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子どもの夢応援企画 第4回:消防士 滝野川消防署・森さん

掲載日: 2015年11月20日更新日: 2017年5月16日矢口 あやは

子どもたちのなりたい憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。第4回は、防火衣に身を包み、危険な火災現場にまっさきに駆けつけて消火と人命救助にあたる「消防士」をご紹介! 東京消防庁に勤務して9年目になる消防士・森健司さんに、お仕事の内容や魅力を伺いました。

朝8時半、消防士が署前に集結!

東京都北区・滝野川消防署の朝8時30分。朝日を浴びて、2チームに分かれた消防士さんたちがズラリと整列します。24時間の勤務を終えたチームが、これから勤務を始めるチームと交替する、「大交替」が行われるのです。

前のチームから業務をバトンタッチしたら、まずは消防車両と資器材の点検タイム。その後、輪になって体操をして、体をほぐしたら「出場訓練」スタート! 猛スピードで防火衣に身を包むこと数十秒、1分後には消防士さんはみんな消防車に乗り込んでいました。


製薬会社から一転、災害と戦う現場へ!

燃え盛る炎を前にしてもひるまず、抜群のチームプレーで迅速に火を消し止める消防士さんとメカニカルな消防車。街中で見かけると、目を輝かせる子も多いですね。もともとは森さんも、そんな子どもの一人だったといいます。

子どもの頃からヒーローに憧れて、人を助ける仕事がしたかったのです。かっこいい言い方をすると、人命救助の現場で働きたかったんですね。」

「大学を出て、縁があった就職先は製薬会社でしたが、3年間勤めてみて、子ども時代になりたいと思っていた自分の姿とはちがうと感じました。そこで会社を辞めて、もう一度、消防士の夢を追いかけることを決めたんです。」

「消防官採用試験」を突破して、全寮制の消防学校へ

地方公務員である消防士(消防官)になるためには、市町村の各自治体が実施する「消防官採用試験」に合格しなければなりません。このとき、森さんは25歳。試験に向けてどんな準備をしたのでしょう?

「東京消防庁の試験では、英語や数学、一般常識といった"学科試験”、適性を見る”面接試験”、腹筋や腕立て伏せなどを通して体力を測る”体力試験”が実施されています。私の場合は、試験までの半年間は、毎日、図書館まで往復20kmの道のりを自転車で通って、体力をつけつつ自習しました。」

試験に合格したら、全寮制の消防学校に入校し、6ヶ月かけて消防士に必要な知識と技術、仲間とのチームワークを身につけます。その後は、各消防署に”見習い”として配置され、半年間現場で実践の技術を学びます。これが終われば、晴れて消防士です!」

陸の消防隊の”最後の砦”「はしご車」を操作する

消防士になってからの森さんは、いち早く現場にかけつけて、消火や救助、危険排除などにあたる「ポンプ隊」、より高度な消火活動能力を持つ「特別消火中隊」を経て、「はしご隊」へ。はしご車を運転する資格をとり、現在は「はしご機関員」の任務についています。

「はしご機関員は、はしご車を運転して現場へ急行し、はしごを高所に架ける役目を担当しています。はしご車は、地上からはどうしても消火できないときに活躍することから、陸の消防隊の“最後の砦”ともいわれているんですよ。」

「ちなみに、私が担当している車両のはしごは、ビル約10階分に相当する30mまで伸ばすことができます。はしごの先端についているバスケットには仲間の消防士が乗りこんで、逃げ遅れた方を救助したり、上から放水したりするのです。必要なところにバスケットを的確に架けられるかどうかは操縦の腕次第。日々、技術を磨いています!」


自分の体で救助できる仕事の責任とやりがい

食事中でも、仮眠中でも、要請が入れば1分以内に装備を整え、飛び出していく消防士さん。命をかけた過酷な職業、つらいことも多いのでは?

確かに体力勝負ではありますが、自分の体を使って直接人を助ける仕事なので、責任の重さと同時にやりがいも感じています。実際に救助して病院に運ばれた方が、元気になられて、お礼に来てくださったときは本当にうれしかったですよ!」

「現在、はしご隊のメンバーは3名。誰か1人欠けても活動できません。自分だけでは決して立ち向かえない困難な災害現場で、信頼できる仲間と協力することで被害を最小限に抑えられるのも、やりがいを感じるところです。」


森さんのような交替制勤務の消防士は、朝8時30分から翌8時40分までが勤務時間。朝の『大交替』で次のチームに交替したら、家へ帰り、体を休めます。

「いつ災害が起きるかわからないので、常に緊張しがちですが、いざというときに集中するためにも、メリハリをつけてリフレッシュすることを心がけています。」

消防士に求められる2つの素質

1.体力は必須

空気呼吸器(酸素ボンベや酸素マスクなど)を含めて、身につける装備の重さはなんと約20kg。この重い防火衣を身につけて、長時間にわたって過酷な環境の中を活動することになるため、強じんな体力は必須! 

「春夏秋冬、いつ災害が起きても迅速に、ベストな状態で出場するためには体が資本なので、お休みの日も体調を崩さないように、健康面には気をつかいますね。体力維持のために、日々のトレーニングも欠かしません。」

2.負けない精神力

体力も、技術力も、知識ももちろん大切。でも、もしかしたら「これが一番大切かも」と森さんが挙げたのはあきらめない、負けない精神力

「災害現場であきらめてしまったら、救助を必要とする人を助けられず、仲間の身や自分の身も危険にさらすことになります。最後まで絶対にあきらめない、人を助けたいという気持ちがあること。そして、それをいつまでも持ち続けることが最も大切だと思います。」

過酷な現場でも折れない精神力を養う方法とは?

「やっぱり、がむしゃらにスポーツを打ち込むことで育まれるように思います。私は中学・高校で陸上部に属していて、最後まであきらめない精神力はここで身についたように思います。陸上は、たった数十秒の本番のために、何年もかけてトレーニングをして挑むところが、とても奥深かった。団体競技であれ、個人競技であれ、スポーツは仲間との絆を強めたり、コミュニケーション能力を伸ばす力があると思いますよ」


子どもたちの素朴な疑問3つ

毎日どんな訓練をしているのですか?

「まずは、前のチームから業務を引き継ぐ『大交替』、消防車両と資機材・装備の『点検』、災害現場を想定して出て行く『出場訓練』を行います。また、私の勤務する消防署の敷地内には大きな耐火建物を模した訓練棟があり、そこで火災を想定した訓練をすることも。そのほか、空いた時間を見つけて、自主的にランニングや懸垂(けんすい)といった筋力トレーニングも欠かさずに行っていますよ。」

女の子でもなれますか?

「なれます。パワーでは男性にかないませんが、女性ならではの気遣いや繊細さを生かして救急隊などで活躍する女性も増えています。もちろん、「ポンプ隊」や「はしご隊」に属している女性も。やる気さえあれば、活躍の場はたくさんあります!」

やけどはしますか?

「火災現場で活動する以上、やけどなどのケガの危険はどうしてもつきものですね。でも、ケガをしないための訓練を日々行っているから大丈夫! 実際に火をつけた訓練施設に入って、やけどをしないぎりぎりのラインを経験する訓練もしています。」

消防士の合言葉は「絶対にあきらめない」! 

最後に、消防士になりたい子どもたちに向けて、アドバイスをお願いします。

消防士に必要なのは、”絶対にあきらめない”気持ちです。がんばった結果は、決して裏切りません。回り道をしても大丈夫、願えばかないます。夢に向かってがんばってね!」

森さん、貴重なお話をありがとうございました。『子どもの夢応援企画』第5回は「パティシエ」です。お楽しみに!

「夢応援企画(将来なりたい職業紹介)」の記事一覧はこちら

お話を聞いたのは…

  • 森健司さん

    製薬会社での営業職を経験したのち、26歳で東京消防庁に入庁し、現在は滝野川消防署で、巨大なはしご車を操る機関員として活躍。日々技術を磨きつつ、ハイパーレスキュー隊への夢も。かわいい二児のパパ。

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ライター紹介

矢口 あやは

1983年生まれ。大阪府出身。フリーライターとして活動する傍ら、生き物の世界に魅せられて、狩猟免許を取得。沖縄から北海道まで、国内の自然と動物を訪ね歩いています。現在は、世界一周を目指して貯金の日々。

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