突然、「うんこ! ちんこ!」などと連呼して、ゲラゲラ笑う子どもたち。家ならまだしも公共の場所で大きな声で叫ばれると、パパママは気が気ではありません。そもそも、なぜ子どもは下品な言葉やシモネタが好きなのか。All About「子育て」ガイドである福田由紀子さんに、親の対処法も交えて伺いました。
下ネタは成長の通過点

子どもが下品な言葉を好んで言いたがる時期は、大体3歳くらいからが多いそう。実は、これはとても自然な現象だといいます。
「3歳くらいになるとおむつも外れ、自分で排泄をコントロールできるようになります。『ひとりでできた!』という達成感を得た子どもは、自分の体から出てきた『うんこ』に興味津々。自分の体に興味が出始める時期ですから、『ちんこ』や『おっぱい』なども同様です。今、一番興味があることを言葉にしたがるのはごく当たり前のことなんです」
子どもの下品な言葉は成長の通過点。「うちの子にも、ついにこのときがきたんだ」という程度にとらえておけばいいのだとか。とはいえ、どんどんエスカレートしていくのが子どもの常です。見過ごせない場合、親としてどのような態度で接すればよいのでしょうか。
「『うんこ』や『ちんこ』など下ネタを叫ぶのは、注目されたいという気持ちの表れ。自分の言葉に周りが反応することが、単純に楽しいのです。「うんこ!」と叫んだらみんなが笑ったという『成功体験』が心に刻まれ、何度でも繰り返します。ですので、あえて『ふーん』『それで?』くらいの薄いリアクションをとってみましょう。反応がないと子どもはつまらないので、そのうち収まっていくはずです」
子どもの下品な言葉に、大げさな反応は厳禁。一緒に笑えばエスカレートさせ、かといって叱りつけると萎縮してしまいます。慌てず、騒がず、「薄いリアクション」に徹しましょう。下品な言葉が好きなのは圧倒的に男の子が多いですが、女の子の場合でも対処方法は同じだそうです。
「言ってはいけない場所」を正しく伝える

とはいえ、レストランや電車などの公共の場所で「うんこ」「ちんこ」を連呼するようなときには、そうそう余裕を持って接してもいられません。子どもに時と場所を教えるには、どうすればいいのでしょうか。
「なにがどうしていけないのかをきちんと伝えましょう。『みんながいる場所では、そういう言葉を使ってはダメだよ』『いやな気持ちになる人もいるんだよ』『あなたがそんな言葉を使うと、親として悲しいな』と言葉で説明するのです。この時に重要なのが、必ず真面目な表情で話すこと。言葉とは裏腹に顔が笑っていたら、子どもは真剣に受けとめません」
子どもたちは、表情や態度からもメッセージを受け取ります。真剣に「ダメだよ」と言われるのと、笑いながら言われるのでは、受け取り方が180度変わってしまうでしょう。
また、子どもは下品な言葉を言うことで大人の反応を図ることもあるそうです。
「初めて行った他人の家で『うんこ』『ちんこ』を連呼する場合、照れ隠しであると同時に、相手の反応を確かめているのです。『この人はどれくらい自分を大目に見てくれるのか』と、確認する手段にしているんですね」
そのほか、ついやってしまいがちで注意したいのが、「●●を買ってあげるからやめなさい」と物で釣る行為。その場しのぎにはなりますが、よくない結果を招きます。
「物をエサにすると、『言わないでいてあげた』という考えが子どもに生まれてしまいます。その結果、毎回ご褒美を期待したり、ご褒美がないと言うことをきかなくなったりするようになりかねません」
その場しのぎのご褒美作戦ではなく、なぜいけないのかを理解させることが大切だといいます。
下ネタを使い始めたら、性教育のチャンス
子どもが下品な言葉を使い始める時期は、排泄や性について教育する大きなチャンスだと福田さんは言います。なぜなら、「うんこ」も「ちんこ」も、それぞれ人間の体に関する大切なものだからです。
「排泄や性に関することを『汚いもの』『恥ずかしいもの』として捉えるから、子どもは『こんな言葉を言えちゃう自分』を誇示したくなります。子どもときちんと向き合って、人間が生きるうえでそれがどれだけ大切なものかを正しく教えてみてください。今は幼児向けのからだの図鑑や性教育の絵本もありますから、それらを子どもと一緒に読んでもいいですね」
排泄や性について教育を始める時期に、早すぎることはないのだとか。
「もし抵抗を感じるようでしたら、本棚にさりげなく絵本などを置いてみてもいいですね。興味を持っていることだけに、きっと自分で本を取り出して読むはずです。正しく知識を身につければ、『うんこ』も『ちんこ』も当たり前のものとして受け入れられるようになります」
また、この頃は自分の体に興味を持ち、男女の違いを意識し始める時期でもあるそう。男の子が「ぼくは男だからエプロンをしない!」と言ったり、女の子が「なんでわたしにはおちんちんがないの?」と質問をしたりすることも。そんな時期に、自分の体について正しく知ることがとても大切だといいます。
「自分の体について知ることは、自分の体を大事にすることにつながります。『人と違っていてもいいんだ』『自分は自分なんだ』と気が付く。その肯定感は、子どもの心の発育のために欠かせない要素です」
自分のおちんちんが大好きでいつも触っている男の子に、少々心配になるパパやママがいるかもしれません。ただ、それも自分の体を理解しようとしたり、触って安心したりしようとしていることが多いようです。
子どもが下品な言葉を連呼するのは、小学校にあがる前には自然と収まっていくのがほとんど。「注目されたい」という気持ちは、かけっこやお絵かき、歌など、自分が得意なものを見つけることで満たされるようになります。慌てず騒がず、心に余裕を持って見守りましょう。