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子どもの夢応援企画第6回:バレエダンサー 中川真樹さん

子どもたちのなりたい憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、夢の育みをサポートする『子どもの夢援企画』。第6回は、「バレエダンサー」をご紹介。選ばれた人だけが叶えることのできる憧れのダンサーになるために、どうやって頑張ってきたのか? フィンランド国立バレエ団のプリンシパルとして活躍してきた、中川真樹さんに聞きました!

悔しくても、バレエの夢を諦めたことは一度もなかった

4歳のころ、茨城県水戸市に引っ越したばかりの中川さんにお友達を作るため、お母様がバレエを習わせたのが、すべての始まりだったと言います。

「気づいたときにはバレエが大好きでした! 先生の勧めでコンクールに出場するようになった小学6年生くらいから、プロになりたいと思うようになりました

結果がなかなか出せずに悔しい思いをしたものの、中川さんに諦めるという選択肢はありませんでした。へこむどころか「海外でバレエを学ぶ学生の多くが、バレエ学校に入ってバレエ漬けの毎日を送っている。だから私も、高校から海外のバレエ学校へ行きたい」と考え始めたそうです。

「結局、地元の高校に行くことになったのですが、今度は『高校を卒業したら、絶対に海外に行く』と強く願うようになりました。そのために地元で週5日レッスンをし、さらに毎週水曜日の放課後には電車で東京に出て、紹介いただいた著名な先生のクラスを受け、終電で帰っていました

「東京での週1のレッスンでは、教えていただいた内容をすべて帰りの電車でメモして、地元の教室でその内容をやり直しました。お稽古がない日もジムで筋トレをして、バレエに関わっていない日はほとんどなかったと思います


いよいよ世界へ!18歳でオランダのバレエ学校に入学

高校卒業の年から、ついに海外のバレエ学校を受験する準備が始まりました。

踊っているところを撮影したビデオを、いくつかのバレエ学校に送って返事を待つ…という日々でした。憧れだったローザンヌ国際バレエコンクールの提携校を調べて、4校ほど応募しました。当時はインターネットもなく、郵送で送ったきり返事がない学校もあれば、返事が来てオーディションが決まり、はるばる出向いても落ちてしまったこともあります」

「決まるまで4カ月近くかかりましたが、高校を出た年の春にようやく合格し、18歳でオランダに行くことになりました

コンプレックスに悩むより、自分の「強み」を見つける!

ひとりで日本を出たこともなければ、自分で食事を作ったこともなく、英語も少ししか話せなかった18歳の中川さんにとって、最初の一年はかなり大変だったそうです。

「オランダのバレエ学校では、先生になかなか認めてもらえずに悔しい思いをしました。また、踊りの実力はさまざまでしたが、外国の女の子たちが持つすらっと長い脚や小さな顔に対して、コンプレックスも感じてしまいました

「体型へのコンプレックスはキャリアを通してずっと感じ続けましたが、乗り越えられるものではなく、受け入れるしかない。私の場合は『持って生まれた体型は仕方ない。その代わり、私にしかないチャームポイントを磨こう』と考えることで、克服していきました

中川さんが持っていた“ほかの女性ダンサーにはない強み”は、ジャンプ系のパ(ステップ)。跳ぶことが得意だったので、普段は女性が踊らない男性の跳躍もマスターし、自分の強みとして磨き上げたそうです。

自分の道を切り開くため、勇気を出して「運」をつかんだ

バレエ学校の卒業を控えた最後の一年は、世界中のバレエ団のオーディションを受ける過酷な日々が待っていました。

「泣きながら一年かけて世界中を回り、ようやく決まったのは卒業間際、地元オランダにあるバレエ団でした。ただ、踊りたい作品の方向性とは異なるレパートリーを持ったバレエ団だったため、私は『できるだけ早く次のバレエ団を探して移りたい』と考えていました」

1年ほど経った頃、在籍していたオランダのバレエ団に、フィンランド国立バレエ団の芸術監督(演目やダンサーなど、すべてを決める責任者)が作品を振付に訪れたそう。「フィンランドなら、今いる場所より、好きな演目を踊って成長できる」と感じた中川さんは、芸術監督のところに行き「私を入れてください」と直談判! それをきっかけにオーディションを受け、数カ月後に移籍することができました。

「それまで、大勢の中で抜きんでるためには、『もっと前に出ればよかった!』と後悔したことが何度もありました。チャンスをつかむためには自分から行動を起こし、そこで急に訪れた運にすばやく対応することが大切です。そのためには一歩前へ出る勇気が必要だと、この時に実感しました」

最高位のダンサー「プリンシパル」に…!認められた喜び

世界中の多くのバレエ団では、ダンサーたちは実力に応じた5〜6の「階級」に分けられています。移籍して数年後、中川さんは最高位のプリンシパルに任命されました

「プロになってからは、学生時代のような純粋な“踊る喜び”より、自分に与え続ける課題の克服や怪我の予防、ライバルとの競争など、終わりのない闘いの連続。そんな中で、認めてもらえたことは本当に嬉しかったです!」

練習・本番に忙しいプリンシパル。体調管理がプロとしての課題

プリンシパルの日常とは、どんなものなのでしょうか?

「フィンランド国立バレエ団は、週休1日。その代わり、夏休みが2カ月あります! 休暇中は最低限のレッスンをしながらも、しっかり休んでリフレッシュして、新しいシーズンに備えていました」

「普段の生活は週5日、毎朝10時から1時間半近く基本のレッスンをおこない、その後、本番がない日は次の舞台に向けてのリハーサルをおこないます。本番がある日はリハーサル後、夕方に劇場へ向かい、19時に開演して終演は22時半ごろ。10カ月間で100公演近くがあったので、大体週に3回〜4回は本番があり、本番をこなしながら同時に次に踊る作品のリハーサルをおこなうというハードな日々です」

どうやって体の疲れを取り、怪我を予防するかも、プロとして大切な課題でした。体によいものを食べ、きちんと体を休める時間を取りつつ、少しでも故障を感じたらバレエ団のトレーナーと相談をして特別なエクササイズを取り入れ、怪我の予防に努めました」

そんな中川さん、実は先日、フィンランド国立バレエ団を退団し、バレエダンサーを引退したばかり。「引退する年齢は人それぞれですが、私は30年以上かけてバレエをやり切ったという感覚がありました。でも引退したら、改めてバレエをお稽古するのが楽しくなって、子どもたちを教える喜びも増してきたんです」と語ります。


中川さんが、子どもたちからの素朴な疑問にお返事!

バレエダンサーという職業に対する子どもたちの素朴な疑問に、答えていただきました!

どうしてつま先で立てるのですか?

「布と厚紙と皮を貼りあわせたトゥシューズという靴を履けば、つま先で立てるようにできています。といっても、履けばすぐに立てるわけではなく、全体重をつま先で支えて踊れるように、足裏や足首などの筋肉トレーニングをしています。毎日トレーニングを続けることで、立てるように鍛えているんですよ」

お客さんが多くて緊張したことはありますか?

「もちろん! とくに主役となると責任は重大です。公演の前には緊張のあまり悪夢を見たことも(笑)。腹をくくってお客様の前に出ていけるかどうかは『どれだけたくさんお稽古をしてきたか』にかかっています。納得のいくお稽古ができていれば、最終的に自分のことを信じられるので、平常心を保つことができますよ」

痩せていないと、バレエダンサーにはなれませんか?

「バレエダンサーがガリガリに痩せ細っていたら体力が持ちません。だから、栄養を考えて、しっかり食事を摂っています。大切なのはトータルのプロポーションで、体重を気にしすぎないこと。脂肪がたくさんついてしまうのはNGですが、適度な筋肉をつけて、体型を整えています」


コミュニケーション力と、困難に立ち向かう強さを

最後に、バレエダンサーに憧れる子供たちへアドバイスをいただきました!

「テクニックを鍛えることはもちろんですが、コミュニケーション能力もとても大切です。体を使う職業ではありますが、バレエは仲間や振付家、芸術監督など、多くの人と対話しながら作品を作り上げていくもの。そのためにも、普段の会話から喜びや悲しみなど、たくさんの感情を覚えましょう。それは舞台で役柄を演じるときにも必要になります」

「それから、困難に立ち向かう勇気や強さも重要です。すぐ諦めずに『石の上にも三年』という気持ちで頑張って下さいね

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お話を聞いたのは…

  • 中川真樹さん

    粕谷辰雄バレエ団付属水戸バレエ研究所にてバレエを始める。粕谷辰雄、川島文子、篠原聖一に師事。 1996年オランダ王立コンセルヴァットワールに留学。在学中、ネザーランド・ダンスシアター、オランダ国立バレエ団公演に参加。2000年フィンランド国立バレエ団に入団。2009年同バレエ団プリンシパルに昇進。2015年に引退。2011年には「ジャイロキネシス」「ジャイロトニック」トレーナーの資格を取得。現在は、クラシックバレエ教師およびジャイロキネシスとジャイロトニックの講師としても活躍中。

  • 中川さんの公式ブログ
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ライター紹介

富永明子

編集者・ライター。出版社勤務を経て、フリーランスに。食・健康・美容分野での編集・執筆が多く、料理研究家やフードコーディネーターと一緒にレシピ本を作ったり、専門家に取材して美容の記事を書いたりしています。趣味はクラシックバレエで、踊ることも観ることも大好き。バレエの専門書を作ることもあります。

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