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子供の「中耳炎」4タイプを紹介 原因・症状・治療法・予防法も

掲載日: 2020年5月12日更新日: 2020年5月12日岡本有紗

子供がなりやすい耳の病気として知られる「中耳炎」。繰り返しなることもあるので、親としては心配ですよね。

そこで、子供が中耳炎になりやすい理由や原因、症状、治療法、予防法について、昭和大学医学部・耳鼻咽喉科学教室の主任教授、小林一女さんに伺いました。

●子供に多い「耳の病気」症状別まとめ●毎日の耳掃除は必要ないって本当!?

中耳炎とは?

「中耳炎」という病名はよく知られていますが、そもそもどのような病気なのでしょうか。

「人の耳は、外側から大きく外耳・中耳・内耳という構造に分けることができます。中耳炎はその中耳にあたる部分、つまり鼓膜とその後ろの空間(中耳腔)を形作る中耳粘膜に、炎症などの異常が起こる病気です」

「中耳炎にはいくつかのタイプがありますが、一般に知られている中耳炎は、一過性に起こる『急性中耳炎』です

中耳炎の症状&原因は?

急性中耳炎になると、どんな症状があらわれるのでしょうか?

「本人が自覚できる症状としては、耳の痛みや発熱、聞こえの悪さ、耳が詰まったような感覚、耳だれ(耳漏)などがあります。医師が耳の中を見ると、鼓膜が赤くなっていたり膨れていたりするのがわかります。水疱や穿孔(穴)が認められることもあります」

原因は何でしょうか?

「中耳への細菌やウイルスの感染です。よくある原因菌は、インフルエンザ菌や肺炎球菌などです。中耳炎は風邪と同時に発生することがよくありますが、これは鼻に先に感染した細菌・ウイルスが、鼻の奥の方でつながっている耳管(じかん)を通じて、中耳にも及ぶのが理由です」

大人より子供に多いのはなぜでしょうか。

大人と子供では耳と鼻をつなぐ耳管(じかん)の構造が違うのが理由です。大人は鼻から耳に向かって上り坂になっていますが、子供の耳管は太く短く水平なため、鼻の中の細菌やウイルスが耳に侵入しやすく、大人より簡単に感染を起こしてしまうのです

「また、耳管の機能がまだ十分発達していないことも、子供の中耳炎の多さに関係していると思われます。実際、中耳炎の患者は3歳未満が多く、大きくても就学前の子供が大半です。小学生以上になるとぐっと少なくなります」

小さな子供が風邪をひいたら、耳に症状が出ないかどうか、注意した方が良さそうですね。


中耳炎のタイプと治療方法

中耳炎には「急性中耳炎」以外にどんなタイプがあるのでしょうか。

「反復性中耳炎や滲出性(しんしゅつせい)中耳炎、慢性中耳炎といったものがあります」

急性中耳炎

一過性の炎症によって耳の痛みや発熱などが生じる中耳炎です。治療は、軽症なら最初の数日は経過観察し、その後は症状に応じて抗菌薬などを使用します。

症状がひどい場合は、最初から抗菌薬を投与することもあります。多くは一週間程度で治りますが、2歳以下の乳幼児は何度も中耳炎を繰り返したり、中耳に水が溜まった状態が長引いたりすることが多いです。

反復性中耳炎

ある期間内に、繰り返し急性中耳炎を発症する場合をいいます(過去6ヶ月以内に3回、または1年以内に4回以上)。原因菌に対する本人の免疫力低下が原因で、特に生後1年未満で急性中耳炎にかかった子は反復性中耳炎になりやすいといわれています。

治療は急性中耳炎と同様ですが、免疫力を高めたり補ったりするために、漢方薬などが用いられることもあります。

滲出性中耳炎

中耳腔に水が溜まり、耳が聞こえにくくなるタイプの中耳炎。多くは風邪や急性中耳炎に続いて発症します。乳幼児に多く、耳の痛みや発熱がないため、気づきにくいので注意が必要です。呼びかけに返事をしない、聞き返すことが多い、テレビの音を大きくしたがる、言葉が遅かったり言い間違いをするなど、「もしかして耳が聞こえにくいのかも?」と思うようなふるまいがあるときは気を付けましょう。

治療は、経過観察を中心に、状況により抗菌薬などを使います。大半は3カ月ほどで治りますが、それ以上経っても治らず、なおかつ両耳とも発症している場合は、中耳腔からの排水と通気のために鼓膜にチューブを入れることもあります(鼓膜換気チューブ留置術)。

慢性中耳炎

中耳の炎症が持続している状態です。慢性中耳炎の中にさらにいろいろなタイプがありますが、代表的なのは鼓膜に穴があく穿孔性(せんこうせい)中耳炎です。症状は耳だれと難聴が主で、耳の痛みはあまりみられません。

根本的に治療するには、手術で鼓膜の穴をふさぐことが必要です。


予防法&家庭での対処法

子供が突然耳を痛がると、親は慌ててしまいますが、家庭できる対処法はありますか?

痛みが強くても、急いで病院に行く必要はありません。耳の周囲を冷やして様子を見るようにしてください。子供が服用できる鎮痛剤があれば、使用しても良いでしょう。そのあとに落ち着いて受診してください」

中耳炎の予防法には、どんなことがありますか。

中耳炎は鼻の感染に続いて引き起こされることが大半のため、鼻のメンテナンスが一番重要です。まずは風邪をひかないようにすること、鼻炎がある場合は耳鼻咽喉科でちゃんと治療をすることです」

風邪をひかないためには、手洗いやうがいなど、普段の生活習慣をきちんとすることが重要で、それが子供の中耳炎予防につながると言えそうですね。

お話を聞いたのは…

  • 小林一女さん

    昭和大学医学部耳鼻咽喉科学教室教授、医学博士。1982年昭和大学医学部卒業後、関東労災病院、総合高津中央病院などを経て、2014年より現職。日本聴覚医学会、日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本鼻科学会、ほか多くの学会で理事、評議員を務める。東京都身体障害者福祉センター医学的判定医師、損害保険料率算出機構顧問医、人事院健康専門委員。

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ライター紹介

岡本有紗

2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

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