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寝かしつけの悩み&疑問を専門家が解説! 良く眠る環境も紹介

掲載日: 2018年6月26日更新日: 2018年6月26日飯田友美

「やっと寝たと思ったらすぐに起きてしまう」「なかなか寝てくれない」など、毎日の寝かしつけに悩んでいるパパママは多いのではないでしょうか。赤ちゃんはなぜすぐ起きてしまうのか、良く寝る子とそうでない子の違いは何か、良い睡眠をとるための環境はどんなものか。睡眠に関するさまざまな疑問について、久留米大学の神経精神医学講座教授・内村直尚さんに聞きました。

赤ちゃんの睡眠時間はどのくらい?

赤ちゃんは「寝ることが仕事」と言われていますが、一般的に睡眠時間はどのくらいなのでしょうか。

生まれてすぐの赤ちゃんは、1日の3分の2は寝ていますね。0カ月〜3カ月の赤ちゃんの睡眠時間は14〜17時間、4カ月〜11カ月では12〜15時間、1歳〜2歳では11〜14時間と、月齢が上がるにつれて睡眠時間は少なくなっていきます

「また、睡眠のリズムですが、3カ月〜4カ月頃になると昼と夜のメリハリがついてきます。これは、赤ちゃんの体内時計ができてくるからです」

生まれて間もない赤ちゃんは、昼夜関係なく寝ていますが、成長するにつれて夜に寝るようになるそう。3カ月くらいまでは「昼夜逆転してしまっているのでは?」と思うこともあるかもしれませんが、心配しなくても大丈夫とのことです。

赤ちゃんがすぐに起きてしまうのはなぜ?

「やっと寝たと思ったのに、すぐに起きてしまった」という経験は誰しもがありますよね。なぜ赤ちゃんはすぐに起きてしまうのでしょうか。

「睡眠には『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』があります。レム睡眠は、寝ているけれど脳が活発に動いていて、眠りが浅い状態。一方のノンレム睡眠は、脳や体を休ませ眠りが深い状態です。生まれてすぐの赤ちゃんは、睡眠の3〜4割が眠りの浅いレム睡眠なのです」

睡眠は、浅い眠りと深い眠りを繰り返しているので、浅い眠りのレム睡眠が多い赤ちゃんは目が覚めやすいというわけですね。

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眠りには遺伝子が関係している?

「よその子はよく眠ってくれてうらやましい」「うちの子は眠りが浅い気がする」など、眠りの長さや深さについて悩む声も良く耳にします。この差は一体何なのでしょうか。

眠る力である『睡眠力』の違いは、実は遺伝子レベルの問題です。ですから、よその子と比べても仕方がないことです

「もちろん、就寝時の環境が整っていなければ、浅い眠りになってしまいますが、もともと持って生まれた部分ですので、考えすぎないでください」

遺伝子が眠りに関係しているとは驚きですね。ですから、男女の違いもないのだそうです。また、親が神経質になりすぎると、子どもも不安になるようなので、眠る環境が整っているのであれば、心配することはないとのこと。

また、寝相について悩んでいる人もいると思いますが、寝相の悪さと睡眠にはどんな関係があるのでしょうか。

寝返りは、深い睡眠から浅い睡眠に移行するときに打つものです。寝返りが多く寝相が悪いのは、それだけ深い眠りについているということですから、まったく問題ありません

「また、1歳〜2歳くらいまではよく布団を剥いでしまうことがありますが、すぐに掛け直さなくて大丈夫です。暑くて剥いでしまうわけですから、寝冷えしない程度に掛け直してあげてください。心配なら、腹巻などを使うといいですね」

寝相が悪い、布団を蹴飛ばす、などは、子どもがぐっすり眠れている証拠なのですね。

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良く眠るための4大環境とは

それでは、良く眠るために必要な環境はどんなものか教えてください。

「大きく分けて、光、音、温度、湿度の4つがあります。それぞれのポイントも紹介します」

【光】30ルクス以下(豆電球くらい)

天井からの光は眠りにくいので、目に入る範囲の電気は消して、目線より下にオレンジ色のライトをつけるといいですね」

「寝る1時間くらい前から光を落として過ごすと効果的です」

【音】40フォン以下(図書館くらい)

「騒がしいと眠りの妨げになります。テレビなども消して、なるべく静かな空間を作ります」

【温度】春・秋20度、夏25度、冬15度

寝る前は体を温めることが大切です。室温は寒すぎても暑すぎてもよくないので、季節ごとに空調などを使い調節しましょう」

【湿度】50%〜60%

「湿度が高すぎても良く眠れません。掛け布団や敷布団は通気性の良いものを選びましょう。寝ているときは体温が下がり汗をかきますから、パジャマは吸水性の良いものがいいですね」

以上が、良く眠るための4大環境だそうです。まずは環境を整えて、子どもが気持ちよく眠れるようにしてあげたいですね。

いい眠りを生みだす4つの工夫

また、環境のほかにも、家庭でできる「良く眠るためのちょっとした工夫」も教えてもらいました。

(1)朝や昼の光をたくさん浴びる

「夜には、メラトニンという眠るためのホルモンが出ます。メラトニンは、朝や昼の光を浴びることでたくさん分泌されるので、お散歩などに出かけると夜ぐっすり眠れます。外遊びができるようになったら、思う存分遊ばせてあげてください」

(2)体温のリズムを知る

体温が低下するときに眠りやすくなります。寝る前の赤ちゃんの手が温かくなるのは、体温を下げるために末端の血管を開いて熱を放出しているからです。体温は、一番高い夜の7時頃を境にだんだんと下がっていき、朝の5時くらいまで低い状態です。このリズムをうまく使いましょう

「また、体を温めると、そのあと体温が下がりやすくなるので、お風呂をうまく利用します。一番おすすめの時間は、体温が下がり始める夜7時以降です。あまり早くお風呂に入れると、体温がうまく下がらないので、寝つきが悪かったり夜泣きをしたりすることがあります」

「それでも寝つきが悪いようなら、寝る前に温かいミルクや母乳などを少し飲ませてあげると、体温が下がりやすくなります」

ただし、環境を整えていてもすぐに起きてしまう場合は、お腹がいっぱいということがあるそう。お腹がいっぱいだと眠れないとのことですので、寝る前のミルクや母乳は控えめが基本です。

(3)まくらも眠りに影響

立たせたときの『気をつけ』の姿勢が寝やすい姿勢といわれています。まくらを使っている場合、後頭部が出ているならば低いもの、出ていなければ高いものにすると、良い姿勢で眠れます。大きさは肩幅より広いもので、寝返りが打てるようやわらかすぎないものを選んでください」

(4)睡眠の儀式になるようなものを使う

「寝かしつけに本を読むのもいいですね。体に触れながら読んであげれば、安心して眠れます。また、タオルや毛布、ぬいぐるみなど、触るだけで安心する『おまもり』があるなら、持たせてあげましょう。肌触りやにおいなどが安心感をあたえるようです」


3歳を過ぎたら「夜9時には就寝」を心がけて!

「寝る子は育つ」という言葉があるように、睡眠はとても大切なものですよね。ですが、生活が夜型になっている現代では、子どもの睡眠時間も短くなっているのだそう。

世界の中で、子どもの睡眠時間が一番短いのが日本です。睡眠の重要性を大人が理解していないのも原因のひとつでしょう。生活のリズムが整う3歳頃になったら、ぜひ夜9時から朝7時くらいまではしっかり寝かせてあげてください」

少なくとも小学校に上がるまでは、10時間は寝たほうがいいとのことです。

深い眠りのときに成長ホルモンがたくさん分泌されます。成長ホルモンは、脳や体の発達にかかせないもので、新陳代謝が活発になる、イライラしなくなる、肥満にならないなど、子どもにとって良いことがたくさんあります。そして深い睡眠は免疫力も高めます

3歳くらいになると、スマートフォンやゲーム機などで遊ぶ子も出てきますが、これらは夜の睡眠を奪うものだそうです。

「スマートフォンやパッド、ゲーム機などは、眠りの妨げになります。少なくとも寝る2時間前くらいから使わせないようにしましょう。規則正しい睡眠を取らせてあげることは、子どもの財産になります。しっかり眠れば体も成長しますし、精神的にも安定しますよ」

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また、3歳くらいからはほかの子どもとの交流も大切だそうです。外で体を動かしたり、友達と遊んだりすれば、夜はぐっすり眠れそうですね。

睡眠は個人差があるものなので、ほかの子と比べる必要はないということがわかりましたね。悩みを抱えてしまうと、それがすぐに子どもに伝わってしまうので、親もなるべく多くの人と交流し、情報交換をするといいそうです。環境を整えて、子どもが気持ちよく、ぐっすり眠れるようにしてあげたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 内村 直尚教授

    医学博士。久留米大医学部神経精神医学講座の助手、講師、助教授を経て、2007年4月から同講座教授。国内トップレベルの睡眠医療チームを率いる睡眠研究の第一人者。日本睡眠学会の理事も務める。久留米大学の副学長、医学部長も兼任。母校の明善高校に、日本で初めて「午睡タイム」を導入して14年になる。

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ライター紹介

飯田友美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

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