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「高い高い」で乳幼児揺さぶられ症候群になるって本当?

掲載日: 2016年9月23日更新日: 2016年9月23日岡本有紗

赤ちゃんはゆらゆらされたり、高い高いされたりするのを喜びますよね。でも、「乳幼児揺さぶられ症候群」という言葉が知られるようになり、「高い高い」などのあやし方に怖さを感じる親も増えたとか…。親のあやし方が原因で「乳幼児揺さぶられ症候群」になることはあるのでしょうか。専門家にうかがいました。

乳幼児揺さぶられ症候群とは?

「乳幼児揺さぶられ症候群」とは具体的にはどういうものなのでしょうか。

「簡単に言うと、強い揺さぶりによって、子どもの脳に損傷が起こった状態です。」

そう話すのは、「東京医科歯科大学医学部」教授で、乳幼児揺さぶられ症候群の予防研究に従事した経験をもつ、藤原武男さん。

「乳幼児の頭は身体に対して大きくて重いことに加えて、支える首の力も不十分です。このため、強く揺さぶられると、頭が大きく振り回されてしまいます。」

「赤ちゃんは頭蓋骨の発達に比べて脳の発達が未熟で、脳と頭蓋骨の間にスペースがある状態なので、頭が揺さぶられると、まるでシェーカーの中身のように脳が激しく動き、脳と頭蓋骨の間にある血管や神経が切れてしまいます。その結果、言葉や歩行などに重大な障害が残ったり、場合によっては命にかかわったりすることもあります。」

乳幼児揺さぶられ症候群の発症頻度について、今のところ明確なデータはないそうですが、「アメリカの場合は、1歳未満の乳児10万人に対して30人くらいの割合でみられるとの報告があります」と藤原さん。

障害が残ったり、命にかかわったり…などと聞くと怖くなってしまいますが、どのくらいの揺さぶり方は危険なのでしょうか?


危ない揺さぶりとはどんなもの?

「揺さぶられ症候群になるような揺さぶり方は、特殊なもの。誰でも、どんな揺さぶり方でもなるわけではありません。子どもの脳や神経が傷つくような揺さぶりとは、はたで見ている人が止めに入るくらい、ものすごく強い揺さぶりです。」

例えば、赤ちゃんの両脇だけを持って身体をぶらさげた状態から、前後へガクガク揺さぶるようなやり方です。揺さぶりの強さについて調べてみると、明確なデータはありませんが、2秒〜10秒間に5回〜6回程度という医療機関からの報告があるようです。 

「こんな揺さぶり方、普段はしませんよね。でも、こうした揺さぶり方をする場合は、ほとんどの場合、親が赤ちゃんの泣き声にいら立ち、カッとなったとき。『何で泣きやまないの!?』という気持ちから、赤ちゃんを強く揺さぶってしまうのです。」

揺さぶられ症候群になる年齢は1歳未満の場合が多いそう。月齢の低い赤ちゃんのほうが脳が未熟だということに加えて、赤ちゃんが泣く頻度も高く、赤ちゃんのお世話に不慣れな親がイライラしやすいからでは?と藤原さんは予測します。

「高い高い」って危険なの!?このあやし方は大丈夫?

「高い高い」などのあやし方で、意図せず揺さぶられ症候群になってしまうことはあるのでしょうか?

これに対して、藤原さんは「ゆっくりとした動作で上げ下ろしをするのであれば、通常は考えられません」ときっぱり。

「普通のあやし方や遊び方で加わる力と、揺さぶられ症候群を発症するほどの揺さぶりの力では、強さがまったく違います。揺さぶられ症候群は、速く強い揺さぶりをわざと与えなければ心配はいりません。」

ただし、赤ちゃんを急激に持ち上げたり下ろしたり、空中に放り投げてキャッチするような激しい動作は危険です。あくまでも、赤ちゃんにとって負担の少ないあやし方を心がけましょう。

なお、チャイルドシートの向きを間違えてつけたり、シートベルトが不十分だったりしたときに、車の振動や急ブレーキで揺さぶられ症候群になる場合がある、とも言われますが、藤原さんいわく、そこまで神経質になる必要はないそう。とはいえ、使用方法の誤りには、くれぐれも注意したいですね。


揺さぶられ症候群を予防するためにできることは?

揺さぶられ症候群を予防するためには、親だけでなく、赤ちゃんの周りにいる人みんなが、正しい知識を持つことが大切だそう。

気を付けたいのは、自分ではなく、知らないところで他の人に揺さぶられてしまっているケースです。お母さん、お父さんはもちろん、祖父母や大きい兄弟姉妹にも、乳幼児揺さぶられ症候群について勉強してもらうほうがいいでしょう。」

「また、子どもに気になる症状があらわれた場合は、心当たりがなくてもすぐ病院に行ってください。比較的みられやすい症状は、けいれんや意識障害です。小さい子の場合、眠っているのか意識がないのかわからないのではと思うかもしれませんが、意識障害の場合はぐったりしている感じがあるのでわかるはずです。」

親に心当たりがないと「すぐに受診せずに様子を見てから…」と受診が遅れるケースもあるそうですが、手遅れになる前にまずは病院を受診することが大切です。

「揺さぶられ症候群でも、早く受診して治療すれば、正常に回復することは少なくありません。なぜその症状が起こったのかという原因を考えるより先に、子どもの体調第一でとにかく病院へ向かいましょう。」

「泣くのは当たり前」だと思うことが大切

通常のあやし方では問題ないことがわかりましたが、揺さぶられ症候群の発症例には、赤ちゃんの泣き声にイライラした親が衝動的に強く揺さぶるケースが多いよう。子どもが泣き止まずイライラしてしまうときには、どうすればいいのでしょうか?

「まず、赤ちゃんが泣くのは当たり前ですし、親のせいで泣くわけではありません。これを知っておくだけで、気持ちの持ち方が違うはずです。」

たとえば、赤ちゃんが夕方に泣き出す現象は、英語では「Baby colic」といい、日本でも「黄昏泣き」という立派な名前がついています。生理現象によって泣く場合もあるので、無理に赤ちゃんを泣きやませようと思わないほうがいいのだそうです。

「イライラを無理やり抑える必要もありません。それを子どもに向けなければいいだけの話なので、泣かれて困ったら赤ちゃんをベビーベッドなど安全な場所に置いて、いったんその場を離れるなど、うまく対処してください。」

子育てをしていると「これは大丈夫?」と心配に思うことが多いものですが、神経質になりすぎず、大らかな気持ちで育児をしたいものですね。

お話を聞いたのは…

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ライター紹介

岡本有紗

2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

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