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【世界の子育て:ギリシャ】大学は国公立のみ 過酷な受験競争も

掲載日: 2018年6月26日更新日: 2018年6月27日いこーよ編集部

文化や習慣が違えば、子育ての常識も変わるもの。そこで、世界の子育て事情を国別にシリーズで紹介していきます。海外ではどんな子育てが行われているのか、実際に現地で暮らすママに実情を明かしてもらいます。

第3回目は、ギリシャ・スパルタ在住で、2人の子どもを育てる辻ハジダキス 亜希さんに子育て事情を聞きました! ギリシャと言えば数年前に経済破綻がありましたが、大学までの学費、国公立機関での医療費は国民健康保険証を所持している人なら無料とのこと。詳しい生活ぶりを紹介してもらいます。

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【学校教育】ギリシャの教育事情

日本と同じく6・3・3制で、就学は6歳前後からです。国公立の幼稚園、小・中・高校では教科書も含めて全て無料です。ギリシャ国家による大学は国公立しかなく、ギリシャ統一大学入試を受けて合格すれば、大学の授業代と教科書も無料になります。

小・中・高校も含めて夏休み期間の宿題は一切ありません。日本の子どもたちにはとても羨ましく感じるかもしれませんね。

本物の古代劇場を使った恵まれた演劇環境も

劇の発表会の様子

ギリシャでは、中学生になると、古代ギリシャ悲喜劇などを学ぶ古典語が必須科目になります。演劇への愛着が強く、保育園から高校生まで、独立記念日やオヒデー(イタリア軍の侵攻にノーと反発した事を祝う日)、クリスマスになると劇の発表会をします。

演劇を通じて、仲間たちとの一体感や先生との絆、歴史や神話の再考など、ギリシャならではの経験ができます。素晴らしい教育の一環だといえますね。

過酷な受験勉強を強いられる子どもたち

一方で、大学数の少ないギリシャでは、大学進学の競争率が高い上に高学歴志向も強く、子どもの大半は塾通いに明け暮れます。

小学3年生から英語教育、5年生から第2言語教育を実践していますが、英語塾人気は非常に高く、小学校の低学年から英語塾へ通い、PALSO(Panhellenic federation of language school owners の略で『全ギリシャ語学学校指定検定』の意味)に始まり、PROFICIENCY(ケンブリッジ英検の最上級レベル)などの検定試験に合格するべく勉強します。

ドイツ語、フランス語の検定試験資格者が多いのも特徴です。高校生になるまでにこれらの資格を取ってしまい、高校時代は厳しい受験勉強に専念します。

ギリシャ風ファストフードのスブキラ

塾の宿題や課題がとても多いギリシャの子どもたちは、オンオフの切り替えが上手。夏は親族や仲間と海水浴に行ったり、古代劇場で喜劇を鑑賞したりします。また、塾帰りにギリシャ風ファストフードのスブラキ(ピタパンのサンドイッチ)を食べるのは楽しみのひとつです。


【生活】3カ月の夏休みは海水浴でタラソセラピー

6月になると子どもたち(多少の違いはありますが、ほぼ大学生まで)は3カ月間の夏休みに入り、大人も仕事が手につかなくなる時期が訪れます。ギリシャの家庭では、大概が田舎かセカンドハウスを持っています。持っていない場合でも、親族など誰かが持っています。そして、海に近い場所で過ごすことが定番です。

ギリシャの海水はミネラルやヨードなどの成分が多く、免疫力や抵抗力を高めてくれるそうで、たくさん海水浴をすることで風邪をしないと言われています。美しい海に囲まれた国らしく、タラソセラピー(海洋療法)をしながら、病気知らずの子が育つのです。

【宗教】子どもは「ギリシャ式洗礼」で名前を与えられる

洗礼時の様子

国教であるギリシャ正教にのっとり、子どもは1歳前後で「ギリシャ式洗礼」を受けます。

洗礼は、復活祭以降、寒気が訪れる前に行われるのが慣わしです。洗礼前の子どもは、男の子であれば「べビス」、女の子であれば「ベンバ」と呼ばれています。どちらの呼び名も赤ちゃんの意味です。

近年では、役所に行って命名申請が出来るようになったらしいですが、9割の子どもは、厳粛な教会や大聖堂などで洗礼を受けて、やっと名前が与えられます。多くの子どもは祖父母から名を受け継ぎ、そこで初めてひとりのキリスト教徒として人間世界に受け入れられます。

洗礼親との絆

また、子どもが密接に関わりあう人間関係において、ことギリシャでは「洗礼親」との関わりは取り分け大きいです。洗礼親とは、洗礼を受ける赤ちゃんの名付け親の事で、ギリシャ正教徒の敬虔な信者でなくてはなりません。洗礼子と洗礼親は、言うなれば血の繋がらない親子ともいえますが、結びつきはとても強いです。

ちなみに、洗礼親は洗礼子のために洗礼式用の衣装を準備します。衣装は、洗礼から40日ほど経ったら、流れる海水か川の水で洗うものとされています。海水浴の話でもふれましたが、海は子どもの成長において重要なキーワードと言えます。

洗礼用の衣装だけでなく、復活祭には「ランバーダ」と呼ばれるロウソクを贈るなど、クリスマスやネームデー、誕生日といった特別な日になると、洗礼親は溢れんばかりの愛情と贈り物で洗礼子との関係をより深めていきます。


【労働環境&医療】結婚年齢の推移にみる子育て事情

公務員の共稼ぎが非常に多いギリシャでは、出産前に2カ月、出産後に3カ月、さらに後々に9カ月の休暇が保証されていて、夫も休暇が認められています。休暇の取り方はさまざまで、夫婦2人で折半することも同時に取ることも可能です。

公務員の平均収入は月額1500ユーロ(約19万6,000円)ほどで、休暇月数の3割は育児補償がもらえます。私企業、大手企業、個人商店など、差はあるものの、育児休暇はおおむね4カ月と言われています。

ところが、出生率は現在1.3人。EU諸国内でみると、トップのアイルランドは1.94人で、スウェーデンの1.87人と続きます。ギリシャは下から2番目だそうです。国公立の病院での出産費用は無料、しかも、国公立機関では国民健康保険証を所持していれば、子どもの受診は無料です。予防接種もすべて無料と手厚い医療体制がありながら残念なことです。

ちなみに「子どもは無料」と紹介しましたが、「何歳まで」と明確に決まっていません。公立機関であれば大学生でも無料ですし、修士や博士号を取る為に勉学に励む人も基本的には無料です。軍隊に入っている場合も同様です。

また、ギリシャでは、経済破綻に陥った2008年から結婚年齢が徐々に高くなっています。ギリシャの総務省統計局の資料によると、1960年代では夫28.8歳、妻24.6歳、70年代では夫に変化はなく、妻は22.8歳でしたが、徐々に年齢が高くなり、2015年では夫33.1歳、妻30.4歳と推移しています。

出生率の低さは、経済的理由や女性の社会進出の高まりで夫婦共働きが大多数である事が影響しているのでしょう。

【子育て】親族一丸で子育てができる理由

スパルタ地方の独立記念日パレードの様子

子、親族の絆が非常に強いのもギリシャの特徴です。親はもちろん、姉妹や叔母など、女性の親族に至るまで、皆が一丸となって子育てに携わります。ギリシャでは、結婚時「プリカ」と呼ばれる嫁入り道具のひとつに持ち家も含まれています。

2世帯や3世帯住宅が一般的で、多くの場合、両親の家の上か下に持ち家があるため、親族が近所住まいなら、安心して子どもを預けられます。また、親たちの両親世代である祖父母も年金暮らしとあって、孫たちの面倒をみる余裕がたっぷりあります。

子どものヒーローはギリシャ神話の神々

3月25日独立記念日のパレードの様子

ギリシャと言えば、海の鮮やかな青と空の白を表す国旗のごとく、真っ青な空と海に白壁をイメージする人も多いと思います。風光明媚で古代と現代の文化が調和した国と言えるでしょう。ギリシャ神話の神々は子どものヒーローで、小さな頃から知らず知らずのうちに愛国心を培います。

オリンピック発祥の地「オリンピア」

ギリシャの子どもに世界地図を描かせると、そら覚えのギリシャの国の形を真ん中に描き、なんとも微笑ましい限りです。

以上がギリシャの子育て事情です。宗教の話などは日本にはない文化で、驚いた人も多いのではないでしょうか。次回はアメリカ・ハワイ編をお届します。

ライター

辻ハジダキス 亜希 (つじはじだきすあき)
ギリシャ・スパルタ在住19年。オリーブオイル、ワインの農業に従事する2児の母。犬、猫、山羊、鶏 などたくさんの動物と暮らしています。

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ライター紹介

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