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子どもの鉄道好きは知育に効果あり…!? 

2015年9月25日青柳直子
子どもの鉄道好きは昔から知られていることですが、最近の鉄道ブームでは「子鉄」と呼ばれるようになり、「このままでは将来、鉄道オタクになるのではないか」と一抹の不安を抱えているパパ、ママもいるのでは?しかし心配ご無用、子どもの鉄道好きはこんなにも知育に効果的なんです!

子どもが鉄道好きになるきっかけは?

子どもの遊びのジャンルの中で、鉄道ほど豊かな広がりを持つ世界は、なかなかほかにはありません」と言うのは、大阪総合保育大学大学院専任講師で、『子どもはなぜ鉄道が好きなのか〜鉄道好きの教育<鉄>学〜』の著者・弘田陽介さん。

大人の鉄道好きが、撮り鉄(鉄道写真を撮る)、録り鉄(鉄道の音や動画を撮る)、乗り鉄(実際に乗る)、車両鉄(車両のデザインなどを研究する)、模型鉄(鉄道模型を作る)とその楽しみ方で多種多様に分類されるように、 鉄道が持つこの「豊かな広がり」こそが、子どもの発達に応じた「鉄道遊び」を可能にしているのだそう。

「電車には鉄道会社や路線ごとに実にさまざまなデザインがあり、またそれらを再現したおもちゃや絵本もたくさんあります。 多くの鉄道好きの子どもは、食の好みのような生まれもっての好き嫌いではなく、まずはこれらのおもちゃや絵本を通して電車好きになったのではないかと考えます」と弘田さん。

「発達心理学の知見によると、幼児は7カ月をすぎた頃から外部の出来事を親と共有することができるようになります。これは『共同注意』といって、他者(親)と同じ物を見る、他者(親)が興味を持っているものを一緒に見ることができる、というとても大事な能力です。この能力は、共感という他者との関わりの一番の基礎を支えています。」

「つまりその時期の子どもにとって、自分で手にとって親と一緒に動かして遊ぶことができる電車のおもちゃはちょうどいいんです。さらに、おもちゃと実際の電車が大きさは違うけれど同じものだと分かってくると、子供の鉄道熱も俄然、高まってくるようです。逆に実際の電車から入った子どもも、後におもちゃと出会うことで『好き』の相乗効果が生まれます。」

こうして、 電車好きの入り口に立った子どもは、発達に応じた「鉄道遊び」をすることで、どんどん電車にハマっていくのだとか。それでは次に年齢ごとの遊び方と、遊びを通して得られる能力についてみていきましょう。

子どもの鉄道好きを通して得られる能力とは?

2歳ごろまでは鉄道と一体化する遊びを楽しみ運動欲求を満たす

母親との一体感が強い2歳ごろまでの子どもは、鉄道遊びにおいても、自分と電車、または電車のおもちゃとの一体感を楽しむような遊び方をします。具体的には大きな電車がやってくる様子を見て、『怖い』と『ワクワク』が入り混じった感覚になったり、電車に乗って『ガタンゴトン』というリズムを感じたり、自分がおもちゃと一体化してレールの上を走ったり。」

「電車の音を表した絵本といえば、安西水丸さんの『がたんごとんがたんごとん』が有名ですが、 お子さんをひざの上に乗せてこのような絵本を読んであげるとよいですね。そして、実際に電車に乗った時も、同じようにひざの上に乗せて『がたんごとん』と言ってあげると、子どもの中でいろんな『電車体験』がつながっていくと思いますよ。」

このような遊びを通して子どもは、夢にまで見るほどの「生(なま)の体験」をすることができ、また運動欲求を満たすことができるのだそう。

2歳から3歳にかけては鉄道の名前や形状を覚え、認識力を高める

「言葉を習得しつつある段階にある子どもは、(おもちゃの)カタログとおもちゃ、おもちゃと実物を同じ『でんしゃ』と認識することを契機に、 多種多様な電車のデザインや細部の違いを見分け、またその名前も覚えるようになります。こうやって区分し、秩序づけることで、初等教育の基礎になる認識力を養うことができます。」

このような認識力を養う遊びの延長として、電車の名前や駅名などからひらがなや漢字を覚えたり、算数の勉強をしたり、脳トレしたりできる各種ドリルなども発売されているそうです。子どもの興味に応じて、このような教材を使うのもよいですね。

3歳から4歳にかけてのコレクション欲が、学問の土台を作る

電車の場合、車両の名前やデザイン、それに呼応するおもちゃ、さらには路線や駅名、時刻表など、「覚えたり集めたりしたくなるモノ」のがたくさんあります。実際、電車のおもちゃを全部集めたり、パッと見ただけで電車の名前が言えたり、駅名をそらんじたりできる子鉄くんたちもたくさんいますが、これらは「所有原理」(斎藤環著『関係する女、所有する男』より)に基づくものなのだそう。

所有原理とは、興味の対象物を持ちたいと願うだけでなく、対象を視覚化、言語化、概念化し、それらを意のままに操作しようとすること。これは子鉄くんたちの『コレクション欲』の定義そのものです。このような所有原理にかかわる心の働きは自我の形成にもつながります。」

さらにこの所有原理は学問の土台にもなるのだとか。

「算数に足し算、引き算、掛け算、割り算があるように、学問は学ぶべきものを順番に網羅していくことで、全体像を築いていきます。 鉄道を通して頭の中にコレクションの棚を作り、棚に入れる物を次々と増やし、秩序づけて整理していく能力を磨いた子どもは、勉強でも大いにその力を発揮します。」

このように自我を形成し、学問の土台をも作ることができる「所有原理」を満たすのに、裾野が広く奥が深い鉄道の世界はもってこいのようです。

鉄道好きの子どもの能力を伸ばすための親のサポート

「鉄道に限ったことではありませんが、 子どもが興味を持ったり発見したものに対して、親は一緒になって話をし、確認し、認めてあげることが大切です。例えば、子どもが電車を見て『でんしゃー!』と言ったなら、親は『そうだね』と言うのだけでなく、『あれはサンダーバードだね』とか『特急は速いね』など、きちんと応えてあげてください。子どもの認識力は大人が認めることで、どんどん発達していきます。」

さらに親が積極的に関わるには、もうひとつ重要な理由があると言います。

「鉄道遊びは4歳ぐらいまでのひとり遊びの時期に適した遊びで、それ以降は友達と共有する遊び、例えばヒーローごっこなどに移行していくのが普通です。しかし鉄道遊びにばかり熱中しているとコミュニケーション能力に欠けてしまうことも。そういった意味でも、 親が一緒になって話をしながら楽しむことは重要だと思います。」

鉄道遊びに代わる遊び、特に女の子の場合は?

「鉄道遊びのよいところは、おもちゃの種類が多く、現実に対応するものがあり、広い世界観があるところ。さらに実際に体験することもできる。最初に言ったように代わりになるものはなかなかないのですが、全体を意識しながら頭の中に知識をコレクションし、反芻することができる世界、という意味では、 『妖怪ウォッチ』や『ポケットモンスター』などキャラクターがたくさん出てきて、それを覚えることで壮大な世界観を理解できるようなアニメでもよいと思います。」

大人から見ると実際的に役に立つ知識ではなくても、それらを 覚えて整理し、その知識を組み立てなおす能力は9〜10歳以上の学力にかかわってくるそう。そういう能力を伸ばす教育のことを、教育学では『形式陶冶(けいしきとうや)』と言い、鉄道やこれらのアニメは、子どもの形式陶冶にもってこいなんだそうです。

「近年、学力の『9(10)歳の壁』ということがよく問題にされます。つまり『自分で考える力』があるかどうかがこの壁を越える力なんですが、 幼少期に自分の好きな趣味の世界にのめり込んで、そこから汎用性のある知識の整理力を養うことで、考える力の芽は開発されます。」

ところで、鉄道好きは男子に多いですが、女子が興味を持って、知識を整理していくような遊びはないのでしょうか。

「所有原理が強いいわゆる『モノ好き』は男の子のほうが多く、女の子は人間関係に対する興味が強いと一般的に言われています。鉄道好きに男の子が多いのは、このためだと思われます。 関係性に興味が強い女の子が、頭の中で知識を耕す遊びとして、シリーズ化された絵本はどうでしょうか。」

「例えば『バムとケロ』シリーズは、ある話では主人公だったキャラクターが、ほかの話ではお人形として出てきたり。細部を発見し、コレクションする喜びが味わえると思いますよ。」

弘田さんいわく、鉄道に限らず、広がりのある遊びの世界を通して、子どもはいろんな頭の使い方を習得していくのだそうです。

「子どもが電車好きすぎて…」なんて困った顔をせず、親子でどっぷり鉄道の世界にはまりながら「楽しく知育」を始めましょう!

※参考書籍


電車・鉄道・プラレール・SL特集

お話を聞いたのは…

  • 弘田陽介(ひろたようすけ)さん

    大阪総合保育大学大学院/大阪城南女子短期大学・専任講師。1974年大阪生まれ。3人の男の子の父。教育学博士。専門はドイツ教育思想、実践的身体教育論、子どもと保育のメディア論。著書に『近代の擬態/擬態の近代』(東京大学出版会)、『子どもはなぜでんしゃが好きなのか』(冬弓舎)など。

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ライター紹介

青柳直子

ライター暦16年。神戸生まれ・育ち・在住のアラフォー世代。芸能・インタビュー、舞台・コンサートレポをメインに、子育て関連、街取材まで“守備範囲を広く”がモットー。小学1年生の長男、1歳の長女、ヨーゼフ(ハイジの犬)似の夫+猫2匹と、毎日てんやわんやな暮らしぶり。娘が歩けるようになったのを機に、家族キャンプ再デビューを計画中。

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