赤ちゃんに母乳をあげる授乳中は、どんな食事をとればいいのか悩むママが多いですよね。栄養豊富な母乳を飲ませるために、食事を気にするのは自然なことです。
そこで今回は、子育て両立・共育支援事業を行う「エスキッチン」で食育サポーターとして活躍する管理栄養士の淵江公美子(ふちえ・くみこ)さんに、母乳が出やすくなる食事や、注意すべき食材など、授乳中の食事について話を聞きました。
授乳中に気をつけたい食事のポイント

授乳期の食事を気にするママは多いですが、口にする食べ物は一体どれくらい母乳に影響するのでしょうか?
「母乳はママの血液から作られるので、血液の量を増やしたり質を高めたりすることが大切です。その血液は普段の食事から作られるわけですから、授乳期の食事はとても重要です」
では、どんなことに気をつければよいのでしょうか?
「意識したいポイントは2つです」
ごはんなどの主食を抜かずに食べる
「授乳中は赤ちゃんの栄養源となる母乳を作るため、多くのエネルギーが必要です。産後ダイエットでごはんを抜いてしまうママがたまにいますが、主食を極端に減らしてしまうと赤ちゃんに必要な栄養が豊富な母乳を作ることができません。母乳の出が悪くなってしまうこともあるので、主食は必ず食べるようにしてください」
具体的にどれくらいの量を食べればよいのでしょうか?
「母乳を作るのに必要なエネルギーを考慮すると、授乳期の1日に必要な摂取エネルギーは、非妊娠時(1650kcal/日)の+350kcal(おにぎり2個程度)となっています(18〜29歳、身体活動レベルI<低い>女性の場合。2015年版食事摂取基準より)」
水分をしっかりとる
「母乳の9割近くは水分です。授乳中は母乳に水分が奪われるので、喉が乾きます。母乳の出を良くするためにも水分補給はしっかりと行いましょう。糖分の入っていない水やお茶が特におすすめです」
具体的な量など目安はありますか?
「人が1日に必要な水分量は1.5〜2Lと言われていますが、授乳中は母乳でも水分が使われるので、それ以上の水分量が必要です。飲料で飲みきれない場合は、スープや汁気の多い料理など、食事から水分補給するのも良いでしょう」
授乳中におすすめの食材は?

母乳の出を良くしたり、栄養価を高めたりするためにおすすめの食材を教えてください。
「良い母乳を作るためには、良質なたんぱく質の摂取が不可欠です。たんぱく質は赤ちゃんの身体の基礎を作るだけでなく、お母さんの身体にも必要な栄養素です。授乳期の1日に必要なたんぱく質は、非妊娠時(50g/日)の+20gです」
たんぱく質を多く含む食材には、どのようなものがありますか?
「肉や魚、大豆製品(豆腐・納豆など)、卵、乳製品などが挙げられます。とくに脂質の少ない白身魚や豆腐などの豆類、鶏ささみなどがおすすめです。これらの食材を組み合わせて、毎食必ずたんぱく質を摂取できるようにしましょう」
そのほかに必要な栄養素はどんなものでしょうか。
「母乳を作る血液の源になる鉄分や、血液の源である赤血球を作るのに役立つ葉酸やビタミンB12も授乳中に意識して取り入れたい栄養素です。葉酸は、産前に摂取を意識する人が多いですが、授乳中にも必要な栄養素なので産後も引き続き摂取するようにしてください」
「授乳期の1日に必要な鉄分量は、非妊娠時(6.0mg)と比べて+2.5mg、葉酸は非妊娠時(240ug)と比べて+100ug、ビタミンB12は非妊娠時(2.4ug)と比べて+0.8ugです」
それぞれの栄養素を多く含む食材を教えてください。

「鉄分を多く含むのは、牛赤身肉やレバー、あさりの水煮缶などです。葉酸は、ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなどに多く含まれます。また、ビタミンB12を多く含む食材には、アサリやカツオなどが挙げられます」
「また、じゃがいもやいちご、レモンなどに多く含まれているビタミンCには、鉄分の吸収を促す作用があります。ぜひ鉄分と一緒に摂取してください」
母乳を出やすくするためには、バランスの良い食事が大切だとわかりました。
「和食を中心にしたメニューにすると、バランスが取りやすいのでおすすめです。丼ぶりやカレーライスなどの単品料理よりも、主食、主菜、副菜、汁物の揃った定食スタイルにすると良いですよ」
授乳期に控えたい食材は?

反対に、授乳中に摂取を控えるべき食材はありますか?
「脂質の摂りすぎには注意が必要です。脂質の量が多いと、赤ちゃんが飲む母乳中の脂質量も増えます。また脂質の多い食事は、乳腺が詰まりやすいとも言われており、乳腺炎の原因になってしまうこともあります」
「エビフライや唐揚げなどの揚げ物、マヨネーズ、生クリーム、バター、スナック菓子などには脂質が多く含まれるので、食べ過ぎには注意してください」
刺激物や辛いものは授乳中に摂取して良いのでしょうか。
「授乳中に刺激物を大量に摂取すると、母乳の味に影響が出る可能性があります。食べてはいけないものではないですが、スパイシーな本格カレーや唐辛子や豆板醤などを多く使ったメニューは控えたほうが望ましいですね」
カフェインを含む飲料は母乳に影響するのでしょうか。
「授乳中にカフェインを摂取すると、母乳中のカフェイン濃度も上がります。眠気覚ましなどの効能があると言われるカフェインですが、代謝機能が未熟な赤ちゃんにとっては強い影響を及ぼす可能性もあるので、授乳中はカフェイン入り飲料を控えましょう」
「具体的には、コーヒーや緑茶、紅茶がカフェインを含む飲料です。反対にカフェインを含まない飲料は、水や麦茶、ほうじ茶など。どうしてもカフェイン入りの飲料を飲みたい場合には、授乳後に、1日2杯程度までに留めるようにしましょう」
では、アルコールの摂取についてはいかがでしょうか。
「アルコールもカフェインと同様に母乳から出てくるので、授乳中の飲酒は厳禁です。最近では、ノンアルコールビールのほかに、ワインやカクテルなどもノンアルコールで販売されているので、それらの飲料でお酒の雰囲気を楽しむのも良いと思います」
授乳中はバランスの良い食事とたっぷりの水分補給を意識した母乳育児を心がけたいですね。ぜひ参考にしてください。