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子どもの「でべそ」は病気なの? 原因・基礎知識・治し方も紹介

掲載日: 2018年10月24日更新日: 2018年10月24日岡本有紗

生まれて間もなく、おへそがポコッと飛び出して「でべそ」になる赤ちゃんがいます。大きさなどはさまざまですが、出ていることに心配する親も少なくありません。そこで、でべそに関する基本知識や影響などについて、小児外科医の奥山宏臣先生に詳しく聞きました。

「へそのゴマ」は取るべき? 医師が明かす正体&影響&ケア方法

でべその正式名称は「臍ヘルニア」

そもそも「でべそ」は正式名称なのでしょうか?

でべそは正式には、臍(さい)ヘルニアと呼ばれます。身体の臓器や組織が本来あるべき位置からはみ出す症状を『ヘルニア』といい、『臍』はへその漢字です。でべそになる赤ちゃんは、5〜10人に1人と意外に多くいます

では、臍ヘルニアは具体的にどういう状態なのでしょうか?

「臍ヘルニアは、へその緒(臍帯)が取れて穴が開いた状態になった部分が、うまく閉じなかった場合に起こります」

「赤ちゃんが無事生まれて、お母さんの胎盤とつながっていたへその緒に血が通わなくなると、不要になった付着部の組織がグッと収縮して穴が閉じ(瘢痕収縮:はんこんしゅうしゅく)、おへそができあがります」

「ですが、その収縮過程のどこかにエラーが起きて、穴の閉じ方が不完全になる子がいます。そうなると、泣いたりするたびにお腹の内側から加わる力によって、お腹の中の臓器(主に腸管)がおへその皮膚に覆われて飛び出してしまうのです」

収縮が不完全になる理由は何でしょうか。

「早産で生まれた赤ちゃんに多い傾向がありますので、腹壁の発達が関係している可能性はあります。ですが、満期産のお子さんにもよく見られますので、現時点では、具体的な理由は明らかになっていません」

ということは、予防はできず、生まれてみないとわからないということ。ちなみに、赤ちゃんの性別による差も特にないそうです。

臍ヘルニアは治療するべき?

それでは、臍ヘルニアになってしまったら、どうしたらいいのでしょう。

「まず、それほど心配する必要はないということを覚えていただきたいと思います」

臍ヘルニアの90%は、お腹の筋肉などの発達に伴い、生後半年から1歳くらいまでの間に自然に治ることがわかっています。また、臍ヘルニアがあるからと言って、健康に影響が及ぶということはほとんどありません

どんどん大きくなる例もあると聞きますが、問題はないのでしょうか。

「生後3カ月くらいまでは、大きくなることはよくあります。臍ヘルニアは、生後1週間ぐらいからだんだん目立ち始めますが、1〜2カ月経って赤ちゃんが元気に泣くようになると、お腹に力が入るために、さらに押し出されてきます。なかには直径3cmくらいになるものもみられます」

それでも異常というわけではないそうですが、臍ヘルニアが手術の対象になることもあるとか。

1歳を超えても残っている臍ヘルニアは、手術を検討する対象になります。1歳までに閉じなかった場合は、そのまま待っていても自然に治らない可能性が高いためです

1歳を過ぎたら、必ず手術をするべきなのでしょうか?

「いいえ。追加で1年ほど経過を見て、手術するかどうかを決めることが多いですね」

放置したからといって深刻な問題があるわけではないのと、どちらかというと美容的な観点が強い手術になるからというのが、その理由です」


早めの受診できれいに治ることも!

臍ヘルニアの大半が自然に治るというのは、親としては安心する情報です。

「ですが、できれば小児外科の受診はしてほしいですね。臍ヘルニアは健康というよりは見た目に関係のあることです。早くきれいに治った方が良いに決まっています」

確かにその通りです。早めに治すための治療法はどのようなものなのでしょうか。

綿球を臍ヘルニアに強く押しつけて、テープで押さえる『圧迫療法』という方法です。早い段階から圧迫療法を行った子は、自然治癒を待っていたケースより、やや早めに治ることが多いようです

この治療には、治ったときのおへその形がきれいになるメリットもあるのだそう。

「おへそがずっと突き出したままだと、皮膚が伸びてしまい、治ったときに皮膚のたるみが目立つ場合があります」

「ですが、しっかり圧迫しておけば、そのような皮膚のたるみを少なくすることができます」

圧迫療法は保険適用とのこと。臍ヘルニアが目立ってきたら、早めに受診して治療を受けるのが良さそうですね。

「強調したいのは、『見た目』というのは、子どもの世界でも重要だということ。やがて集団生活に入ったとき、ちょっと形に特徴のあるおへそだったりすると、注目を集めてしまうことも多いですし、子ども自身も気にする場合があります

「ですから、まずは圧迫療法を受けてみてほしいです。また、手術する場合は、保育園や幼稚園などに入る前に行うようにしてほしいと思います」

親も子どもも、おへそのことがあまり気にならないうちに対処するのが良さそうですね。

とはいえ、赤ちゃんの頃は、ちょっとでっぱったおへそも愛らしいものです。お医者さんの助けを借りつつ、ゆったりと経過を見守っていきましょう。

お話を聞いたのは…

  • 奥山宏臣先生

    大阪大学大学院小児成育外科学教授。大阪大学医学部小児外科助手、国立呉病院小児外科医長、大阪府立母子保健総合医療センター小児外科医長、兵庫医科大学小児外科教授を経て、平成26年7月より現職。著書に「スタンダード小児外科手術」「臍の外科」などがある。日本外科学会指導医/専門医/評議員、日本小児外科学会理事/指導医/専門医。日本小児へそ研究会事務局代表。

  • 大阪大学小児外科
  • 『臍の外科』
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ライター紹介

岡本有紗

2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

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