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覚えてなくてもお出かけは大事! 子どもの記憶の仕組みを紹介

自分が赤ちゃんだったころの出来事を「覚えていない」という人が大半だと思います。どうせ記憶がないのだから、「赤ちゃんを旅行に連れて行っても意味がない」と考えてしまう人もいるはずです。では、本当にお出かけは無駄なのでしょうか…?  子どもの記憶について、名古屋大学でヒトや動物の心の働きを研究する川合伸幸准教授にお話を聞きました。

言葉は覚えられても、エピソードは覚えにくい!

赤ちゃんのころの出来事を忘れてしまうことを「幼児期健忘」と呼ぶそう。どうして私たちは赤ちゃんのころの事を覚えてないのでしょうか。まずは、赤ちゃんの記憶について伺いました。

「幼児期でもまったく記憶を保持できないわけではありません。0歳でもお母さんの顔の見分けがつきますし、1歳になれば言葉も話し始めます。これは顔や言葉を記憶していなければできないことです」

それでは、なぜ言葉は覚えられるのに、出来事は覚えていないのでしょうか?

「言葉や顔は毎日同じことを見聞きします。いわば受験勉強のように繰り返し学習して覚えるものです。一方、出来事の記憶は1度だけ起きた事についての記憶で『エピソード記憶』と呼ばれています。例えば、『昨日の朝ご飯』や『去年の夏休みに帰省したこと』などはエピソード記憶です。エピソード記憶については言葉などと比べて発達が遅く、3歳くらいから機能すると言われています」

「1つのエピソードに対して『いつ』『どこで』『何をした』と記憶をつなげることで、『いつ』を思い出したときにほかのことも芋づる式に思い出せるのがエピソード記憶です」

3歳以降はこのエピソード記憶を身につけることで、膨大な記憶の中からでも効率よく思い出を呼び出せるようになるそうです。


「忘れる」のではなく「思い出せない」に近い!

では、エピソード記憶が発達していない3歳以下の子どもは、自分が体験したことをすべて忘れてしまうのでしょうか?

『忘れてしまう』のではなく『思い出せない』と表現したほうが近いですね。時が経って、記憶がなくなったわけではなく、覚えているものを取り出しにくくなってしまったと言えます」

3歳までに脳の8割が完成すると言われています。脳が発達するにつれて神経細胞のつながりがより複雑になり、海馬など脳内で記憶を司る部分も3歳くらいで完成します。この完成前、言わば『工事中』の時点で覚えた記憶は、脳の発達と共に埋もれてしまい、取り出しにくくなってしまうと考えられています」

「また、成長とともにたくさん物事を覚えるため、記憶を思い出すときに検索する対象も増えていきます。そのため、成長するにつれて『記憶の取り出しにくさ』はどんどん増してしまいます」

成長するにつれて新しい記憶がどんどん増え、幼いころの記憶が埋もれてしまうとのこと。膨大な記憶の中から、目的の記憶を取り出す工夫のひとつがエピソード記憶というわけですね。


旅の思い出は子どもの中に残っているはず!

3歳以前の記憶も忘れたわけではなく、取り出しづらくなっただけとのこと。赤ちゃんの頃に旅行やお出かけに行って楽しかった思い出は、記憶に残らなくても子どもにとって何か良い影響はあるのでしょうか。

「大人になってから思い出せないとしても、良いことも悪いことも子どものうちは自分が経験したことを覚えているものです。また、エピソード記憶が身につく前の1歳半程度でも、兄弟が誕生するなどインパクトある出来事は大人になるまで覚えていることがあります。何がその子にとってインパクトがある出来事かはわかりませんから、幼い頃に経験したことがすべて無駄、ということは考えにくいのではないでしょうか」

「私の子どもの話になりますが、3歳のときに1年前の旅行のことを話し出して驚いたことがあります。大きな機関車にびっくりして泣いたことを覚えていました。2歳〜3歳の子どもの毎日は家や保育園などで過ごすことが多く、場所の変化は比較的少ないので、『お出かけ』という一大イベントは特に記憶に残りやすいのかもしれませんね」

子どもと出かけると、大人が気にもしていなかったことを覚えていることがあります。将来忘れてしまうかもしれませんが、お出かけはその子にとって大事なものを見つけるきっかけになるのかもしれません。

子どもに過去の出来事をスムーズに思い出してもらうコツ

とはいえ、せっかく色々準備して出かけたのに覚えていてくれないのはちょっと寂しいもの…。最後に、川合さんに「思い出しやすい聞き方」をうかがいました。

「『○○に行ったよね』といった地名を言うよりも、『みんなで花火を見たよね』『大きなヤギがいたよね』と体験したことを話す方が記憶を思い出す手がかりになりやすいですね」

大人になって忘れてしまっても、旅の思い出はきっと子どもの胸にしまわれ続け、親に愛されている実感につながっているはず。新しい思い出を作るためにも、家族で出かけてみてはいかがでしょうか。

監修者・川合伸幸さんの書籍もチェック!

ヒトの本性-なぜ殺し、なぜ助け合うのか

お話を聞いたのは…

  • 川合伸幸さん

    名古屋大学情報学研究科 准教授。比較認知科学・認知科学・実験心理学を専攻し、ヒトや動物の心の働きについて調べている。主な著書に『ヒトの本性-なぜ殺し、なぜ助け合うのか』『コワいの認知科学』『心の進化-人間性の起源をもとめて』などがある。

  • 名古屋大学 比較認知科学研究室
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ライター紹介

井上マサキ

1975年生まれ。小学生の娘と保育園の息子を持つ二児の父です。SE時代に会社で男性初の育児休暇を取得。フリーライターに転身後も家事育児を続け「ほぼ主夫」状態に。IT、ネット、スマホが得意分野。路線図が好きで、額縁に入れて飾るほど。

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