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インフルエンザの予防接種が毎年必要な理由とは?

掲載日: 2015年11月25日更新日: 2017年5月16日宇都宮 薫

今年も流行の兆しを見せ始めたインフルエンザ。10月からは予防接種も始まっています。でも、どうしてインフルエンザは毎年予防接種をする必要があるのでしょうか? また、「A香港型」「Aソ連型」など、いくつかの型がありますが、一体何が違うのでしょう?「くろさわ子ども&内科クリニック」の黒澤サト子先生に伺いました。

A香港型、Aソ連型…インフルエンザの「型」って何?

「A香港型」「Aソ連型」などありますが、インフルエンザの型とはどういうことですか?

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで発症する病気です。インフルエンザウイルスは、直径1万分の1ミリの球形で、体内に入ると、8時間後に約100個、1日で100万個に増殖します。A型、B型、C型の3種類があり、例年流行の中心となるのはA型とB型です。」

「中でも大流行を起こすA型ウイルスには、『亜型』と呼ばれるいくつかの種類があります。A型インフルエンザウイルスの表面からは、『赤血球凝集素(HA)』と『ノイラミニダーゼ(NA)』という糖タンパクの突起が突き出ています。HAは16種類、NAは9種類あり、その突起の組み合わせによって、『H3N2』、『H1N1』 といったように型が表わされるのです。」

よく耳にする「A香港型(H3N2)」とか「Aソ連型(H1N1)」というのは、よりわかりやすくするために、それぞれの型が流行した地域名をつけた名前なのですね。

では、どうしてインフルエンザの予防接種は毎年受ける必要があるのでしょうか?


変化するインフルエンザウイルス。ワクチン接種で予防を

インフルエンザウイルスは常に構造が変化しています。大きく分けて『大きな変異』と『小さな変異』の2つがあると考えて下さい。まず、大きな変異というのは突然別の亜型のウイルスが出現することです。何十年かの周期で大きな変異が起こっていて、ほとんどの人が免疫を持たないため、世界的な大流行が起こります。2009年に『新型インフルエンザ』が大流行したのも記憶に新しいですね。」

「一方、小さな変異というのは、同じウイルス型でも常に遺伝子に小さな変化が生じることです。ですから、その小さな変異に対応するために、毎年予防接種が必要になります。」

同じ「A香港型」だったとしても、変異により少しずつウイルスの構造が違うので、去年かかったから今年は大丈夫というわけではないんですね。

2015年〜2016年シーズンから「4価ワクチン」に移行

ワクチンの中身も流行を反映して常に変化しています。WHO(世界保険機関)が年に2回会議を開いて、様々なデータから今年流行る型を推定してワクチンを決定します。日本では主に国立感染症研究所が、WHOの決めた推定株を参考にして、日本全国からのデータを元に決定します。そして毎年5月〜6月頃からワクチンを作り始めるのです。」

なお、これまでインフルエンザワクチンはA型2種類とB型1種類の合計3種類が含まれている「3価ワクチン」が用いられてきましたが、近年、B型インフルエンザの混合流行が世界的に広がりをみせるようになったことを受けて、2015年〜2016年シーズンから、これまでのワクチンにB型が1種類追加された「4価ワクチン(A型2株+B型2株)」が使われています

13歳未満は2回接種が必要。流行前に早めの接種を

ワクチンの接種量、接種回数は原則として以下の通り。小さな子どもの場合、1回の接種だけでは十分な免疫ができないので、2回となっています。

  • 6カ月以上3歳未満 1回0.25mL 2回接種
  • 3歳以上13歳未満 1回0.5mL 2回接種
  • 13歳以上 1回0.5mL 1回接種

接種してから効果が現われるまでに約2週間程度かかるので、流行が始まる前の早めの接種が有効とのことです。接種後体内にできた抗体は徐々に減っていくため、予防効果は5カ月程度といわれています。


インフルエンザの症状と予防接種以外の対策は?

しかし、どんなに予防接種をしても、100%感染を防ぐことはできないので、運悪くインフルエンザにかかってしまうことも…。

インフルエンザの潜伏期間は1日〜3日。突然、38度以上の高熱が出ることから始まります。咳や鼻水、喉の痛みなどの上気道症状に加えて、倦怠感、頭痛、関節痛などの全身症状が出るのが特徴だそうです。

「病院では、検査キットでインフルエンザを診断することができます。ただ、熱が上がってから半日以上経っていないと、キットでは確定診断が付かないこともあります。また、感染後48時間以内でしたら、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)を服用して症状を軽くすることができます。」

外出を避け、自宅ではできるだけ安静に過ごし、水分を充分に取ることが大切とのことです。通常、7日〜10日前後で症状が落ち着いてくるそうです。

予防接種とあわせて、手洗い・うがい・保湿で対策を

より万全を期すために、予防接種以外の対策法を黒澤先生に伺いました。

「インフルエンザは咳やくしゃみなどの飛沫感染、接触感染で広がります。冬場は特にうがい、手洗いを念入りにしましょう。そして、インフルエンザの予防で特に大切なのは保湿です。湿度に非常に弱いウィルスなので、加湿器などで部屋の中を乾燥させないようにするのも大切です。マスクは感染予防と保湿に有効です。」

流行前の予防接種、そして手洗い・うがいで、これからのインフルエンザシーズンを元気に乗り切りましょう。

お話を聞いたのは…

  • 黒澤サト子先生

    東京都国分寺市にある地域密着型クリニック「くろさわ子ども&内科クリニック」院長。

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ライター紹介

宇都宮 薫

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディアなどへの執筆のほか、単行本(ビジネス書・実用書)の編集・構成を手掛ける。得意ジャンルは、出産、育児、健康、おでかけ、芸能、グルメなど。まち歩きとバイクが好き。

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