子供のために絵本を選ぶ時、種類が多すぎてどれにすれば良いのか店頭で悩み込んでしまったりも…。そんなときに参考にしたいのが「絵本のプロ」の意見。そこで千代田区立千代田図書館で、児童や保護者向けのサービスや選書なども行う大塚桂子さんに、年齢別のおすすめ絵本について伺いました。今回は3歳編として「親子で一緒に音読が楽しめる絵本」を紹介します。
3歳児に絵本を選んであげる際のポイント
3歳児は会話らしい会話もだいぶできるようになり、言葉でのコミュニケーションが取れるようになってきます。また、文字を読めるようになる子もだいぶ出てきますね。絵本を読んであげていても「読み聞かせ甲斐」も出てくるというもの。
一緒に音読するのも楽しくなりますが、絵本は対象年齢が3歳児から始まるものも多いので、選択肢がたくさんありすぎて迷ってしまいます…。
「確かに3歳児はそうした言葉への興味や理解が高まる年齢ですね。それに物語の登場人物、キャラクターを自分と置き換えて楽しむことができるようになり、より絵本自体の魅力もわかってくるのもこの時期です。」
「ただ、この時期は自我が発達し自己主張が強く出てくるようになる面もあります。そのため、1歳〜2歳児以上に、お子さんそれぞれの特徴、個性に合わせて興味の持てる本を選んであげることが大事です。その点を踏まえ“基本”と考えてもよいと思われる作品をご紹介しましょう。」(大塚さん)
大塚さんがおすすめしてくれた絵本は、こちらの5冊。
3歳児におすすめ!親子で一緒に音読が楽しめる絵本
『もちっこやいて』
(わらべうたの「もちっこやいて」より 作:やぎゅうげんいちろう/福音館書店/1300円+税/発行年月:2013年11月)
同名のわらべ歌をベースに、ばっちゃんのところで北風の子どもや、鬼たちとモチを焼いて行く姿を描く。わらべうたと、その手遊びのやり方が入っているという構成がおもしろい。読み聞かせ+αで楽しめる絵本。
<選んだ理由>
音の楽しさだけでなく、手を使って遊べます。本来の対象年齢からは、ちょっと早いものの読み聞かせしてあげる分には問題ないでしょう。手遊びという一つのゲームが楽しめる年齢になったら、こうした昔ながらの遊びにも触れさせてあげたいものです。
『もこもこもこ』
(作:谷川俊太郎 絵:元永定正/文研出版/1243円+税/発行年月:1977年4月)
地面が「もこ」と持ち上がり、何かが「にょき」っと生えてきて…。詩人の谷川俊太郎さんによる、擬音と擬態語が面白い予測のつかないシュールな展開が魅力の絵本。表紙の裏書でも作者自身が「すこしへんなえほんになりました」と書いている通り、オチも少し変。なのに(だからこそ?)大人が読んでも楽しめる。
<選んだ理由>
特に意味や物語もなく、キャラクターらしいキャラクターも登場しない絵本です。そんな不条理性、シュールな世界観を子どもが楽しめるのか?と大人は思うかもしれませんが、子どもは大好きです。「もこ」まで読むと、子どもが続けて「もこもこ」と続けたり、自分なりに「もこもこ」の動きを体でやってみせたり…。読み聞かせの会でも、リクエストが多い絵本なんですよ。「もこ」など擬態語の響きの楽しさ、そして言葉の不思議さがわかるのでしょうね。
『おかしなおかし』
(文:石津ちひろ 絵:山村浩二/福音館書店/800円+税/発行年月:2013年5月)
「ぷるぷるプリンがトランポリン」などなど、様々な「お菓子」たちがスポーツをする姿がユーモラス。「のどがからから クラッカー」。リズム、韻を踏むことで言葉の不思議さ、楽しさが分かる。現代的な絵であることも馴染みやすい。
<選んだ理由>
「くさもち もちろん ちからもち」。そんな“ダジャレ”も立派な言葉遊びのひとつ。韻を踏んだ言葉も含め、その面白さが分かってくることで言葉への興味や理解もより深まってくるのではないでしょうか。一緒に読みながら、お話に登場するお菓子たちのように体を動かしたりするのも楽しいですね。
『ぽぽぽぽぽ』
(作:五味太郎/偕成社/1080円+税/発行年月:1988年12月)
おかあさん蒸気機関車が、子どもをつれて「ぽぽぽぽぽ」と煙をはきながら走り回る。急な坂を登るとき「ぼぼぼぼぼ」、トンネルに入るときには「ぽぽぽ・ぽぽぽ」。登場するのは擬音語と擬態語のみ。お母さん機関車が頑張る姿に、いつしか親が自分を投影してしまうかも…。
<選んだ理由>
これはずっと「ぽぽぽぽぽ」「るるるるる」と擬音がひたすら続くだけなのですが、子どもは大好きですね。同じ音が続くので、読み方に工夫をしてあげるともっと子どもが好きになってくれるでしょう。親子いっしょに、音の連続を楽しんでみてください。
『おおきなかぶ』
(A・トルストイ再話 訳:内田莉莎子 画:佐藤忠良/福音館書店/800円+税/発行年月:1966年6月)
おじいさんが植えたカブが大きく育ち「うんとこしょ どっこいしょ」と掛け声をかけて抜こうとしても抜けません。おばさんを呼んで、孫を呼んで…。いわずとしれた、ロシアの昔話に始まる絵本。
<選んだ理由>
もうこれは、説明のいらないほどの名作であり、定番ですね。「うんとこしょ、どっこいしょ」という音の繰り返しが楽しいだけでなく、努力の結果、ハッピーエンドを迎えるというしっかりとしたストーリーも魅力です。おじいさん、おばあさん、そして動物たち。絵にも力があり、それぞれのキャラクターも魅力的です。
ちなみに「おおきなかぶ」は、同タイトルで文や絵が異なる絵本もいくつかあるものの、大塚さんは上記、福音館のこどものとも絵本版がおすすめとのこと。こうした名作は新しい画や、微妙に異なる言い回しへとアレンジを効かせた絵本もでてくるものの、初めて触れる物語であればなおのこと、古めかしいと切り捨てずに初代のものに触れさせてあげたいと考えているそうです。それは、現代風にアレンジしたものなどは、アレンジが強く、本来の意味が変わってしまった絵本もあるからだとか。
だんだん生意気になってくる3歳児だからこそ「絵本読んで〜」なんておねだりしてくる姿もまた可愛いもの。いい絵本を選んで、子どもとの音読タイムを充実させたいものですね!