。最初はそれだけの理由で選んだんです。でも始めて2年くらいしてパンのことがわかってくると、どんどんこの仕事がおもしろくなって、もっと勉強したいと思うようになりました。ケガをしたこともあって格闘技で生活する夢を諦め、本格的にパン職人になろうと決めたんです。」

「今考えると、この仕事が自分には合っていたんでしょうね。体を動かすのも、食べるのも好きですし、自分で新しいパンを考えたりするのもとても楽しいです。だから、今も昔もストレスなく働けているんだと思います。パン職人になると決めた当初から独立は意識していましたね。いつかは地域に根付いた地元の人に愛される店をやりたい、それが新しい目標になりました。」

今でこそ、パン職人のほとんどが専門学校で学んでから就職するそうですが、当時は専門学校がまだまだ珍しかった時代。井上さんはいくつかのお店を転々としながらパンについて勉強し、技術を磨いていきました。


独立を目指して様々な店で学んだ修行時代

パン屋で修業というと辛くて大変なイメージがあるかもしれませんが、自分はむしろ楽しい方が大きかったですね。確かに立ち仕事だし、重いものも持ちますが、割と体力があったのと、早起きが苦にならなかったので、あまり大変さを感じませんでした。入ってすぐの頃はまだ格闘技がメインだったので、道場での練習の方が辛かったのがよかったのかもしれません(笑)。」

修行はサンドイッチ作りなど焼きあがったパンの加工作業からスタートし、徐々に生地を成形する麺台、窯、仕込みなどの仕事を覚えていくのだそう。またお店では、パンに関する知識や技術のほかに、人間関係の大切さについても教えられたそうです。

パン作りは一人でできるものではないので、周りと協力したり役割分担しながら作業をすることが大切なんです。仲間とコミュニケーションを取って、より仕事がしやすい人間関係を築くことの重要性についても気づかされました。どんな仕事をするのにも大切なことだと思いますが、パン職人になるのにもコミュニケーションスキルは大事ですね。」

街の人に愛される店を目指して住宅街で独立

そして2003年、念願の自分のお店をオープン。フランスパンなど得意のハード系パンを中心に種類も豊富とあって、あっという間に地元の人気店に。さらに2014年には、本格イタリアンピザが焼ける窯とカフェスペースも備えた2号店をオープンします。

「今もほとんど毎日、どちらかの店に出て成形や窯などを担当しています。うちの店では朝は5時スタート。終わりは売れ具合によって変わりますが、だいたい16時か17時頃にパン作りの作業は終了します。自分は事務的な仕事もあるので、月に2〜3日は事務作業に専念する日を設けていますね。それ以外に講習会を頼まれたり、学校に教えに行くといったこともあります。」

パン職人になって一番うれしいのは、お店で直にお客さんの声が聞けること。『このパンがおいしい』と言ってもらえるのはとても幸せなんですが、それと同時にもっと喜んでもらえるものを作らないと!と気が引き締まります。」

そんな井上さんがお客さんと接する時間と同じくらい楽しいと感じているのが、新しいパンを考えることなんだそうです。


毎月の新作発売、コンクールへの挑戦でよりレベルアップ

毎月お店では、10種類くらいの新作パンを発売しています。自分がだいたい2品〜3品考えて、あとは勉強も兼ねてスタッフに考えさせるようにしているんです。新作作りは大変ではあるんですが、もっとお客さんに喜んでもらいたいというのもありますし、自分とスタッフが進化し続けるためにも必要なことだと思っています。」

さらに、お店の新作作りとあわせて井上さんが積極的に取り組んでいるのが、コンテストへの参加。独立前から各地のベーカリーコンテストに参加し、1999年のカリフォルニアウォルナッツコンテストグランプリ受賞をはじめ、数々の賞を受賞しています。

「もともとほかとは違うパン屋になりたいという気持ちがあって、参加するようになりました。作品作りがやっていて楽しいというのも大きいです。あとは参加してみるとやっぱり周りもレベルの高い人が多くて。自分も自然とレベルアップできるのは、コンテストならではですね。」

自分の店のスタッフにも、数多くそういった場を経験して欲しいと思います。独立してからだと目の前のことに忙しくてなかなか挑戦できなくなるので、やっぱり修行中にやっておくのがいいと思うんです。それで賞が取れれば独立する際のウリにもなりますし。今のスタッフたちも仕事の合間を使って練習したり、他の人に試食して感想をもらったりとそれぞれ楽しみながら取り組んでいるようです。」

若手を育て業界全体を活性化したい

このように新作作りやコンクールに積極的に取り組む井上さんの根底にあるのは、自身のレベルアップはもちろん、若手スタッフをきちんと育てたいという気持ちだといいます。

「自分がしてもらったように、若いスタッフたちにいろいろなことを教えて、育てていきたいという気持ちは強いです。うちの店に来る子はもともと、将来独立を考えているモチベーションの高い子が多いので、できるだけそういった夢を応援したいと思っています。」

「今はこの2店舗でスタッフがより働きやすい環境を整え、一人ひとりをきちんと見ていくことが一番の目標。その上で、いいパン職人をたくさん育てて、業界全体に恩返しをしていけたらと思っています。」


子どもたちの素朴な疑問に井上さんがお答え!

ここで井上さんに、子どもたちから寄せられた3つの質問にも答えてもらいました。

新しいパンはどうやって思いつきますか?

新作パンは、いい食材に出会った時に思いつくことが多いです。この食材にあのクリームと生地をあわせるとおいしいかも…というような感じです。コンクールの時は美術館に行くと、いいアイディアが浮かんだり変わった形のパンができますね。あとは食べ歩きをしたり、ケーキ屋さん巡りをするなかから、新作のヒントがもらえることがあります。」

一番好きなパンは何ですか?

今はフランスパンが一番好きです。以前はデニッシュ系が好きでしたが年齢と共に変わってきましたね(笑)。甘いパンも好きですよ。お店で子どもたちに人気なのはチョココロネ。あとは中に生クリームが入った生ホイップあんぱんもおすすめです。」

余ったパンは食べられますか?

余ったパンはスタッフが持って帰って食べています。それ以外にも新作やコンクールの試作品をみんなで食べ合って感想を言ったりすることも多いです。それから自分の場合は品質管理のために、毎朝、数種類ずつ食べて味のチェックをするようにしています。」


ゼロから何かを生み出すおもしろさを知って欲しい

最後に、井上さんからパン職人を目指す子どもたちにメッセージをいただきました!

「パンというのは、小麦粉をこねて生地を作ってそれを焼き上げていくんですけど、そんな風にゼロから何かを作り上げることができる仕事ってあまりないと思うんですよね。それがパン作りのおもしろさでもあり、醍醐味でもあると思います。」

「しかも自分が作ったパンを食べてお客さんがおいしいと言ってくれたり、ありがとうと言ってもらえたりする。それってとてもいい仕事だなと思います。自分が考えたパンを手作りでお客さんに届けられる仕事、そんなパン作りの魅力をもっとたくさんの子どもたちに知ってもらって、将来、パン職人を目指す子が増えてくれたらうれしいです。」

井上さん、貴重なお話をありがとうございました。『子どもの夢応援企画』第18回は「プロバスケ選手」です。お楽しみに!

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お話を聞いたのは…

  • 井上克哉さん

    東京都出身。中村屋「ファリーヌ」、ビゴの店、ドンク「ジョアン」などでパン作りを学ぶ。2003年に独立し「ブーランジェリー オーヴェルニュ」を、さらに2014年には2店舗目となる「ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ」をオープン。フランス、イタリアを中心としたパンと毎月発売される新作パンなど約300種類のパンが並ぶ。各国のベーカリーコンテストでも数々の受賞歴があり、2009年にはドイツibaカップに日本代表として出場している。

  • ブーランジュリー オーヴェルニュ&ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ
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ライター紹介

石橋 夏江

編集プロダクションverb所属。編集者・ライター。趣味は、旅行と写真とスキューバダイビング。プライベート旅でも、取材旅以上の分刻みスケジュールを組むため、友達がなかなか一緒に旅行に行ってくれないのが最近の悩み…。

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