NHK Eテレで話題の番組『びじゅチューン!』をご存じですか?世界の名画や名作を、ゆるーいオリジナルソングに乗せて紹介するこの番組に、親子でハマる人が続出中とか。そこで、この番組を手がけるクリエーターの井上涼さんに、親子でアートを楽しむ方法を聞いてきました。
そんな親子におすすめなのが、NHK Eテレの番組『びじゅチューン!』。5分間で絵画などの名作をアニメで紹介する番組で、番組中に流れるアニメーション、音楽の作詞、作曲、うた、すべてを担当しているのが、アーティストの井上涼さんです。その多才さに驚きますが、 何より名作の価値や背景、歴史などをものともしない、オリジナリティ溢れるユニークな視点、そして一度見ると脳裏に焼き付いて離れない、その脱力した絵と歌にハマってしまう親子が続出しているそう。
さらに『モナ・リザ』は「株式会社ジョコンダ」で働く「お局のモナ・リザさん」。国宝『吉祥天女』は柄マニアの天女で「薬師寺丸ごと柄で埋めたい」という野望を抱くという具合に、「これはこうだ、こうであるべき」という観念を華麗にスルーし、独自の楽しい解釈で紹介されます。
※過去の作品は、 番組公式サイトで見ることができます。
「父が高校の美術教師であり、彫刻家でもあったので、小さい頃からアートは身近なものでした。とにかく絵を描いていたのを覚えています」と井上さん。
「絵と言っても、その当時見ていたアニメや漫画の絵を真似たもの。なぜか両手を上に上げたポーズをよく描いていたんですが、父親からは『ポーズが一緒』とか『漫画チック』、時には『つまらない』など厳しい指摘を受けていましたね。多分父の素直な感想なのですが、要するに『もっと面白いことやれよ』という意味だったんだと思います。 結果的に父親からのそんな言葉に触発されて、自由な視点で物を見たり、それを人が面白いと感じるように表現する方法が身に付いたのではないでしょうか。」
そんな厳しいお父さんに鍛えられて、井上さんの豊かな感性は開花していったのですね。
「子どもの頃、家族で美術館に足を運んだ思い出はあまりない」という井上さんですが、ご自身が何か作品について感想を言った際に、ひと言で終わらせて欲しくなかった、自分が言ったことについて、親の感想や意見ももっと聞きたいと感じていたそうです。
「私自身、子どもがいないので分からないのですが、子どもが自分なりの考えや感想を話した時に、親御さんは、 子どもの意見や感想に乗って、注目した部分から更に世界を広げていくと良いのではないかと思います。」
そうすることによって、親子でその作品についてのイマジネーションをどんどん広げていけるそう。
「例えば、私が作った『その天女、柄マニアにつき』では、吉祥天女が身に付けているものをよく見ると、一つ一つにオシャレな柄が入っているんです。それで『全身柄だらけじゃないか』と思わずツッコミを入れたくなりました。 そのように、作品の中でツッコミを入れたくなるような箇所に目を付けて、そこから想像を広げていきます。」
「吉祥天女はもともとインドでは幸福の神様なので、吉祥天女は幸福の神様で…という想像の広げ方ももちろんアリです。 見方を自分で選べるのがアートのいいところ。どんどんツッコミを入れてみてください」。

井上さんへのインタビューの後、わが家の7歳の息子と5歳の娘と一緒に、ピカソの『ゲルニカ』を画集で見てみました。最初は何が描いてあるのかわからないと言っていた子どもたちも、「自由に感想を言ってみて」というと、「これはな、お船やねん。動物たちがいっぱいつかまえられたから、怒って、人間たちを食べてる」とか「これはサーカスやと思うで」などと独自の物語を展開。話はどんどん広がって、なかなか尽きることがありませんでした。今度は、美術館にも足を運んで、井上さん流の美術の楽しみ方を実践してみます!
名作をユニークな視点で紹介する番組『びじゅチューン!』
色々なものを見て感性を磨いてほしいと、子どもを美術館に連れていくパパ、ママも多いのではないでしょうか。でも、子どもに名画をどう説明すればいい? どう楽しんだらいいかわからない…そんな悩みを持っている親も多そうです。そんな親子におすすめなのが、NHK Eテレの番組『びじゅチューン!』。5分間で絵画などの名作をアニメで紹介する番組で、番組中に流れるアニメーション、音楽の作詞、作曲、うた、すべてを担当しているのが、アーティストの井上涼さんです。その多才さに驚きますが、 何より名作の価値や背景、歴史などをものともしない、オリジナリティ溢れるユニークな視点、そして一度見ると脳裏に焼き付いて離れない、その脱力した絵と歌にハマってしまう親子が続出しているそう。

画像提供:NHK
モナ・リザはお局に、ヴィーナスは女子高生に
例えば、世界的名画 ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』。長い髪の裸の女神「ヴィーナス」が貝に乗っている絵は、美術の教科書にも載っていますね。ヴィーナスにまつわる神話自体は残酷なお話なのですが、井上涼さんにかかると「ヴィーナスは女子高生」になります。アニメーションの中では、物憂げな表情のヴィーナスがセーラー服を着て「貝殻登校」しているという斬新な設定。さらに『モナ・リザ』は「株式会社ジョコンダ」で働く「お局のモナ・リザさん」。国宝『吉祥天女』は柄マニアの天女で「薬師寺丸ごと柄で埋めたい」という野望を抱くという具合に、「これはこうだ、こうであるべき」という観念を華麗にスルーし、独自の楽しい解釈で紹介されます。
※過去の作品は、 番組公式サイトで見ることができます。
「人が見てどう思うか」という視点は美術教師の父親に鍛えられて
井上さんは、子どもの頃からユニークな視点を持っていたのでしょうか。「父が高校の美術教師であり、彫刻家でもあったので、小さい頃からアートは身近なものでした。とにかく絵を描いていたのを覚えています」と井上さん。
「絵と言っても、その当時見ていたアニメや漫画の絵を真似たもの。なぜか両手を上に上げたポーズをよく描いていたんですが、父親からは『ポーズが一緒』とか『漫画チック』、時には『つまらない』など厳しい指摘を受けていましたね。多分父の素直な感想なのですが、要するに『もっと面白いことやれよ』という意味だったんだと思います。 結果的に父親からのそんな言葉に触発されて、自由な視点で物を見たり、それを人が面白いと感じるように表現する方法が身に付いたのではないでしょうか。」
そんな厳しいお父さんに鍛えられて、井上さんの豊かな感性は開花していったのですね。
子どもの自由な感想に親も乗っかってみよう
では私たち視聴者も、美術の知識がなくても、井上さんのように自由に作品を楽しむことができるのでしょうか。そのコツを聞きました。「子どもの頃、家族で美術館に足を運んだ思い出はあまりない」という井上さんですが、ご自身が何か作品について感想を言った際に、ひと言で終わらせて欲しくなかった、自分が言ったことについて、親の感想や意見ももっと聞きたいと感じていたそうです。
「私自身、子どもがいないので分からないのですが、子どもが自分なりの考えや感想を話した時に、親御さんは、 子どもの意見や感想に乗って、注目した部分から更に世界を広げていくと良いのではないかと思います。」
そうすることによって、親子でその作品についてのイマジネーションをどんどん広げていけるそう。
ツッコミを入れる気持ちで見ると、さらに想像が広がります
また、作品に対してツッコミを入れるような気持ちで見ると、より楽しめるとか。「例えば、私が作った『その天女、柄マニアにつき』では、吉祥天女が身に付けているものをよく見ると、一つ一つにオシャレな柄が入っているんです。それで『全身柄だらけじゃないか』と思わずツッコミを入れたくなりました。 そのように、作品の中でツッコミを入れたくなるような箇所に目を付けて、そこから想像を広げていきます。」

画像提供:NHK
この作品では、そこから吉祥天女は『周りの人にも柄ものをすすめる柄マニア』という設定を思いついたのだとか。ただし、必ずしも作品の背景からかけ離れた発想をするということではない、と井上さん。「吉祥天女はもともとインドでは幸福の神様なので、吉祥天女は幸福の神様で…という想像の広げ方ももちろんアリです。 見方を自分で選べるのがアートのいいところ。どんどんツッコミを入れてみてください」。
井上さんへのインタビューの後、わが家の7歳の息子と5歳の娘と一緒に、ピカソの『ゲルニカ』を画集で見てみました。最初は何が描いてあるのかわからないと言っていた子どもたちも、「自由に感想を言ってみて」というと、「これはな、お船やねん。動物たちがいっぱいつかまえられたから、怒って、人間たちを食べてる」とか「これはサーカスやと思うで」などと独自の物語を展開。話はどんどん広がって、なかなか尽きることがありませんでした。今度は、美術館にも足を運んで、井上さん流の美術の楽しみ方を実践してみます!