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【芸術の秋】子どもの感性を育む「にじみ絵」とは

掲載日: 2015年9月29日更新日: 2017年5月16日衣山 泉
濡れた画用紙に水で溶かした絵の具で描く、独特の絵画手法「にじみ絵」。楽しいのはもちろんのこと、子どもの感性を育む効果も期待できるそうです。そこで福岡で絵画教室を主宰する楠田佳世さんに、にじみ絵の効果や家での始め方などを伺いました。

にじみ絵は絵ではない!? 色遊び

濡れた画用紙に赤色でサッと線を描くと、色がにじんでどんどん広がります。そこに黄色を加えると…オレンジ色になった! 画用紙の上で繰り広げられる色の動きに、子どもたちは歓声を上げたり、ジーッと見つめたり、さらに色を加えたり…。このように、にじみ絵は色がにじんで変化していくので、乾いた画用紙に描く絵とは違って、思い通りにはなかなか描けません。だからこそのおもしろさ、発見があると楠田さんは言います。

にじみ絵は、小さい子どもたちにとっては色遊びです。色が自由に広がったり、色と色が混ざり合い違う色が生まれるといった小さな驚きが体験できるのです。色の体験は紙の上だけではありません。画板に色が残って偶然に虹色ができたり、片付けの時にお皿の絵の具が混ざって流れていくのを楽しむお子さんもいます。そうしたすべてが色の体験なんですね。」

純粋に色を楽しむこと、それがにじみ絵の醍醐味。子どもの色彩感覚を養うのにとても役立つそうです。

子ども(5歳)が描いたにじみ絵
「それだけはなく、にじみ絵は海外では絵画療法として医療やリハビリなどに取り入れられています。紙の上で変化する色が緊張を解きほぐし、深い呼吸ができるよう助けてくれるのです。実際に、絵画の経験がなくても誰でも楽しめるにじみ絵は、子どもだけでなく大人にもオススメですよ。」

楠田さんの教室には、子どもたちだけでなく、子育て中のママや年配の方も通っているそう。にじみ絵の効果は、子育てにおいてだけでなく普遍的なんですね。

大人が描いたにじみ絵

芸術を通して心を育てるシュタイナー教育

もともとにじみ絵は、シュタイナー教育に取り入れられている絵画教育法です。19世紀の思想家であるシュタイナーは、0歳〜7歳に「意志」、8歳〜14歳に「感情」、15歳〜21歳に「思考」を育むことで、意思を持った真に自由な大人に育つと考えました。そして教育における芸術の必要性を重視したのです。

「『教育は芸術的に行われるべきである』というのがシュタイナーの考え方です。美しく透明感のある色で形にとらわれずに描き、その変化を楽しむにじみ絵は、小さな子どもの心と身体を伸びやかに発達させるのに最適な方法だと思います。」

シュタイナー教育の理論は難しく、敷居の高いイメージがありますが、にじみ絵なら気軽に取り入れられるはず。筆が持てるようになる3歳〜4歳ぐらいから始められますので、さっそく実践してみましょう!

にじみ絵の準備:まず「透明水彩絵の具」を用意

にじみ絵は、絵画教室などでも体験できますが、次の道具をそろえれば自宅で楽しむこともできます。

【用意するもの】

・透明水彩絵の具(赤・青・黄)
色は3色のみ。絵の具には通常「透明水彩絵の具」「不透明水彩絵の具」と種類がありますが、にじみ絵には透明タイプを使用します(小学校で使う絵の具の多くは「不透明」)。楠田さんのオススメは、ドイツの画材メーカー、シュトックマー製。「にじみ絵で子どもたちの色彩感覚が育つように考えて作られた絵の具なので、にじみ絵の効果を十分に発揮します。インターネットなどで購入できるので、ぜひシュトックマーを使ってください。」

・水彩用画用紙(ワトソン紙など)
大きな文具店で購入可。のびのび描けるよう、大きめサイズがオススメです。事前に水の入った容器に画用紙を入れて、画用紙全体を浸しておきます。

・スポンジ
描く前に、濡れた紙の水分を拭き取るために使用します。海綿がオススメ。なければキッチン用のスポンジでも可。

・筆
丸筆ではなく、平筆を用意。1.5〜2cm幅がベスト。

・お皿、または瓶
水を入れて絵の具を溶かします。3色分用意。ジャムなどの空き瓶でもOK。

・筆洗い
お皿や筆で色が混ざってしまわないよう、違う色を使う前に必ず筆を洗うようにしましょう。

・筆拭き用雑巾
洗った筆の水分を切るために使用します。

そのほか画板があると便利。また床やテーブルに新聞紙を敷き詰めたり、レジャーマットを敷いておけば汚れ防止になりますよ。

実践編:描き始めたらあとは子どもにお任せ

水に浸しておいた画用紙をテーブル(あれば画板)の上に置き、スポンジで軽く画用紙の表面をなぞって水分を拭き取ったら、さっそくにじみ絵スタート!

楠田さんが主催する教室の様子
『にじみ絵をやろう』と言って始めるよりも、まず大人がやる姿を見せる方がいいですね。『○○を描こう』といった目的を持たず、頭を空っぽにして描いてみてください。大人が楽しんでいる姿を見れば、子どもも必ず『やりたい』と言いますよ。

子どもが描き始めたら、あとは自由にさせてください。最初は落ち着かなくてそわそわしていても、色がにじんで混ざっていくのに夢中になると集中して描くようになります。」

子どもが描き始めたら親は口出しせずに見守るのが大切
「途中、『こう描いたら』『この色は使わないの?』といった声かけは不要です。小さいお子さんには何も言わなくていいのです。ただ、『色を変える時は筆を洗ってね』ということだけ約束しましょう。夢中になると忘れがちですけどね。」

体験後は、作品をしばらく乾かします。にじみ絵は子どもが色を楽しむことが目的なので、作品を見て「これは何?」と聞いたり、「上手」といった評価は必要ないんだとか。声を掛けるなら、「おもしろかったね、また描こうね」など体験についての声かけがいいそうです。結果(作品)ではなく、過程を楽しむものなんですね。

子どもたちの感性に刺激を与えるにじみ絵。芸術の秋だからこそ、いつもと違う色彩体験を、大人も一緒に体験してみませんか?

お話を聞いたのは…

  • 楠田佳世さん

    元美術教諭として福岡市立中学校・特別支援学校に13年間勤務したのち退職、息子2人を連れ渡英し、 4年間シュタイナーの芸術療法を学ぶ。現在は福岡県内で、シュタイナーの水彩画教室、ワークショップなどを主宰している。

  • シュタイナーの絵画教室 福岡
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ライター紹介

衣山 泉

幼稚園児の娘、フリーライターの夫、2匹の愛猫と福岡在住。旅行も外出も大好きだが、平日は娘のお迎え以外はほぼ家にこもりっぱなしのインドア派なので、体力が追いつきません。ほしいものは、タフな体。余力のある週末には日帰り温泉や蚤の市、焼き物の里めぐりに出かけています。

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