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ひなまつり雑学・なぜ雛人形を早く片付けないと嫁に行き遅れる?

掲載日: 2015年2月6日更新日: 2017年2月21日水谷 映美

女の子がいる家庭にとって、大切な行事である「ひなまつり」。そろそろ雛人形を出さなくちゃ!というご家庭も多いのではないでしょうか。でも、そもそも雛人形のあの2人って誰? なんで雛人形を早く片付けないと嫁に行き遅れるの? 意外に知られていない「雛祭り」の由来について『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)の著者であり、メディアでも活躍中の和文化研究家・三浦康子さんにお話を伺いました。

ひなまつりと雛人形のルーツとは?

「ひなまつり」はもともと邪気払いの行事だった

「ひなまつりのルーツは、古代中国から伝わった『上巳(じょうし/じょうみ)の節句』です。上巳とは3月上旬の巳の日を意味し、昔から、季節や物事の節目には邪気が入りやすいと考えられていたため、季節の節目の邪気払いのひとつとして行われていました。後に日にちが変動しないよう3月3日に行われるようになりました。」

「やがて、江戸幕府によって上巳の節句が五節句(重要な年中行事と制定された、5つの式日)のひとつになると、女の子の成長を祈願する行事となり、『ひなまつり』と呼ばれて親しまれるようになりました。」

ここで豆知識! ひなまつりは別名『桃の節句』といいますが、桃は古来より神聖な果実とされ、邪気を祓う力があると言われており、旧暦の3月3日が桃の季節でもあることから「桃の節句」という名になったそうですよ。桃ってとっても神聖な植物だったんですね。


雛人形の誕生にまつわる2つの由来

「そもそも雛人形誕生には2つの由来があります。ひとつは、人形が人間の代わりに厄を引き受けてくれると考えられていたことから、人形(ひとがた)に自分の穢れ(けがれ)を移して川や海に流したという『身代わり信仰』。もうひとつは、平安時代に貴族の子どもたちの間で盛んだった『雛遊び(ひなあそび/ひいなあそび)』で、紙の人形を使ったおままごとです。」

「これらが結びつき、人の厄を引き受ける男女一対の紙製立雛が誕生。やがて人形作りの技術が発展し、紙の人形から立派な雛人形へ、流すものから飾るものへと変化していきました。」

こうして、女の子が生まれると雛人形を用意し、不幸はその子の身代わりに人形に引き受けてもらい、健やかな成長と幸せを願う「ひなまつり」になったそうです。

雛人形は平安時代の宮中の人々

最近は、住宅事情によりコンパクトなお雛様を飾っているご家庭も多いと思いますが、一般的に雛人形といえば、主役のお内裏様とお雛様以外にも多彩な面々が並んでいる絵が思い浮かびます。あの人たちって、一体何者なんでしょう?

雛人形は、平安時代の宮中の様子を表しています。まずは、メインのお内裏様とお雛様。内裏とは天皇の住まいである御所を意味します。その昔、雛人形は女性の幸せな人生の象徴であり、高貴な人と結ばれることが女性の幸せと考えられていました。そういった意味で、あの2人は天皇と皇后の姿を表していると言われています。現代でいえば、お雛様は女の子なら誰もが憧れるプリンセス(お姫さま)の象徴でしょうか。」

「その他に、内裏に仕える女官たちを表した『三人官女』、お囃子の演奏をしている『五人囃子』、お内裏様を警護する『随身(ずいしん)』の2人、宮中で雑用をする『仕丁(しちょう)』の3人。嫁入り道具や京都御所に植えられている桜と橘なども飾られています。」

よく見ると、三人官女の中央にいる女官長だけが既婚のため眉毛がなかったり、五人囃子がそれぞれ手にしている楽器や仕丁の表情が異なっていたり…宮中の人間模様が細かに描かれていることに気づきます。


雛人形を飾る時期と片付ける時期

雛人形を飾るのは立春または雨水を迎えた頃が目安

雛人形を飾る時期の目安としては2つあります。ひとつは、ひなまつりには春を寿ぐ意味があるので、立春(2月4日頃)を過ぎた頃。もうひとつは、ひなまつりが人形を流して穢れを祓う水に関わる行事だったことから、雨水(うすい/2月19日頃)を過ぎた頃に飾り始めると良縁に恵まれると言われています。」

とはいえ、お天気の関係やお仕事の都合もありますよね。ここで豆知識! 例えば
立春は2月4日だけでなく、その後15日間すべてを指すんだとか。雨水も同様です。なので、絶対にこの日に出すべき!ということではなく、あくまでも目安の期間として捉え、そのご家庭に合ったタイミングに出せば問題ないそうですよ。

片付けるのは、3月4日か春分の日くらいまでに

では、片付ける時期はどうでしょうか? 「雛人形を早く片付けないと嫁に行き遅れる!」なんて言い伝えが有名ですが…。

「そう言われているのには理由があります。雛人形には穢れを移して不幸を遠ざける意味合いがあるので、厄を移した人形は早く片付けた方がいい。また、婚礼の様子を表した雛人形=娘の結婚を意味するため、早く飾ると『早く嫁に出す』、早く片付けるほど『早く嫁に行く』などと捉えられているようです。さらには、片付け上手にしつける意味もあるんですよ。」

なるほど! とはいえ、雛人形を片付けるのは手間がかかりちょっと面倒なもの。雨の日は湿気が多く片付けには向きませんし、なかなかタイミングが合わない!なんてことも。

「ひなまつりが済んだ翌日に片付けるのが理想ですが、
一般的には3月中旬、遅くとも春分(3月21日頃)までにはしまった方がいいでしょう。ここでひとつ裏ワザをお教えしますね。時間がなくてなかなか片付けられないときは、内裏びなを後ろ向きに飾りましょう。『お帰りになった』と解釈する、先人の知恵です。

これで、早く片付けなくちゃ…という焦りから解放されますね!

また、ひなまつり当日はせっかくなので家族で行事食も楽しみたいですよね。代表的なものとしては菱餅ひなあられ桃花酒・白酒(子どもはノンアルコールの甘酒)はまぐりちらし寿司などがオススメです。ぜひ食卓に取り入れてみてくださいね。

ひなまつりにまつわる東と西での文化の違い

全国的に祝われるひなまつりですが、実は関東と関西で違った点があることをご存知ですか?

ひなあられは、甘い?しょっぱい?

「ひなまつりに欠かせない『ひなあられ』。関東では甘い味付けの米粒型、いわゆるポン菓子が主流。一方、関西では丸い形をしていて、醤油味や塩味などの、まさにあられ。塩辛い味が特徴なんですよ。」

人形の持ち物にも東西で違いがある

「ひな壇に並ぶ『仕丁』たち。関東では、帽子をかける台笠(だいがさ)・靴を乗せる沓台(くつだい)・長い傘を手にしていて、お内裏様とお雛様が出掛けるときの様子を表しています。対して京都御所が近い関西では、くまで・ちりとり・ほうきを手にしており、宮中を掃除する様子が表現されていることが多いようです。」

あなたのご家庭にある雛人形はどちらですか? 今年のひなまつりはそんなことを考えながら雛人形を眺めてみるのも面白いですね。

いかがでしたか? 慣れ親しんだひなまつりに、こんなにもいろいろな意味があったとは。今年はいろいろな話をお子さんとしながら、家族みんなで桃の節句を楽しんでくださいね。

お話を聞いたのは…

  • 三浦康子さん

    和文化研究家。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、web、講演などで活躍中。All About「暮らしの歳時記」、キッズgoo「こども歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。

  • 三浦康子さんのホームページ
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ライター紹介

水谷 映美

1979年生まれ。出版社勤務、受付嬢、社長秘書を経て、現在はwebを中心にライターとして活動中。男・女・女の3児の母。気になることは何でも試してみないと気が済まない典型的B型女子。子育て世代のリアルな声を反映した記事を得意としている。

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