暑い夏は海で思い切り遊びたいもの。とはいえ、小さな子供がいる場合、波を怖がったり、遊び方がわからないファミリーもいるはず。そんな家族におすすめの海遊びがビーチコーミングです。
砂浜を散策しながら貝やきれいな石などの漂着物を拾うだけなので、小さな子供はもちろん、大人も楽しめます。
今回は、都心から一番近い潮干狩り場としてもファミリーに人気の千葉県船橋市にある『ふなばし三番瀬海浜公園』にある、『ふなばし三番瀬環境学習館』の科学コミュニケーター・小澤鷹弥(おざわたかや)さんに、ビーチコーミングのやり方や楽しみ方を教わりました。
ビーチコーミングとは?

そもそもビーチコーミングとはなんでしょうか?
「波によって海辺に漂着した貝や生き物の骨など、さまざまなものを拾い集めることです。漂着物は、潮の流れに左右されるので、浜辺によって異なりますし、同じ浜辺のなかでもエリアが違えば、漂着物が違っていることもあります。浜辺を散歩する感覚で小さな子供も楽しめる手軽さは魅力です」

「また、拾った漂着物をコレクションしたり、種類を調べたり観察したり、拾ったあとも楽しみ方が自在なので、年齢問わず楽しめます」
ビーチコーミングという言葉にあまり馴染みがないですが、昔からあったのでしょうか?
「じつは歴史は古いです。ビーチコーミングという名前ではないものの、生きた貝を拾って食べたり、日用品を拾って使うなど、古代から行われていたそうです。漂着物は海沿いで暮らす人の生活物資を得る手段として、また信仰などと深くかかわっていました。明治時代以降、漂着物の研究がさかんに行われるようになりました」
「ちなみに、ビーチコーミングは、ビーチ(Beach)とコーミング(combing)の造語です。コーミング(comb+ing)は、髪の毛などを『すく』意味から来ています。諸説ありますが、浜辺を練り歩き、クシで髪の毛をすくように注意深く探す様子からつけられたという話もあります」
ビーチコーミングで必要な持ち物は?
では、ビーチコーミングに必要な持ち物はなんでしょうか?
「夏は熱中症と脱水症には注意が必要なので、帽子や汗拭きタオル、飲み物は必須です。塩分を摂取できる食べ物があるとより安心です。また、日焼けや海風対策として、長そで、長ズボンがおすすめです」
「漂着物で足や手を切ってしまう可能性があるので、ビーチサンダルではなく、マリンシューズや長靴が必要です。同様に手を切らないために手袋もあるといいですね。あとは濡れてもいいように、着替えなども用意しておくと安心です」
「そのほか、漂着物を観察する際に、便利なカメラやノートなどがあるといいと思います。拾ったものを入れるための袋も用意しておきましょう」
ビーチコーミングをするときの持ち物
帽子、タオル、飲み物、塩分のある食べ物、長そで、長ズボン、マリンシューズ(長靴でも可)、着替え、カメラ、ノート、袋や入れ物(拾ったものを入れておくため)
浜辺に漂着してくるものってどんなもの?

実際に海辺にはどのような漂着物がありますか?
「ふなばし三番瀬の浜辺では、貝はもちろん、海の生き物の化石やカニ、エビ、木の実、シーグラスなど、さまざまなものが漂着してきます。なかには、アカエイのトゲ、魚のエラぶたの骨、イカの甲、鳥のクチバシの骨などもあります。また、ペットボトルや使い捨てライターなどの日用品も多いですね」
漂流物としてゴミも多い気もしますが、実際はどうでしょうか?
「ここの海浜公園はきちんと管理・清掃している浜辺なので、それほど数は多くないものの、マイクロプラスチック(※)なども漂着しています」
※マイクロプラスチックはサイズが5mm以下のプラスチック
「また、漁具によって知らないうちに魚に危害を加えてしまうことを『ゴーストフィッシング』といいますが、そういった漁網や針、糸、ルアーなどが流れてくる場合もあります」
「ほかには、ペットボトルやふたのほか、使い捨てライター、ペグなども過去にありました。残念なことに、夏場はロケット花火の先端部分(飛ぶ部分)のプラスチック片も数多く漂着します。個人的には、海でのロケット花火の使用は控えてほしいですね」

「プラスチックは生活に欠かせない便利さがある一方で、海洋を含めたゴミ問題にもなりえます。一人ひとりの心がけでゴミを減らすことを意識することが大事ですよね」
ビーチコーミングの注意点は?

熱中症などの暑さ対策のほかに、注意点はありますか?
「ガラスや貝の破片、釣り針などでけがをしないよう気をつけることが大事です。それ以外にも、悪天候や雷の場合は必ず中止するようにしてください。また、気が付かないうちに満潮になってしまって、海の中に取り残されないようにしてください」
実際に、「ふなばし三番瀬海浜公園」でビーチコーミングの楽しみ方を教えてもらいました。
ビーチコーミングの楽しみ方&学べるポイント

ざっと見渡すだけでもたくさんの漂着物がありますが、楽しむポイントはありますか?
「基本的に自分の好きなものや、興味があるものを探して拾うのが楽しいと思います。また、貝やカニだけでもいろんな種類があるので、違いを見つける楽しみもあります」
「ここはホンビノス貝が採れますが、場所が変われば、生き物も変わるので、その土地ならではの海の生き物を見たり、知ったりできるのもいいですよね」
拾った物を調べる方法はありますか?

「貝は非常に多く見つかります。貝の一部だけ見るとどの種類がわからなくても、原型をとどめている貝と比較するとヒントが得られることもあります。巻き貝なら芯の部分、二枚貝なら付け根の部分が残りやすいですよ。また、ハンドブックサイズの図鑑を持って、生き物や種類を判別したりするのもいいですね。五感を使って発見ができるのもビーチコーミングの魅力です」

「また、一言でカニといっても種類によっていろいろな違いがあって、細かい毛が生えているなどの特徴から種類を判別できます。ほかの種類と比較したり、図鑑で調べたりすると面白いですよ」
「じっくり観察すると、表面に数ミリの穴が空いている貝や光沢のある貝、花のような形状をした漂着物など、不思議なものにたくさん出合えるのも魅力です」
見つけやすい場所などはありますか?
「漂着物は、満潮時に波が来ていた『高潮線』あたりにたくさんあります。とはいえ、同じ浜辺でも少し場所を変えるだけで、違った漂着物が見つかることもありますし、貝ひとつとっても完全に形が残ったもの、破片などさまざまな形があるので、いろいろな種類を探してお気に入りを見つけてください」

「狭い範囲をじっくり観察して探したり、広範囲を歩きながら探したり、エリアによって漂着物の違いを見つけたりもできます。細かく砕かれた貝がたくさんあるエリアや、比較的形が残っている貝が多いエリアなど、歩きながらポイントを探るのがいいですね」

「ヤドカリやカニなど生きている干潟の生き物に出会えるのも魅力で、子供も大人も楽しめます」

この日は、夢中になってビーチコーミングした結果、気がつけば2時間以上も集中していました。拾ったものは、二枚貝、巻き貝、カニ、魚の骨やイカの甲、貝の卵などたくさん! ただ、30分でも相当数の漂着物が拾えるはずです。さまざまな漂着物を探して見つける感覚は、子供はもちろん大人も夢中になって楽しめます。暑さ対策をしっかりして親子で自然の宝探しを楽しんでください。
「ふなばし三番瀬海浜公園・ふなばし三番瀬環境学習館」のワークショップで創作した漂着物の作品例

※海水浴を楽しむ際は、安全に直結する「ライフジャケット」の着用を心がけましょう。正しい知識を親子で一緒に学び、楽しく安全な海水浴を楽しみましょう。