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冬の「脱水症」に要注意! 屋内でも起きる原因・理由・対策も!

掲載日: 2020年2月26日更新日: 2020年2月26日宇都宮 薫

一般的に夏に起きやすい「脱水症」ですが、実は冬になることも少なくなく、本人が気づかない場合もあり、注意が必要です。今回は、「冬の脱水症」の原因や対策法について、医学博士の本田由佳先生に話を聞きました。

冬の脱水症は「隠れ脱水」が多い!

そもそも「脱水症」はどうして起こるのでしょうか?

「私たちの体には、血液や筋肉、リンパ液、唾液、尿などたくさんの水分が含まれていますが、発汗やおしっこ以外に息や皮膚などからも、気がつかないうちに水分が失われています。体の水分を多く失うと、体調を維持するのに必要な体液量が保てず、脱水症が引き起こされます」

脱水症とは『体から水分が失われるだけではなく、電解質も同時に失われた状態』をいいます。脱水症になると、めまいや喉の渇き、頭痛、手足の震え、食欲不振など、体にさまざまな異常が現れます。重度になると、意識障害や痙攣(けいれん)、呼吸困難、臓器不全などの症状が出ることもあります」

脱水症といえば夏のイメージですが、冬でも起こるのでしょうか?

冬でも脱水症になることがあります。さらに、冬は夏に比べて喉の渇きに気付きにくく、汗をかいている実感がないので、水分補給を忘れがちになります

「服をたくさん着込んだ状態で暖房の設定温度を高くしていることも多く、乾燥した室内で、本人でも気づかないうちに衣服内の温度が上がり、体温も上昇します。すると自覚がないままに脱水症状が進む『隠れ脱水』に陥ってしまうのです」

「息や皮膚から失われる水分を『不感蒸泄(ふかんじょうせつ)』といいます。乾燥した環境下では、この不感蒸泄が増えてきますが、汗をかく実感がないためなかなか意識できません。」

「大人の不感蒸泄は、体重1kgあたり15ml程度といわれています。しかし、新生児や乳幼児は、からだの水分比率が大人よりも多いことから体重1kgあたりの不感蒸泄が15〜25ml程度であり、失われる水分が多いのが特徴です。」

気密性の高い現代の住宅では、とくに部屋の空気が乾燥しやすいため、隠れ脱水に注意する必要があります

冬に注意すべき点は?

冬の脱水で注意すべき点はどんな点でしょうか。

「冬だけに限りませんが、脱水状態で血液の循環が悪くなると、体に熱がたまり、その次の段階である『熱中症』になることがあります」

冬の室内で熱中症になる心配は少ないですが、加湿器を使い、暖房を高めに設定(例えば温度30度、湿度60%以上)した部屋で、日差しが強くあたる窓辺に厚着をした赤ちゃんを寝かせておいたりすると、脱水症から熱中症にまで進んでしまう可能性もあります。そうならないためには、まずは脱水を予防する環境を整え、知識を持つことが大切です」

冬は部屋の中で起きることが多いそうなので、脱水状態にならないように気をつけたいですね。


感染症が原因の脱水症にも注意!

そのほかに、脱水症になる原因はあるのでしょうか。

「感染性胃腸炎やインフルエンザなど、ウイルス感染症による下痢や嘔吐、発熱症状が続くと急速に脱水症が進むことがあります。これらの症状があるとき、体の中の大量の水分以外にたくさんの電解質を失います」

お子さんの具合が悪いときは、熱が上がりきる前の時点から水と電解質を適度に含んだ『経口補水液』でこまめな電解質と水分の補給をするようにしましょう。冬場は、とくに感染症が蔓延しやすいので、冷蔵庫の中に経口補水液を常備しておくといいでしょう」

インフルエンザなどからも起こりうることを普段から意識しておきたいですね。

脱水症の見極め方は「皮膚の乾燥」「口のネバネバ」「おしっこ」

では、体調の悪さをうまく伝えられない子供の場合、脱水症になっているかどうか、どう見極めたら良いでしょうか。

「見極める方法として、主に皮膚の乾燥とお口チェックとおしっこの3つがあります」

(1)皮膚の乾燥

脱水症状になると皮膚が乾燥して張りがなくなります。手がカサカサしていたり、手の甲の皮をぐっと引っ張って富士山の形を作ったあとに、形がそのまま残っている時は脱水の傾向があります」

(2)お口のネバネバ

脱水になると唾液が少なってきますので、お口の中がネバネバしてきます。小さいお子さんは、歯磨きの時など、お口の中のネバネバ度をチェックしましょう」

(3)おしっこ

脱水になるとおしっこの量が減るため、色が濃くなっていきます。変化に気付けるように普段からおしっこの色をよく観察しておくといいでしょう」

「逆に、水分以外にも電解質が失われる状況で水分のみを補うと、体液が薄まり、おしっこの回数が多くなります。すると、体内の水分バランスが崩れ、脱水になってしまう可能性があるので注意が必要です」

これらは、夏場に起こる脱水症の見極め方と同じです。こまめにチェックしてみましょう。

子供の脱水症の見分け方&予防法 「皮膚」と「おしっこ」が重要

こまめな水分補給が予防に最適!

脱水症予防のためにできることは、どのようなことでしょうか?

「喉が渇いていなくても、こまめに水分補給することが重要です。子どもは代謝が活発で水分を失いやすいので、お家の中で遊んでいるときでも、ちょこちょこと水を飲む『自由飲水』の習慣をつけておきましょう。小さな子でも簡単に手が届くところに水筒を置いて、いつでも自由に飲めるようにしてあげるといいですね」

「そして、毎日3食の食事からも意識的に水分を摂取するようにしましょう。たとえば、朝食はパンよりも水分量の多いご飯がおすすめです。パン食にするのであれば、スープや乳製品、果物などを足すだけでも水分量は増えます」

「さらには、朝起きたとき、午前10時と午後3時のおやつの時、お風呂に入る前と後。夜寝る前と起きた時などに、意識的に水分摂取の回数を増やして、水分摂取の習慣を小さい頃からつくるように心がけましましょう」

「また、おしっこの回数が多い場合は、ナトリウムやミネラルが足りていないサインです。食事だけでなく、おやつにもタンパク質や電解質(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等)の含まれるものを出してあげるといいでしょう

「手軽に塩分と水分補給ができて、子どもにも好評なのが『自分で作る味噌汁』です。用意するのは味噌玉(だしと味噌、具材を合わせて1食分ずつ丸めてラップで包む)とカラフルでかわいい形のお麩だけ。子供に好きな形のお麩を選ばせてあげてお椀に入れ、あとは味噌玉をお湯に溶かすだけで、おやつの時間でも手軽に味噌汁が楽しめますよ」

普段の生活の中でも生じる「冬の脱水症」。自分の意思で水分補給ができない乳幼児は、とくに近くの大人が気を配ってあげたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 本田由佳先生

    慶應義塾大学SFC研究所上席所員(健康情報コンソーシアムメンバー)。順天堂大学医学部小児科非常勤助教。1997 年順天堂大学スポーツ健康科学部卒業。健康計測器メーカー勤務などを経て、女性、アスリートの体組成・体温と生活習慣、栄養の研究、基礎体温記録手帳の開発・研究などに携わる。産科婦人科舘出張 佐藤病院の研究コーディネーターも務める。「女性と子どもの健康力をあげて日本を元気に!」を使命に活躍中。医学博士で、一児の母。

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ライター紹介

宇都宮 薫

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディアなどへの執筆のほか、単行本(ビジネス書・実用書)の編集・構成を手掛ける。得意ジャンルは、出産、育児、健康、おでかけ、芸能、グルメなど。まち歩きとバイクが好き。

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