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子どもの夢応援企画 第15回:新幹線運転士 渡辺龍太郎さん

掲載日: 2016年11月24日更新日: 2016年11月24日石橋 夏江

子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、子どもたちの夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。今回は子どもはもちろん、大人もワクワクする乗り物、新幹線を動かす「新幹線運転士」です。のぞみ、ひかり、こだまでおなじみの東海道新幹線を運転する、JR東海・渡辺龍太郎さんにお話を伺いました。

電車の中でも特別!新幹線の速さとカッコよさの虜に

「やっぱり、シンプルに速くてカッコいいですよね」と新幹線の魅力を語ってくれた渡辺さん。子どもの頃から電車が好きで、なかでも新幹線は特に憧れの乗り物だったと言います。

「子どもの頃に、当時住んでいた兵庫県の姫路から祖母の家がある神奈川県の厚木まで新幹線で帰省する機会があったんです。子どもにとって新幹線は夢の乗り物で、毎回ドキドキワクワクしたのを、今でもよく覚えています。」

「その後、神奈川に引っ越して、中学の修学旅行で京都に行きました。当時、周りには新幹線に初めて乗るという子も多くて。ホームで『新幹線が来た!』とはしゃいでいる同級生たちの様子がとても印象的でした。こんな風に多くの人を笑顔にしたり、楽しい気分にさせられる仕事ってすごいなと。その頃はまさか自分がなれるとは思っていませんでしたが、なってみたいなという憧れはあの時からずっとありましたね。」


知識ゼロからのスタート。運転士を目指して経験&勉強

そんな渡辺さんは高校卒業後にJR東海に入社。新幹線の運転士にもなれる運輸系統という区分で採用されたことで、夢への第一歩を踏み出しました。

よく『電車の運転士になるには専門の学校を出ないとダメなんでしょ?』と聞かれるんですが、そんなことはありません。私自身、普通の高校を卒業して、専門的な知識が何もないままに入社しましたから。電車に関する知識は入ってからの研修でしっかり教えてもらえます。もちろん、覚えることがたくさんあって大変でしたが、運転士になりたいという強い思いがあったので頑張れました。」

駅係員としての勤務→車掌に。研修・見習いの後、運転士に!

研修を終えた渡辺さんが最初に勤務したのは小田原駅。駅係員として約2年半、改札業務や窓口業務を行なったそうです。その後、車掌と車掌長をあわせて約6年務め、そこからようやく念願の運転士になるための第一歩を踏み出します。

新幹線の運転士になるためには、まず研修センターで約4カ月間、様々なことを勉強します。正直、勉強はあまり得意ではなかったので苦労しましたが、一緒に入った仲間と『みんなで運転士になろう』という強い気持ちで支え合い、乗り越えることができました。」

「学科講習での試験に合格すると、運転士見習いとして、指導してくれる先輩と一緒に新幹線を運転することになります。はじめて新幹線に乗ったときはとても緊張したのを、今でも鮮明に覚えています。」

約6カ月の見習い期間で運転の技術を磨き、最後に新幹線運転士になるために必要な国家資格の試験に合格して、晴れて新幹線運転士になったのでした。


安全、正確、快適に新幹線を走らせることが使命

新幹線運転士の勤務は変則的で、乗務する列車や出勤・退社する時間はその時によって変わるのだそうです。

「1回の勤務は基本的に2日で1セット。泊まりでの勤務が基本で、夜はしっかり眠って、翌日に向けて体調を整えます。早起きも必要ですし、時間に遅れるようなことがあってはいけないので、時間管理がしっかりできることが求められる仕事だと思います。」

「業務内容は、お客様を乗せた列車だけでなく、回送列車を運転することもありますし、車掌として仕事を行う日もあります。また列車を走らせる前の点検も安全に運行するために欠かせない、重要な仕事です。」

トラブルに冷静に対処する対応能力とチームワークも重要

また、台風や地震など、もしもの時に備えて訓練しておくことも大事な仕事のひとつ

月に1回〜2回は様々な異常時に対応するための訓練を行っています。例えば、災害で列車が長時間止ってしまった時のお客様への案内や救護の仕方といった内容です。また年に1度は大規模な災害を想定した大がかりな訓練も行いますし、プラレールを使って線路上を走る複数の列車の動きを俯瞰するような訓練もあります。大きなトラブルはめったに起こることではありませんが、いざというときに落ち着いた対応ができるように、こうやって日頃から備えておくことが大切なんです。」

運転士は一人で仕事をしている印象が強いかもしれませんが、実はチームワークも重要。トラブルが発生した時は、車掌や指令所、駅などと連携を取りながら対処しなければいけません。私も実際に、台風接近中に指令所からの指示で、列車を緊急停止させるようなことがありました。その時は私から車掌に正確な情報を伝えることで、お客様に安心していただけるよう、しっかり案内ができたと思います。運転士としてどんなときも冷静に落ち着いて行動することを心がけています。」

日本を代表する乗り物の運転士を務める誇り

たくさんの人の命を背負った責任ある仕事ゆえ、大変な面もありますが、それ以上に新幹線の運転士はやりがいを感じられる仕事だと渡辺さん。

新幹線は日本を代表する乗り物。その運転士だということに私は誇りを感じています。毎日、同じルートで定刻通りに列車を走らせるというのは、一見、地味で単純な仕事のように見えるかもしれません。でも、毎日同じことをしっかり確実にやることこそが、運転士の仕事の一番大事なことだと思っています。」

運転中は常に定刻通りに列車を走らせるための速度計算を行っているとのこと。残りの距離はもちろん、線路のカーブや勾配なども全て頭に入っていて、それも考慮した上で速度調整を行っているそう。そんな運転士さんの努力があるからこそ、新幹線はみんなに信頼される乗り物なんですね。

「新幹線にはビジネスの方、旅行の方などたくさんの方が乗っています。その中には人生で初めて新幹線に乗るという方もいると思うんです。単なる移動手段ではなく、その人の思い出に残る素敵な時間になるように。常にそういったことを意識して、みなさんを安全で快適に目的地までお届けしたいと思っています。」


子どもたちの素朴な疑問に渡辺さんがお答え!

ここで渡辺さんに、子どもたちから寄せられた3つの質問にも答えてもらいました。

1日に何回くらい往復していますか?

平均的には2日で東京−新大阪間を2往復します。走る距離は2日間で2000kmくらいになります。走るルート上の途中の駅はもちろん、カーブや勾配がきつい所などもみんな見習いの時に苦労しながら覚えるんですよ。」

電車の運転にも免許はあるんですか?

「はい、新幹線を運転するための免許があります。国家資格でそれに合格しないと運転士にはなれません。運転に関する知識はもちろん、新幹線の車両構造や運転に関する法規など11科目の勉強が必修です。勉強は大変ですが、目標に向かってコツコツ努力すればきっと合格できると思います。」

小さい頃から電車が好きでしたか?

電車全般が好きでしたが、特に新幹線は好きでした。当時はまだ0系も走っていていたんですが、あのデザインもすごくカッコよかったですね。電車の本はすごく読んでいた記憶があります。あとは、プラレールを買ってもらって遊んでいました。」


まずは実際に新幹線を見に来て、カッコよさを体感して!

最後に、渡辺さんから新幹線運転士を目指す子どもたちにメッセージをいただきました!

「電車に乗る機会はあっても、なかなか新幹線に乗る機会は少ないと思います。乗ることは難しくても、入場券さえ買えば新幹線のホームに入って、新幹線を間近で眺めたり写真を撮れるので、ぜひ気軽に見に来て欲しいですね。テレビや本で見るよりも、実際に見る新幹線はすごくカッコいいですよ!」

「あと、新幹線の運転士になるためには、目標に向かってコツコツ頑張れる、決められたルールをいつもきちんと守ることができる、しっかり時間の管理ができることが大事だと思いますので、今から身に付けておけるといいですね。」

さらに、今後の渡辺さんの夢については…。

「これからは特に自分の持っているものをできるだけ後輩に伝えて、若手を育てていきたいと思います。そして、できれば2027年に開業するリニア中央新幹線にも関われたらうれしいと思います。今の子どもたちが大人になる頃には、もっと身近な乗り物になっていると思うので、新幹線だけでなく、リニアに関わる仕事もできるようになっていると思いますよ。ぜひ興味があれば目指してみてくださいね。」

渡辺さん、貴重なお話をありがとうございました。『子どもの夢応援企画』第16回は「スノーボーダー」です。お楽しみに!

取材強力:東海旅客鉄道株式会社(JR東海)

東京〜名古屋〜大阪の新幹線輸送(東海道新幹線)と名古屋、静岡を中心とした東海地域の在来線輸送を担う。2014年には東海道新幹線開業50周年を迎えた。現在は、新幹線の運転士だけでも約700人が在籍し、1日平均358本を運行している。また、親子での旅行や帰省に便利なお子様連れ専用車両「ファミリー列車」を運行したり、夏休みを中心に車両工場見学や車掌体験を実施するなど、電車に親しみながら家族で楽しめるイベントを数多く開催している。

お子様連れ専用車両「ファミリー車両」の詳細はこちら

お話を聞いたのは…

  • JR東海・渡辺龍太郎さん

    2002年にJR東海に入社。駅係員、車掌などを経て、「新幹線電気車」の免許を取得し、新幹線の運転士に。現在は、指導操縦者として後進の指導も担当している。趣味は電車と同様に子どもの頃から好きだったマラソン。休日は走りに出かけることで、気分転換と体力維持になり、程よい疲れでしっかり睡眠が取れるなど、体調や睡眠管理にも役立っている。

  • 「東海旅客鉄道株式会社(JR東海)」公式ページ

ライター紹介

石橋 夏江

編集プロダクションverb所属。編集者・ライター。趣味は、旅行と写真とスキューバダイビング。プライベート旅でも、取材旅以上の分刻みスケジュールを組むため、友達がなかなか一緒に旅行に行ってくれないのが最近の悩み…。

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