2017年1月から個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に公務員や専業主婦などを含む20歳〜60歳のほぼ全員が加入できるようになりました。とはいえ、馴染みもなく、どんなものなのかわからない人も多いはず。そこで、特徴や何がお得なのかを初心者にもわかりやすく、専門家の解説を交えて紹介していきます!
そもそも個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」って?

今回お話を聞いたのは、「NPO法人 確定拠出年金教育協会」の大江加代さん。そもそも「確定拠出年金」とはどのようなものなのでしょうか?
「国民年金や厚生年金のほかに、自分の老後の資金を貯えるための年金制度が確定拠出年金です。その中で個人が自分で入り、自分で運用するものを個人型確定拠出年金といい、その愛称をiDeCoと呼んでいます。ちなみに、企業が退職金制度のひとつとして準備する『企業型』もあります」
2016年までは、個人型確定拠出年金に加入できるのは、自営業や企業年金がない会社員などでしたが、2017年1月から対象者が大幅に拡充したことを受けて、制度の愛称が「iDeCo」に定められたそう。
確定拠出年金は増やした資産を60歳以降に受け取ることができるため、iDeCoは老後の資産形成にぴったりといえます。では、具体的にはどのように自分で入り、自分で運用するのでしょうか。
「銀行や証券会社、保険会社などの金融機関で口座を開設し、そこに毎月の掛金を積み立てて運用します。iDeCoの商品には、大きく分けると『預金』『保険(積立型年金保険など)』『投資信託』の3種類があり、自分に適した商品を選んで運用することになります」
掛金は月5000円を下限とし、以下の通りに上限が定められています。

「掛金が負担になったときは、年に一度だけ1,000円単位で金額を変更することができます。また、掛金の拠出自体を一時的に中止し、いつでも再開することができます」
自分に合った金額で始められる、それもiDeCoの大きな魅力といえそうです。
始めるメリットは? 実例でわかる控除額!
iDeCoは国をあげて推奨している制度。そのため、運用にはさまざまな税控除のメリットがあります。
「一つは、掛金に対する所得税と住民税の免除。もう一つは、通常なら金融商品の運用益にかけられる20%の課税の免除です。例えば、毎月2万3000円を掛金にした場合、1年で27万6000円が無税となるうえに、運用益はまるまる自分のものにできます」
より具体的にイメージできるよう、30歳で年収420万円の会社員が、上限の2万3000円の掛金を60歳まで拠出し続けた場合のモデルケースを算出していただきました。
1.掛金に対する税控除
「年収420万円、各種控除を引いた課税所得を約200万円とすると、住民税は一律で10%と決まっており、所得税は収入に応じますが、この場合はこちらも10%程度と考えられます。すると、年間で5万5200円、30年間で165万6000円の税金が戻ってくることになります」
所得税は収入が多いほど税率が高くなるため、高所得者ほど税控除額は大きくなります。
2.運用益に対する税控除
運用益は商品により異なりますが、ここでは投資信託(年利3%)と定期預金(年利0.01%)の場合のモデルケースで比較します。

投資信託を3%で運用すれば、掛金に対する税控除に加えて、30年間で130万円もの税控除が受けられます。
※年換算利回りはモデルケースとしての設定です。3%を確保できる保証はなく、運用次第で元本割れを起こすこともあります。
一方、定期預金の運用益で得られる税控除は微々たるものですが、元本は保証されます。「掛金に対する税控除=165万6000円」だけで十分と考えるなら、こちらを選択しましょう。
商品はどう選ぶ? 「預金」「保険」「投資信託」の特徴

iDeCoの商品には「預金」「保険」「投資信託」の3種類があり、自分に合った商品と掛金を選ぶことを紹介しました。では、どう選んだらいいのでしょうか。それぞれの特徴について聞いてみました。
預金・保険
「この2つは元本保証型の商品です。ただし、現在の金利は0.01%程度なので、資産を増やすというよりは、税控除を受けながら安心して資産形成を目指す人向けですね」
投資信託
「投資信託は、数多くの株式や債券などに分散投資する金融商品。積極的な利益を求める『アクティブ型』と、その市場全体と同じ値動きを目指す『インデックス型』があります。預金や保険より運用益は見込めますが、元本割れする可能性もあります」
元本保証で安定的に運用するのか、リスク込みで運用益を狙うのか。迷ったときは、3種類の商品をバランスよく取り入れることも可能です。
金融機関の選び方は手数料と運用商品次第!
iDeCoを始めるなら、金融機関選びからになります。とはいえ、商品やサービスの中身はさまざまです。何を基準に選べばいいのでしょうか?
「元本保証の預金や保険商品で運用するなら、初期手数料(口座開設手数料)と口座管理料を基準にしましょう。金融機関によって、初期手数料は2777円〜3857円、口座管理料は月に167円〜617円の幅があります。初期手数料は一度払えば終わりですが、口座管理料は30年間毎月払うものなので最大16万2,000円の違いがでます」
「投資信託で運用するなら、取り扱っている商品を調べた上で金融機関を選びましょう。初心者の方は、コストの安い『インデックス型』を扱っているところがおすすめです」
もう一つ、「コールセンターが夜や土日に対応しているか」も重要とのこと。平日の昼間に仕事で電話がかけられないなど、自分のライフスタイルと照らし合わせて選びましょう。
デメリットはないの? 注意点も紹介
メリットがたくさんあるiDeCoですが、注意しなければならない点もあります。これまでに説明した通り、掛金の積立も運用益も60歳まで受け取れないことです。
「iDeCoは、老後の資産形成のための制度です。結婚や子どもの教育費、住宅の購入などの資金は別に用意しましょう」
iDeCoのメリットは、税控除を受けながら自分の拠出可能な範囲で年金を積み立てられることです。60歳まで引き出せないことを「老後のために」と納得できるなら、実にお得な年金制度といえるでしょう。
60歳まで受け取れないからこそ老後にきちんと残る、その考え方を理解することが大切です。
加入資格や運用益の算出、金融機関のサービス内容や手数料、商品ラインナップなどは、「iDeCo(イデコ)ナビ」でチェックできます。そちらもぜひ参考にしてみてください!