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「鬼のパンツ」が寅柄な深いワケ!? “節分の鬼”雑学

掲載日: 2016年2月1日更新日: 2017年1月13日千谷 文子

2月3日の節分は、家庭で子どもたちと一緒に楽しめる年中行事の一つ。「鬼は外、福は内」と言って、豆を鬼に投げつけますが、そもそも、なぜ節分に鬼退治をするのでしょうか? 赤鬼、青鬼のその体の色には何か意味が? そして、鬼のパンツはなぜ虎柄? 「日本の鬼の交流博物館」に、“節分の鬼”にまつわる雑学を伺いました。

なぜ節分には鬼退治をするの?「鬼」って何?

節分といえば、鬼を思い浮かべる方が多いと思いますが、“節分の鬼”の始まりは古く、平安時代まで遡るそう。

「平安時代、大晦日に行われていた宮中行事に、“追儺(ついな)”というものがありました。“儺(な)”とは、疫病の神様のことで、悪いことを追い払う行事です。また寺院で正月に行われていた修正会(しゅしょうえ)は、旧年の悪を正し、新年の吉祥を祈願するもので、鬼が出てくることも。」

「これらの行事が重層的に関連し、“追儺”は室町時代になると、“節分”に行うようになり、疫病や邪気の象徴である『鬼』を追い払う行事へと発展したのです」

【参考】節分の意味って? 子どもに教えたい豆まきの由来

そう話すのは「日本の鬼の交流博物館」館長・塩見行雄さん。

「鬼」という日本語は、目に見えない邪気を示す「陰(おん)」や、隠れているこわいもの「隠人(おんにん)」に由来しますが、かつては疫病や飢饉、災害など、人知を超えた恐ろしい出来事は鬼の仕業と考えられていたのです。

鬼退治の三種の神器は「豆・いわし・柊」

節分につきものの「豆まき」や、「柊鰯(ひいらぎいわし。ヒイラギの枝にいわしの頭を刺したものを玄関口に飾る風習)」も、実は鬼に深い関係があり、庶民に節分の行事が広がるなかで、鬼退治に効果があるものとされたそう。

「節分では、鬼の弱点である目を、豆で打ち、柊で突きます。いわしの匂いも、鬼は苦手なようです。」

【参照】節分にいわしの頭を飾るのはどうして?

なるほど、鬼は悪いことの象徴で、「豆・いわし・柊」で鬼が入ってこないようにするのが“節分”なんですね。

「なお、豆まきについては、その昔京都の鞍馬に鬼が出たとき、3石3斗の豆をいり、鬼の目つぶしをして災厄をのがれたのが始まりと伝えられています。」

「3石3斗」といえば、約600リットルもの大量の豆…! 言い伝えでは、鬼のでてくる穴を封じて、その大量の豆を7人の博士が49日間に渡って投げつけたというのですから、鬼もたまったものではないですね。

こうして<「魔の目(魔目=まめ。鬼の目)」に豆を投げつけることが「魔を滅する(魔滅=まめ)」に通じることから、現在では節分の夜に鬼に豆を投げつけて追い払うと、1年間無病息災で過ごせると言われています。


赤鬼は欲張りで、青鬼は怒りっぽい性格

鬼といえば、赤鬼、青鬼をイメージします。その体の色について調べると、京都・廬山寺(ろさんじ)の節分行事に行き着きました。赤鬼、青鬼、黒鬼が踊りながら登場し、厄除け開運の祈りを邪魔するも、豆や弓をもって退治されるという、見ていて楽しい行事です。

「廬山寺で登場する鬼には、人間の3つの煩悩を当てはめています。赤鬼は貪欲=欲張り、青鬼は瞋恚(しんに)=怒りや恨み、黒鬼は愚痴。その色分けは、中国の“五行”に紐づけているようです。」

“五行”とは、木行(青〈緑〉)、火行(紅)、土行(黄)、金行(白)、水行(玄〈黒〉)の5つ。自然現象、政治体制、占い、医療などさまざまな分野の背景を説明する概念で、方角や色なども配当されています。

一般的には赤と青の2色で表されることが多いですが、新潟県にある本成寺の節分会など、5色の鬼が登場するところもあるそうです。

鬼のパンツはなぜ虎柄なの?

体の色と同様、鬼のパンツが虎柄なのにも、ちゃんと理由がありました。

鬼が出入りするとされる不吉な方角“鬼門”は、陰陽道では北東に当たります。方角を十二支にあてると、北東は丑寅(うしとら=牛、虎)です。つまり鬼の頭にあるのは牛の角、下は虎柄のパンツというわけです。」

鬼の存在は古くから体系化されてきた“五行”や“陰陽道”などと深く関わっているんですね。

実は、昔は鬼には角は生えていなかったそう。

日本の鬼の原型といわれる出雲神楽の鬼神大王や、古い絵巻物に描かれている鬼には角がないものもあります。鬼は角があろうとなかろうと鬼だったのですが、時代が下がるほど鬼のイメージが固定化し、角を描くようになったのではないかと推測しています。」

今では、角は日本の鬼の大きな特徴です。


どこか憎めない、身近な鬼たち

“節分の鬼”は悪の対象として退治される存在ですが、必ずしも「鬼=悪役」ではないのだそう。

「民俗芸能の鬼は、得体の知れないもののけではなく、神様に近い鬼なんですね。例えば秋田のなまはげは、山の神々の使いとして里に来訪し、悪さを忠告して吉をもたらします。阿修羅は元は鬼ですが、改心して仏教の守護神に。“節分の鬼”も春の訪れと共に現れますから、悪役だけど、寿ぐ(ことほぐ)存在かもしれませんね。」

驚くことに、地方によっては節分に鬼を退治せず、むしろ歓迎するところもあるそう!

「実は、“鬼は外”ではなく、“鬼は内”と言う節分もあるんです。京都の綾部藩(現・綾部市)の殿様は九鬼(くき)様といって、名前に“鬼”が入っている。庶民は“鬼は外”なんて言えないので、今でも綾部藩領だった福知山の大原神社では“鬼は内、福は内”と言うんですよ。」

恐ろしいばかりだと思っていた鬼ですが、こうして学ぶにつれ、すっかり鬼に親近感が湧いてきました。ぜひ子どもたちと一緒に年中行事をしながら、鬼の雑学会話も楽しんでくださいね。

お話を聞いたのは…

  • 日本の鬼の交流博物館

    「鬼と遊び、鬼について学び合う」をテーマにした、京都府福知山市の博物館。地元・大江山の鬼伝説を始め、全国各地の鬼の伝統芸能や世界の鬼面などを展示して紹介。「鬼とは何者なのか」について考えることができます。

  • 日本の鬼の交流博物館
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ライター紹介

千谷 文子

1969年生まれ。フリーの編集・ライター。ニッチな温泉エリアのご近所温泉を案内する、『さいたま湯めぐり』シリーズ3冊を出版。それを機にケーブルテレビの番組に温浴ナビゲーターとして出演。インコが頭に飛んできたり、愛犬の寝言に耳を傾けたり。そんな瞬間が幸せな日々。

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