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端午の節句の由来って? 兜や鯉のぼりを飾る理由は?

掲載日: 2015年4月17日更新日: 2017年5月3日水谷 映美

5月5日は「端午の節句」。兜や鯉のぼりを飾って、柏餅を食べて、男の子の成長を祝う日!…ということは知っていても、その由来や詳しい意味までは知らない人が多いのではないでしょうか? そこで、意外に知らない「端午の節句」の風習や由来などを、日本の行事や季節の楽しみについて絵と文で綴る作家・広田千悦子さんに詳しく伺いました。

「端午の節句」の由来

そもそも「端午の節句」とはどういう意味で、なぜ5月5日に祝うことになったのでしょうか。

もともと『端午』は月の端(はじめ)の午(うま)の日という意味で、5月に限ったものではなかったようです。やがて『午(ご)』と『五(ご)』が同じ音であり、また奇数が重なって縁起が良いという中国の思想から『重五(ちょうご)』の日である現在の5月5日を指すようになったと言われています。また、奇数が重なる=気が強すぎて悪いことも起きやすいとも考えられていたため、この時期に邪気払いをする風習が多くみられます。」


古くは、女性のための風習だった!?

今でこそ「男の子の成長を祝う日」として知られていますが、なんと昔は女性のための風習だったそう!

「旧暦5月は現在の6月を指し、古代より田植えの月としてとても重要な時期と考えられていました。その大切な田植えの前に、早乙女(田植えの日に苗を植える役となる女性)は、家の中に閉じこもって忌み籠り(穢れを祓い身を清めるため、一定の場所に篭って外部との接触を断つこと)をしていたと言われています。その際、強い香りで邪気祓いをしてくれる植物として菖蒲やヨモギが厄祓いに使われていました。これらの風習が、現在の端午の節句の始まりのひとつと言われています。」

「6月は、季節的にもじめじめしていて体調を崩しやすい時期で、病が流行りやすいという点からも、菖蒲やヨモギなどの植物を使って厄祓いがされていたようですよ。」


「端午の節句」が「菖蒲の節句」とも言われ、菖蒲湯に入って無病息災を願うのは、菖蒲を使って厄祓いをしていた名残り
。時代を超えて、私たち人間は植物の力に頼ってきたのですね。


武家社会で男の子の行事へと変化 鎧や兜を飾るように

では、なぜ女性が主役の風習が、男の子の成長を祝う行事へと変化していったのでしょうか。

「時代が武家社会に移ると、『菖蒲』と『尚武』(武道・武勇を重んじること)をかけた『
尚武の節句』へと変わっていきます。江戸時代には、徳川幕府の重要な式日が5月5日に定められ、将軍の家に男の子が生まれると、玄関前に馬印(うましるし)や幟(のぼり)を立てて祝うようになりました。その後、時代と共に『男の子の誕生と成長を祝うお祭り』として庶民の間にも根付いていきました。」

端午の節句が現在の「男の子の行事」として広まってきたのは、近世のことなのですね。

当時、武士にとって鎧や兜は自分の命を守るための大切な道具でした。このことから
「男の子を事故や病気、災難から守ってくれますように」という願いを込めて、端午の節句では鎧や兜を着た五月人形を飾るようになったそうです。

また、将軍→武家→庶民へと端午の節句が広まっていくうち、
男の子が生まれたときに立てる幟に、「鯉の滝登り」をイメージして鯉を描くようになったそう。鯉は産卵の時期になると、川の流れに逆らってのぼっていきます。そのどんどんのぼっていく様が出世に例えられることから「子どもの立身出世」を、また鯉は滝を登って竜になるという言い伝えから「逆境に負けない力を持って欲しい」という願いが込められました。これが「鯉のぼり」の始まりです。

「こどもの日」として国民の祝日に

現在、5月5日は「こどもの日」と呼ばれますが、これはなぜなのでしょうか。


昭和23年に『こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する』日という国民の祝日に定められたためです。これ以降、『こどもの日』と呼ばれるようになり、カレンダーにも記されるようになりました。」

今では5月5日の「こどもの日」は、こどもの成長を祝うことがメインとなり、5月の第2日曜日の「母の日」が、お母さんに感謝する日として親しまれていますが、「こどもの日」は母に感謝する日でもあったのですね。


地域ごとに違う!ユニークな風習・料理あれこれ

鯉のぼり、五月人形、柏餅、ちまき、菖蒲…これらが代表的な「端午の節句」の代名詞ですが、実は地域ごとに異なる風習があるそうです。ちょっと面白い各地方のお祝い法を広田さんに教えていただきました。

【行事】

  • 『凧揚げ合戦』(浜松)

初子の誕生を祝う初凧を揚げたり、また互いの凧糸を絡ませ、擦り合いながら相手の糸を切る糸切り合戦などが行われる。

  • 『因幡の菖蒲綱引き』(中国・四国地方)

菖蒲やヨモギを編んだ綱を使って綱引きを行う。旧暦の5月5日にあたる日前後ということで、現在は6月の第2日曜日に開催されている。

【料理】

  • 『タケノコご飯』(北海道)

タケノコは子どもがすくすく育つのに縁起が良い食べ物とされており、タケノコご飯を食べる風習がある地域がある

  • 『柏餅』

柏の木の新しい芽がでるまで古い葉を落とさないという特長から「子孫がとだえない」縁起物として、全国的に食べられている柏餅。実はその葉は、その名の通り『柏』を使っている地域と、『サルトリイバラ』という植物の葉を使っている地域がある。

  • 『蘭湯』

邪気を祓うために蘭の葉を入れて湯に入ったという古い風習にちなんで、蘭の花を塩漬けにして、お湯を注いで飲んだり、お風呂に入れて厄祓いをする。

  • 『黄飯』

くちなしの実をご飯に色付けした、黄色いご飯。くちなしの実が、男の子の邪気を祓うという言い伝えがあり、愛知県などの西側の地域のお祝いごとでみられる風習。

「日本に古くから受け継がれてきた様々な行事の由来は、振り返る時代によって読み取れることは様々ですが、共通していえるのは『植物の力などを有効に活用し、私たち人間は自然に寄り添いながら生きてきた』ということだと思います。」と広田さん。

「お祝いの方法は各地方で異なっていますし、こうしなきゃいけない!ということは一概には言えません。それぞれのご家庭で大切にしたいことに合うものを柔軟に取り入れて、日本の行事を楽しんでほしいですね。」

今年の5月5日は、我が子の誕生と健康に感謝しながら、菖蒲湯に入ったり、タケノコご飯を食べたり…ぜひ、各ご家庭で興味をもったお祝い法で楽しんでみてくださいね。

お話を聞いたのは…

  • 広田千悦子さん

    文筆家。日本の文化・歳時記研究家。うつわ・ことば・絵の作家。新聞や雑誌などでコラムと挿絵を連載中。企業アドバイザー。メディアなどに多数出演。著書は『くらしを楽しむ七十二候』(アースエンターテイメント)、『ほんとうの和の話』(文藝春秋社)、『口福だより』(小学館)、『美味しい! 日本のくらしと七十二候』(新潮社)、『七十二候で楽しむ日本の暮らし:角川ソフィア文庫』(角川学芸出版)など多数。『おうちで楽しむにほんの行事』(技術評論社)はロングセラー。

  • 広田千悦子さんのホームページ
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ライター紹介

水谷 映美

1979年生まれ。出版社勤務、受付嬢、社長秘書を経て、現在はwebを中心にライターとして活動中。男・女・女の3児の母。気になることは何でも試してみないと気が済まない典型的B型女子。子育て世代のリアルな声を反映した記事を得意としている。

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