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2月3日の節分に、いわしの頭を飾るのはどうして?

掲載日: 2016年2月1日更新日: 2017年5月16日飯田友美

最近ではなかなか見ない光景となりましたが、節分には軒先に柊(ひいらぎ)と一緒に鰯の頭を飾る風習があります。でもなぜ、いわし(鰯、イワシ)の頭を飾るのでしょうか。そこで、日本文化にまつわる書籍を多数執筆されている日本の文化・歳時記研究家、広田千悦子さんに、柊鰯やその他の節分の風習などを伺いました。

節分に「柊鰯(ひいらぎいわし)」を飾るワケ

柊の枝に焼いたいわしの頭を刺した魔よけ「柊鰯」。この柊鰯を節分に飾るのはなぜなのでしょうか。

「季節の節目には、その節目の隙間から災いが訪れると言われており、それを防ぐためのさまざまな風習があります。節分に魔よけとして柊鰯を飾るのもそのひとつです。柊は、棘の痛さで鬼を追い払うため、いわしの頭はその臭気で鬼を寄せ付けないようにするため、などと言われています。」

柊鰯を「やいかがし」とも言いますが、これはどうしてなのでしょう。

「『やいかがし』のやいは焼く、かがしは嗅がしという意味です。いわしは腐りやすく、焼くと臭いがでることから、臭いで魔よけをしていました。『焼き嗅がし』が転じて『やいかがし』となったとも言われていますね。」

節目には福とともに鬼や災いをもたらす神も同時にやってくると思われていた昔、その災いをなだめて、いいものへとつなげていくために全国各地でさまざまな魔よけがされていたということです。柊鰯もそのひとつで、今も受け継がれている風習なのですね。

ことわざ『鰯の頭も信心から』の由来は「柊鰯」から!

ところで、「鰯の頭も信心から」ということわざ、聞いたことがありますか? このことわざの由来は、柊鰯を飾る風習からきているのだそうですよ。

「このことわざの意味は、いわしの頭のようなそれほど重要でないものでも、それを信じる人には大切なものであるということ、それほど信じる力は大きいということを示しています。また、かたくなに何かを信じる人を揶揄するときにも使われますよね。」

「信心」は、「信じ」から転じたという説もあるのだとか。柊鰯は、1600年代の文献にも出てきているそうで、このことわざも古くから使われていたのかもしれませんね。


いわしの他にもある!昔は節分にこんなもので魔よけしていた

鬼を追い払う魔よけは柊鰯以外にもいろいろあるそうですよ。特別なものを用意するのではなく、昔の人は身近にあるもので魔よけをしていました。

●かごを飾る
網目の多いかごを飾ると、その目の数を鬼が数えるのに忙しくて入ってこられない。網目の目がいっぱいあることを怖がって入ってこられない

●蔓のついたものを飾る

蔓が鬼に巻きついて入ってこられない

●とべらの木を飾る

燃やすとパチパチとはねるので、鬼が怖がって入ってこられない。また、「とべら」が「とびら」とも呼ばれていたため、「とびらの木」ということで戸口に飾られた

いわしは食べてもOK!

柊鰯に使うのは、いわしの頭の部分のみ。ではそれ以外の部分は食べてもいいのでしょうか。

「もちろんです。いわしが新鮮であれば、お刺身で食べてもいいですし、パン粉をつけて焼いたり、天ぷらにしたりと食べ方もいろいろ楽しみましょう。しょうがをたくさん入れてつみれにすると、青魚が苦手な人にも食べやすくなりますよ。」

丸ごと焼いて、頭の部分は柊鰯にして、身はそのままいただいてもいいそうです。飾るだけでなく食べることでも魔除けになりますから、無駄なく使いましょう

そのほか節分に食べるもの、いろいろ

節分には、他にもいろいろな食べ物で厄除けをするとのこと。

「一番のおすすめは福茶です。昆布や豆、梅干しを入れて、そこにあつあつのお湯や煎茶を注いでいただきます。最近は梅昆布茶に金箔を浮かべたり、栗きんとんを入れたりと、さまざまな家庭の味があり、楽しいですよ。また、静岡の一部では節分の豆3粒を茶釜などに入れ、いただくためにお茶をすくうときに、豆が入っていた人に福がくるとする習わしを楽しんでいるところもあります。」

福茶の歴史は古く、江戸中期頃の文献では、桃の木を入れて煮たお湯で煎茶を入れ、その時に豆3粒、山椒の実3粒を入れていただくと病や災いを除けるお茶とされたという話が出てくるのだそうですよ。


「節分」=昔の大晦日…!?

そして節分は、季節が冬から春へと大きく変化する時期。昔の暦では、立春(2月4日)とお正月はほぼ同じ頃に訪れていたので、立春をもって正月とする「立春正月」の考え方がありました。春分の前日にあたる節分(2月3日)はいわば大晦日と同じような意味があったのです。

「立春正月の考え方からすると、節分に食べるそばが年越しのそばでしたのでそばを食べるのもいいですね。また、こんにゃくは昔から『おなかの砂おろし』と呼ばれていて、体内の毒をさらい清めるとされているため、こんにゃくが入ったけんちん汁を食べる地方もあります。」

一年のうちでも大きな節目である節分。その風習もさまざまだということがわかりますね。

日本は自然が身近に感じられる国だと広田さん。昔から、季節が大きく変わるときには体調を崩しがちで、特に日本は自然による災いがもたらされることも多く、それらを心身ともに無事乗り切るための知恵として、いろいろな魔よけなどが考えられ、伝えられてきたのですね。

節分にまく豆も魔よけのひとつ。「節分は鬼をやっつけておしまい」というのではなく、それぞれの風習の由来を知り、本来の意味をお子さんと話すいい機会かもしれませんね。目に見えないものを見る力を育む、ステキな時間になりますように。

【参考】節分の意味って? 子どもに教えたい豆まきの由来

お話を聞いたのは…

  • 広田千悦子さん

    文筆家。日本の文化・歳時記研究家。うつわ・ことば・絵の作家。新聞や雑誌などでコラムと挿絵を連載中。企業アドバイザー。メディアなどに多数出演。著書は『くらしを楽しむ七十二候』(アースエンターテイメント)、『ほんとうの和の話』(文藝春秋社)、『口福だより』(小学館)、『美味しい! 日本のくらしと七十二候』(新潮社)、『七十二候で楽しむ日本の暮らし:角川ソフィア文庫』(角川学芸出版)など多数。『おうちで楽しむにほんの行事』(技術評論社)はロングセラー。

  • 広田千悦子さんのホームページ
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ライター紹介

飯田友美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

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