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子どもの足のトラブル増加中!健康的な足づくりとは?

掲載日: 2016年5月25日更新日: 2017年5月16日飯田友美

外遊びや歩く機会が少なくなってきている今、子どもの足にも変化が…。なんらかのトラブルを足に抱えていると、身体にも大きな影響を及ぼすといいます。そこで「足の健康科学」の権威、桜美林大学特任教授の阿久根英昭先生に、健康的な足づくり、「足力」の高め方について伺いました。

今の子どもたちは「足力」が低下している?

最近の子どもたちは、偏平足や足指の変形など足のトラブルを抱えている子が多いそうです。子どもたちにいったい何が起きているのでしょう?

「子どもたちの病んでいる足の現状は、足力の低下に顕著に表れています。足力とは、土踏まずの形成、足指の機能、足指の力のことです。」

まず土踏まずは、足の裏にある筋肉を鍛えることで作られるのだそうです。

「土踏まずの形成率の推移ですが、1979年には64.6パーセントだったものが、1988年には58.6パーセント、2008年には47.2パーセントと、近年になるにつれて低下しています。これは、クルマの普及によって歩く機会が少なくなったことや、ゲーム機などによる室内遊びが多くなったことが影響していると思われます。」

また、足の指を閉じたり、開いたり、曲げたりする機能の低下も著しいといいます。

「例えば逆立ちをするとき、必ず手の指を左右に大きく開いて安定して立てるようにしますよね。それと同じように、立っているときも足の指を開いて力を入れなければ、バランスよく立つことができません。」

最近の子どもたちは、屋外では靴、室内では靴下と、ほぼ1日中履き物を履いています。そのため、足の指をしっかりと開くことができなくなっているのです。神奈川県相模原市内にある保育園や幼稚園では、『すべての足の指が開く子ども』はわずか11.3パーセント、『一部開く』は49.1パーセント、『すべて開かない』が39.6パーセントという調査結果もあります。」

走ったり、飛んだり、片足立ちのときにバランスを保つなどに大きな役割を果たす足指の力。阿久根先生によると、最近の子どもたちの運動能力の調査に見られる走力の低下は、足の指で大きく地面を蹴る力がなくなっていることの表れだということです。


足力の低下は足だけの問題じゃない!? 体に及ぼす影響とは?

阿久根先生は、足力が低下するということは、身体全体へ大きな影響を及ぼすといいます。

「例えば、背中を丸めた猫背姿勢。これは、足の指をしっかりと使えないので重心がかかと寄りになってしまい、前後のバランスを整えるために首を前に突き出すことで起こる姿勢です。猫背姿勢は筋肉の疲労を増大させるので、長く立っていられずに、しゃがみこんでしまうのです。」

少し歩いただけですぐ疲れるのも、足力の低下が原因です。足の指をうまく使えないために、すり足やペタペタ歩きなどになってしまいます。そのため歩行効率が悪くて疲れやすくなり、長く歩くことができないのです。また、すぐに転んでしまうのも、足の指で踏ん張ることができないためです。」

そのほか、低体温(体温が36度に満たない)児童の増加や骨のもろさなども、足力の低下の証だと阿久根先生。

「体温は、身体を動かすことによる筋収縮の活動で上がります。文部科学省の調査では、低体温児童の割合は子どもたちの5人に2人。子どもたちがいかに身体を動かさなくなったかがわかります。そして、物につまずいて足をひねっただけで簡単に骨が折れてしまう異常骨折は、歩かなくなったことによる若年性骨粗しょう症が原因です。」

「地上で生活している私たちの身体には、重力という『おもり』がのしかかっています。それでも問題なく生活できているのは、重力に対する抗重力という身体の力が働いているからなのです。抗重力は身体を動かすことでより高くなり、その働きが丈夫な骨を形成する役目を果たすのです。」

子どもたちの健全な成長は、足を使うという、人間本来の姿を取り戻すことにあるとのこと。足のトラブルは、このように身体全体に影響を及ぼすということを覚えておきましょう。


健康的な足づくりと、正しい靴の選び方

ではどのようにすれば、健康的な足づくりができるのでしょうか。

「まずは足の指を使い、バランスを整えながら背筋を伸ばし姿勢を正しましょう。歩くときも、足の指を使ってしっかりと蹴り出すことを意識してください。足底にある筋肉や腱は、すべて足の指につながっていますから、丈夫で健康的な足づくりのためには、足の指を鍛錬することが大切なのです。」

「また、健康的な足づくりのためには靴選びも大切です。靴選びは、歩き始めた乳児の段階から始まっていることをぜひ認識してください。私がおすすめしたい靴選びのポイントを紹介しましょう。」

阿久根先生による靴選びのポイント

  • 靴を履いたときにフィット感があり、足底全体でバランスよくしっかりと立てていること
  • 立位や歩行時の安定を確保するためにかかと部分にくぼみがあること
  • 足の指に圧迫感がなく自由に動かせること

選んでほしくないのは、靴全体が細くできているもの。現代人の細い足に合わせてデザインを優先して製作しているようですが、細い靴は足の指を圧迫するため、足や足の裏にある筋肉の低下を招く原因になります。目先のキャッチフレーズだけを真に受けて購入しないようにしましょう。」

靴を選ぶときには、靴を履いて立ったり歩いたり、フィット感や歩きやすさを必ず確認することが大事とのことです。

「靴以外で最もおすすめしたい履物は、鼻緒のある下駄や草履です。鼻緒のある履物は履きながら足の健康づくりができます。次に地下足袋もおすすめですね。地下足袋は、足そのものの動きを可能にする履物です。一度履けば十分にそのよさはわかると思います。そして、靴下も5本指のものがおすすめですね。」


足のトラブルを防ぐには、とにかく足を使うことが大切です。まずは、足の指をしっかりと使えるよう、お子さんの足に合った靴を選んであげてください。そしてこの機会に、お母さんやお父さんも、お子さんと一緒に歩いたり遊んだりして、一緒に足指を鍛えてみてはいかがですか?

お話を聞いたのは…

  • 阿久根英昭先生

    1950年、鹿児島県枕崎市に生まれる。1973年、日本体育大学体育学部武道学科卒業。足裏における土踏まずの形成と運動能力、健康状態との関係に注目、研究を行なっている。「足の健康科学」の権威として、テレビ・雑誌等数々のメディアで活躍中。桜美林大学特任教授。

ライター紹介

飯田友美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

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