プロ登山家といえば、身体的な能力だけでなく、判断力、集中力など、様々な精神的な能力をも駆使して頂上に挑む非常に過酷な職業です。彼らが、どんなきっかけで登山と出会い、どのようにして夢中になっていったのでしょうか。『子どもが夢中になれる事の見つけ方』をプロ登山家の竹内洋岳さん聞きました。
今回のインタビューの冒頭で「僕は今まで好きなことしかやってこなかった」と語ってくれた竹内さん。とはいえ、「好きなこと」「人生をかけて挑戦したいと思えること」を探すことって難しいですよね。竹内さんの山との最初の出会いは、おじいさんとのスキー旅行だったそうです。
「走るとか泳ぐとか球技などは苦手だったんですが、スキーはなぜか楽しかったんですよね。」
おじいさんが竹内さんをスキーに連れて行った理由について、孫を健康にしたいからというよりも、「ただ自分がスキーをやっていて楽しかったから孫を連れて行ったというのが大きいと思います。」と当時を振り返ります。その時の楽しい体験が、登山家への最初のステップになったのでしょう。
その後、小学校中学年の時に、またもおじいさんに勧められて参加した野外学校で、キャンプや山歩きの楽しさを経験。そして、高校の時に、たまたま登山部に入ったことで、登山家への第1歩を踏み出します。
「例えば、子どもを自然に触れさせたいと、キャンプや登山に連れて行ったとします。でも、親が自然に全然興味が無くて、その場を楽しんでいなかったら、子どもも楽しむことはできないと思うんです。『子どものためになるから』という理由だけで、どこかに連れて行ったり、体験させたりしても、子どもはそれをあまり好きになれないんじゃないかな、と思いますね。」
竹内さん自身、幼い頃大人から「身体にいいから」とか「将来役に立つから」といった理由で勧められたことには、まったく興味が湧かなかったと、自身の著書の中でも語っています。子どもが好きなことを見つけるための第一歩は、まずは親が、自分が好きなことをやって楽しんでいる姿を見せるということなんですね。
「だからといって、好奇心をどう育てたらいいのかは、僕もよくわかりません。でも、好奇心というものは、本来どんな子どもも持っていると僕は考えています。」
好奇心をどう育てるかは、子どもの性格によっても違います。ただし、好奇心に限らずどんな能力でも、人間はその力が必要とされる環境に身を置けば、自然と発揮できるようになると竹内さんは考えているとか。
「エベレストのような標高の高い山に登る場合は、ベースキャンプから、少しずつ標高を上げ、またベースキャンプに戻ってというのを繰り返します。少しずつその環境に慣れることによって、地上で暮らしていたのでは発揮されない、酸素が薄くても生き延びる力が発揮されるのです。」
そう考えると、好奇心も、いつもと違う場所、例えば自由に動き回れる大自然の中で遊ばせるような経験を積むことによって、発揮されるようになるかもしれません。
また、好奇心をあまり発揮しない子どもでも、好奇心を自由に発揮できる場を経験することによって、再び好奇心が芽生えてくると竹内さん。
「ただ、好奇心が強すぎて、静かにしなければならない場所でも、落着きなく歩き回ったりするのは、現実的に考えて、親としては困ることでもあります。バランスが難しいですよね(笑)」
幼い子どもにどんな体験をさせたらいいのだろうと、親は悩むものですが、まずは、そんなに難しく考えずに、親が楽しいと思える場所へ連れて行くことから始めればいいんですね。様々な環境の中で親子で一緒に楽しく過ごした体験は、きっと子どもの心に深く刻まれ、自分の「好きなこと」を見つけるきっかけになるのではないでしょうか。
参考書籍
『標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学 (NHK出版新書 407)』『頂きへ、そしてその先へ』
親が楽しむ姿から、子どもは「好きなこと」を見つける
地球上には、エベレストをはじめ、8000メートルを超える山が14座あります。2012年に、日本人で初めて14座すべてに登頂したのがプロ登山家の竹内洋岳さん。今回のインタビューの冒頭で「僕は今まで好きなことしかやってこなかった」と語ってくれた竹内さん。とはいえ、「好きなこと」「人生をかけて挑戦したいと思えること」を探すことって難しいですよね。竹内さんの山との最初の出会いは、おじいさんとのスキー旅行だったそうです。
スキー好きの祖父の影響で自然の中へ
乳幼児の頃は身体が弱く、ほとんど幼稚園にも通えなかったという竹内さんですが、3歳くらいから、スキー好きだった祖父に連れられて毎年雪山に通うようになったと言います。「走るとか泳ぐとか球技などは苦手だったんですが、スキーはなぜか楽しかったんですよね。」
おじいさんが竹内さんをスキーに連れて行った理由について、孫を健康にしたいからというよりも、「ただ自分がスキーをやっていて楽しかったから孫を連れて行ったというのが大きいと思います。」と当時を振り返ります。その時の楽しい体験が、登山家への最初のステップになったのでしょう。
その後、小学校中学年の時に、またもおじいさんに勧められて参加した野外学校で、キャンプや山歩きの楽しさを経験。そして、高校の時に、たまたま登山部に入ったことで、登山家への第1歩を踏み出します。
「子どものためになるから」では、子どもは興味を持たない
竹内さんが、おじいさんと楽しくスキーをしたことで、雪山に行くことが好きになったように、親が楽しんでいる姿を見せなければ、子どもも楽しむことはできないと、竹内さんは語ります。「例えば、子どもを自然に触れさせたいと、キャンプや登山に連れて行ったとします。でも、親が自然に全然興味が無くて、その場を楽しんでいなかったら、子どもも楽しむことはできないと思うんです。『子どものためになるから』という理由だけで、どこかに連れて行ったり、体験させたりしても、子どもはそれをあまり好きになれないんじゃないかな、と思いますね。」
竹内さん自身、幼い頃大人から「身体にいいから」とか「将来役に立つから」といった理由で勧められたことには、まったく興味が湧かなかったと、自身の著書の中でも語っています。子どもが好きなことを見つけるための第一歩は、まずは親が、自分が好きなことをやって楽しんでいる姿を見せるということなんですね。
好奇心や想像力は、誰でも発揮できる可能性がある
さらに、好きなことを見つけるためにはやはり、好奇心が大切なのではないかと竹内さんは語ります。「だからといって、好奇心をどう育てたらいいのかは、僕もよくわかりません。でも、好奇心というものは、本来どんな子どもも持っていると僕は考えています。」
好奇心をどう育てるかは、子どもの性格によっても違います。ただし、好奇心に限らずどんな能力でも、人間はその力が必要とされる環境に身を置けば、自然と発揮できるようになると竹内さんは考えているとか。
「エベレストのような標高の高い山に登る場合は、ベースキャンプから、少しずつ標高を上げ、またベースキャンプに戻ってというのを繰り返します。少しずつその環境に慣れることによって、地上で暮らしていたのでは発揮されない、酸素が薄くても生き延びる力が発揮されるのです。」
そう考えると、好奇心も、いつもと違う場所、例えば自由に動き回れる大自然の中で遊ばせるような経験を積むことによって、発揮されるようになるかもしれません。
また、好奇心をあまり発揮しない子どもでも、好奇心を自由に発揮できる場を経験することによって、再び好奇心が芽生えてくると竹内さん。
「ただ、好奇心が強すぎて、静かにしなければならない場所でも、落着きなく歩き回ったりするのは、現実的に考えて、親としては困ることでもあります。バランスが難しいですよね(笑)」
幼い子どもにどんな体験をさせたらいいのだろうと、親は悩むものですが、まずは、そんなに難しく考えずに、親が楽しいと思える場所へ連れて行くことから始めればいいんですね。様々な環境の中で親子で一緒に楽しく過ごした体験は、きっと子どもの心に深く刻まれ、自分の「好きなこと」を見つけるきっかけになるのではないでしょうか。
参考書籍
『標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学 (NHK出版新書 407)』『頂きへ、そしてその先へ』