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転んでも手が出ない子どもが増加中! 原因&ハイハイの重要性

掲載日: 2017年7月20日更新日: 2017年7月21日宇都宮 薫

外遊びが大好きな子どもたちですが、小さな子どもは遊びに夢中になるあまり、転ぶことも多いもの。最近は転んだ時にとっさに手が出ず、頭や顔をケガしてしまう子どもが増えているそうです。早稲田大学スポーツ科学学術院准教授の鳥居俊先生にその原因と対策を聞きました。

転んだ時にとっさに手が出ない子どもが急増中

そもそも、なぜ小さな子どもは転びやすいのでしょうか?

乳幼児は平衡感覚がまだ十分に発達していません。また、身体に比べて頭が大きいという身体的特徴もあって、バランスをとりにくく転びやすいです」

昨今では、転んだときにケガする子が増えているというのは本当ですか?

「全国で統計が取られ始めた1970年代以降、小学校におけるケガや骨折の発生率はおよそ2倍に増えています。そして、平成28年度の『日本スポーツ振興センター』のまとめでは、全国の幼稚園や保育園で子どもがケガをしたケースの半数以上が『頭部や顔のケガ』というデータもあります。バランスを崩した時にとっさに手が前に出なかったり、手で体を支えきれなかったりして、頭や顔を守りきれないことが原因です」

転んだ時に自然に手が前に出ないのはなぜでしょうか?

諸説ありますが、赤ちゃん時代の“ハイハイ不足”がひとつの要因と言われています。赤ちゃんの頃にハイハイをあまりしないと両腕の筋力が鍛えられなかったり、とっさに手を出せなくなったりする可能性があると考えられています」


ハイハイをしないまま歩き始めてしまう子どもたち

今、ハイハイしないまま歩き出してしまう子が増えているそう。なぜハイハイ不足の子どもたちが増えているのでしょうか?

「理由のひとつとして考えられるのが、家屋構造の問題です。核家族化で増えたコンパクトなマンションなどでは、十分にハイハイするスペースをとることができません。壁や家具がすぐ近くにあるとつたい歩きがしやすいので、ハイハイをあまりしないまま歩き始めてしまいます。」

確かに、部屋が狭い場合、数歩ハイハイするだけで、すぐに壁に突き当たってしまいますね。

「『歩く』、『階段を上る』など、日常生活の中で足を使う動作は非常にたくさんあるのですが、腕を使う動作というのは、かなり限られてしまいます。そういう意味でも、腕の筋肉を使って体を支えるハイハイは、とてもいい機会です。腕と足を連動させるハイハイの動きは、“ケガから身を守る力”につながっているのでしょう」

子どもの発達を心配して、とにかく早く歩かせようとする親も多いものですが、ハイハイは子どもの成長において大切な成長過程。無理に歩かせる必要はないようです。

鳥居先生によると、最近は雑巾掛けができない小学生も増えているそう。腕を突っ張った状態で、足を動かし前に押していく姿勢はまさにハイハイそのもの。赤ちゃんの頃のハイハイ不足は、気づかぬうちに様々なところに影響していそうです。


ハイハイの機会を増やすには?

赤ちゃんにもっとハイハイの機会を与えるため、親ができるサポートはありますか?

「まずは、ハイハイをのびのびさせてあげられるような環境を整えてあげましょう。部屋の中の家具の配置などを工夫して、赤ちゃんが過ごすスペースをできるだけ広めにとってみてください。広いスペースがとれない場合は、児童館やキッズスペースなど、思う存分ハイハイできるような施設に遊びに行くのもいいですね。少し離れたところから赤ちゃんに呼びかけて、ハイハイでこちらに来るように誘導する遊びもおすすめです」

ハイハイをあまり経験しないまま歩き始めてしまった子はどうしたらいいですか?

遊びの中にハイハイの動きを取り入れるのはいかがでしょうか? たとえば、廊下の先に物をおいて、ハイハイで取りにいく速さを競うなど、ゲーム化すると喜んでくれますよ」

このような遊びを通して、腕の筋肉を鍛えたり、手と足の連動動作を発達させたりできるそう。

小学校入学前後の4歳〜7歳頃が、体の使い方を自然に身につけられる時期といわれています。このくらいの子どもは、頭で考えずに体で吸収していけるんですね。ですから、赤ちゃん時代のハイハイ期を過ぎてしまっても遅くはありません。遊びや雑巾掛けのお手伝いを通して、ハイハイ運動を取り入れてみてください」

赤ちゃん時代にハイハイをする期間が短かかったとしても、日常の中にハイハイの動作を工夫して取り入れることで、腕の筋力など体を支える力を身につけることができるのですね。子どもが転びやすくて気になっているようなら、親子でハイハイ遊びを楽しんでみてはいかがでしょうか。

お話を聞いたのは…

  • 鳥居俊准教授

    早稲田大学スポーツ科学学術院准教授。スポーツ整形外科、発育発達学。運動器の発育発達、運動器障害の予防、身体活動と骨代謝、身体活動による健康増進をテーマとして、研究・指導を行っている。日本体育協会公認スポーツドクター、日本陸上連盟医事委員。早稲田大学米式蹴球部、国士舘大学アメリカンフットボール部チームドクター。

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ライター紹介

宇都宮 薫

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディアなどへの執筆のほか、単行本(ビジネス書・実用書)の編集・構成を手掛ける。得意ジャンルは、出産、育児、健康、おでかけ、芸能、グルメなど。まち歩きとバイクが好き。

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