食事に関する悩みで多いのが、子どもの偏食について。子どもの成長や栄養バランスを考えて食事を用意しても、「これイヤ! あれも嫌い!」と言われたり、好きなものしか食べてくれなかったりすることは多いですよね。
そこで今回は、子育て両立・共育支援事業を行う「エスキッチン」で食育サポーターとして活躍する食育インストラクターで保育士の加野有美(かの・ゆみ)さんに、「子どもの偏食を改善する方法」を教えてもらいました。
子供の「野菜嫌い」を克服する意外な方法とは!?楽しく食べるが重要!

子どもの偏食を改善するには、どのようなことが大切でしょうか?
「まず、食事自体を好きになり、楽しく食べられるような雰囲気作りが大切です。これは、食べることを強要するのではなく、子どもが『食事の時間は楽しい』と思えるようにすることが第一歩です」
楽しく食べられるような雰囲気作りとは、具体的にはどうしたらいいですか?
「まずは、子どもと一緒に食事をとること。毎日の食事は準備だけでも大変でせわしなくなりがちですが、食事のときはできるだけ家族全員で食卓を囲むのが理想です。みんなが楽しく過ごせるような会話をしながら食事をすることで、食事の時間が心地よいものになります」
小学生が学校生活の中で好きな時間の1つに給食の時間がありますが、給食の時間は友だちと会話をしながら一緒に食事をして楽しい時間だったという思い出があります。大人でも、親しい友人や家族と食事をするひと時は心地よいものですよね。このように「食事の時間=楽しい」と思える雰囲気を作ることが大切ということですね。
「子どもを楽しませようと意気込むのではなく、ママやパパが自然と楽しく食べている姿を見せるだけでも充分効果的です。ときには、子どもの好きな音楽を流したり、普段とは違う食器を使って気分を変えたりするのもオススメです」
子どもに言ってはいけない「NGワード」
雰囲気作りが大切なことはわかりましたが、好きな物ばかり食べて、嫌いな物に全く手をつけないという場合は、ついついイライラして怒ってしまいがちです。そのような場合はどうすればよいでしょうか?
「せっかく栄養バランスを考えて料理を作っても、好きな揚げ物やお肉しか食べてくれないというのは困りますよね。そんなときは、『どうして嫌いなのか』『なぜ食べたくないのか』を質問してあげてください。嫌いな理由をきちんと聞くことで、食べられるようになるヒントが見つかるかもしれません」
「理由を聞いたら、いったん受け止めて共感してあげましょう。『そうだったんだね。たしかにネギは辛みがあるよね』など、子どもの言った言葉を繰り返すだけでもOKです」
理由を共感してもらうことで子どもは安心して、親の意見に聞く耳を持つようになるそう。その後のアドバイスもしやすくなりそうですね。
また、次のような言葉はNGです。

「早く食べなさい」「気にせず口に入れなさい」
「〇○しなさい」という命令口調で無理矢理食べさせるのは避けましょう。大人の指示でそのときは食べるかもしれませんが、子どもの心の中には楽しくない記憶が残るので、ますます食べない傾向に陥る危険性があります。そうなっては本末転倒です。
「お兄ちゃんはたくさん食べてるのに…」
きょうだいとの比較は、子どもの自尊心を傷つけます。比較するときは、過去のその子自身と比較して、成長を見つけてあげましょう。
「いい加減食べないと怒るよ」
叱る言葉は、食べること自体を脅威に感じてしまい、食事に対してマイナスなイメージを与えてしまいます。子どもの気持ちに寄り添って、「ママは〇○だから、ご飯を食べてもらいたいと思っているんだよ」という風に、「私」を主語にして気持ちを伝えてあげてください。
嫌がる子どもに無理に食べさせない方がいいということですね。
嫌いなものはどう食べさせる?

では、嫌いなものはそのままずっと食べさせなくても大丈夫でしょうか?
「子どもが嫌いだからこの食材を買うのはもうやめよう、作っても無駄だから作らない、ということはしないでほしいです。なぜなら、それは子どもの食体験を奪い、味覚の形成ができなくなってしまうからです」
大人になっても偏食の人は、その親も偏食というケースがよくあります。同じメニューばかり食卓に並んでいて、食べたことがない(食体験が乏しい)ということが多いそうです。
「子どもが嫌がっていたものでも、調理方法や味付け、食材の組み合わせを変えるだけでも食べられる可能性があります。焼くと食べない食材でも、煮たり揚げたりすれば、食べるかもしれません。もし、子どもが揚げ物好きでカボチャが嫌いな場合、カボチャの煮物ではなく、カボチャを天ぷらにしたり、素揚げにしてチップスにしてみるなど、食べ方の工夫ができますね」
なるほど、調理法を変えるだけでもさまざまな工夫ができそうですね。ほかに何か具体例はありますか?
「切り方を変えるだけで食べるようになったという事例は数多くあります。たとえば、子どもの苦手な食材としてよく挙げられるピーマンは、切り方ひとつで苦み成分の出方が変わります」
ピーマンを横切りすると、元々縦に並んでいる繊維と細胞が壊れて、香りや苦みが強く出ます。それに対し、縦切りにすると苦味を抑えることができます。また、油でコーティングすることで独特の香りや苦みを薄めながら、美味しさを閉じ込めることができるので、多めの油で炒めたり、先に素揚げすることで食べられるようになる可能性が高まります。
「苦手な子どもが意外と多いトマトは、ドロッとした食感や種の部分を嫌がりがち。その場合は、トマトを刻んで煮詰めたら食べられるかもしれません。また、カレーの中にトマトを入れると甘みと酸味がほどよく感じられ、旨味も出るのでオススメです」
一つの食材でもさまざまな調理法や味付けを試すことで、食べられるようになる可能性は無限にありそうですね。食べさせる工夫をやめることこそが、偏食に繋がると言っても過言ではなさそう。子どもの食体験を乏しくさせないためにも、嫌いな食材も諦めずに食卓に出してあげたいですね。
また、食べる経験を増やす以外にも、野菜などを育てたり、食事の手伝いをさせるなど、食体験を育む方法はあります。子どもが「食」に興味を持てるように、親子で一緒にさまざまな食体験を積み重ねましょう。