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ピロリ菌は5歳までに感染する…!? その予防法は?

掲載日: 2015年5月29日更新日: 2015年9月16日宇都宮 薫
胃潰瘍や胃がんの原因にもなるピロリ菌。衛生状態が良い現代では保菌者数自体は減少していますが、親から子へ、家庭内で感染するケースが多いのだとか。そこで、ピロリ菌の感染経路や子どもに感染させないための予防法について、くろさわ子ども&内科クリニックの黒澤サト子先生に伺いました。

日本人の約半数が保菌している身近な菌

日常生活の中ではあまり聞き慣れない「ピロリ菌」。いったいどんな菌なんでしょうか?

ピロリ菌とは、胃の中に住みついて胃の粘膜を傷つける細菌です。主に、幽門という胃から十二指腸に繋がる出口の部分に生息しています。ピロリ菌が発見されたのは1980年代と比較的新しく、それまでは強い酸性である胃の中に細菌は住めないと思われていました。近年研究が進み、慢性胃炎、胃潰瘍、胃がんなどの原因のほとんどはピロリ菌であることがわかってきています。」

胃に様々な悪影響を引き起こす菌なのに、意外にも発見されてからまだそんなに経過していないんですね。

「実はエジプトのミイラからも発見されているくらい、古くから人類にとって身近な菌なんですよ。感染していても症状がなかったり、胃の不調があってもそれがピロリ菌によるものだと認識しないまま生活している人も多いのが現状です。ピロリ菌は保菌者の便や唾液、歯垢からも検出されることがあります。」

「昔は、汲み取り式のトイレや井戸水などを感染経路として広がっていたため、高齢者ほど感染率が高く、日本人の約半数が感染しているとの報告もあります。しかし、上下水道が整って衛生状態が良くなってきた現代では、感染がどんどん減少していて、20代では25%くらい、10歳以下なら5〜10%以下の保菌率といわれてます。」

日本人の約半数が保菌しているとは驚きですが、生活環境が改善されたことで感染率は低下しているんですね。それでも、現代の子どもが感染する可能性もゼロではないようです。

ピロリ菌は5歳までに感染!その感染経路は?

昔に比べて衛生状態が良くなった現代の日本では、どういった経路で感染するのでしょうか?

「はっきりとした感染経路は不明ですが、胃酸の分泌が少なく免疫力の低い5歳くらいまでに、母子間など家庭内で感染すると考えられています。一度感染したピロリ菌は、生涯胃の中に住み続けます。ですから、親から子どもへの感染を防ぐことが最も大切なのです。そのためにも、トイレの後の手洗いを徹底したり、子どもへの食べ物の口移しは避けましょう。」

親に慢性的な胃の不調がある場合は消化器内科で内視鏡検査を受けることをおすすめします。ピロリ菌に感染していることがわかれば、抗生物質など3種類の薬を7日間飲むことで除菌治療をすることができます。胃の痛みがあっても、ストレスのせいなどと思い込みそのまま放置してしまう人も多いですが、ぜひ一度病院で相談してみて下さい。」

薬を飲むだけで胃がんなどの怖い病気を防げるのなら、子どものためだけでなく、自分自身のためにも積極的に考えたいですね。なお、無症状の人がピロリ菌の有無を調べてもらうには、便の中から菌を検出するという簡単な方法がありますが、そういった検査は保険適応外で自費になるんだとか。気になる人は、お医者さんと相談してみましょう。

消化器疾患だけでなく体中に影響を及ぼすピロリ菌

子どもがピロリ菌に感染した場合、起こりうる病気にはどんなものがありますか?

子どもがピロリ菌に感染すると、腹痛や嘔吐などの消化器症状を起こします。ただ、感染しても無症状のことも多いので一概には言えないですね。子どもにお腹が痛いと言われても、ピロリ菌を考えることは普通ないと思いますが、慢性的な胃の痛みを訴える場合には原因として考えてみてもいいでしょう。胃潰瘍、慢性胃炎のほか、鉄欠乏性貧血や、まれではありますが血小板減少性紫斑病、成長不良、SIDS(乳幼児突然死症候群)などもピロリ菌と関連があるという報告があります。」

ピロリ菌は胃の疾患だけでなく、体の色々なところに影響を及ぼす菌なんですね。黒澤先生によると、ブロッコリーの新芽であるスプラウトや緑茶などにピロリ菌を減少させる効果があることがわかっているんだとか。こうした食材を積極的に取り入れ、バランスのいい食生活と身辺を清潔にすることで、ピロリ菌が生息しづらい生活習慣を作ることも大切なんですね。

5歳以下の幼児期に家庭内で感染することが多いピロリ菌。特に現在症状がない場合でも、子どもへの感染予防に注意し、胃の状態が良くない人は、積極的に検査を受けて、ピロリ菌を保持していないか調べてみましょう。

お話を聞いたのは…

  • 黒澤サト子先生

    東京都国分寺市にある地域密着型クリニック「くろさわ子ども&内科クリニック」院長。

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ライター紹介

宇都宮 薫

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディアなどへの執筆のほか、単行本(ビジネス書・実用書)の編集・構成を手掛ける。得意ジャンルは、出産、育児、健康、おでかけ、芸能、グルメなど。まち歩きとバイクが好き。

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