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子供の集団感染もある「疥癬」とは? 原因・症状・治療法も紹介

体にダニが寄生することによって皮膚に異常をきたす「疥癬(かいせん)」という感染症を知っていますか? あまり多い病気ではありませんが、近年保育園で集団感染が発生した例もあり、知っておくと安心です。

そこで今回は、疥癬に詳しい兵庫医科大学皮膚科学准教授の夏秋優先生に、基礎知識や症状、治療法などを教えてもらいました。

「疥癬(かいせん)」ってどんな病気?

子どもは発疹やかゆみなどの皮膚トラブルが多く、判断や対処法に迷うことも多いですよね。適切な診断と治療を行わないと、かえって酷くなってしまうことも…。そもそも「疥癬」とは、どんな病気でどのような症状がでるのでしょうか。

腋にできた赤いブツブツ(丘疹)※転載禁止

「『疥癬』は、ヒトヒゼンダニというダニが皮膚の角質層に寄生して起こる感染症です。主な症状は強いかゆみと赤いブツブツなどで、これはヒゼンダニの体そのものや糞、脱皮した殻などにアレルギー反応を起こした皮膚の炎症によるものです

手首の疥癬トンネル。矢印の部分にヒゼンダニが角層の下に掘り進んで作った線状の皮疹が見られる※転載禁止

「感染後は4〜6週間の潜伏期間を経て、赤いブツブツや激しいかゆみが現れます。手のひらや関節、指の間にダニが掘った横穴である『疥癬トンネル』ができたり、お腹やわきの下、太もも、腕などには虫刺されのような赤いブツブツ(『丘疹』)ができます」

「陰部の場合は、皮膚が硬く盛り上がってしこりのようになった『結節』が見られるようになります。また、小児は手足に小さな水ぶくれが多発することもあります

どのようにして感染するのでしょうか。

「ヒゼンダニは古来より人肌に寄生して生きてきたダニで、人肌から人肌にうつりながら世代を維持してきたと考えられます。環境の変化に弱いので、人肌を離れると通常は24 時間以内に死滅します。そのため、感染者の肌と肌が直接、接触することがなければ感染はしにくいです」

「しかし、他人との接触が多い小さな子どもは、保育所で大勢と一緒に寝たり、寝具を共用したり、長時間手をつないで歩いたりすることによって感染することがあります

「疥癬には『通常疥癬』と重症の『角化型疥癬』があります。角化型疥癬は免疫力が低下した人に起こる比較的稀な病気ですが、感染力がとても強いので注意が必要です

「2014年に東京都の保育園で「疥癬」の集団感染が発生しましたが、このときは職員が角化型疥癬を発症していたことが発端でした。ヒゼンダニの寄生数がとても多く全身の皮膚が赤くカサカサになるのが特徴で、フケなどの剥がれ落ちた皮屑(ひせつ)に触れるだけでも感染します」


診断と治療の方法 治療期間は?

疥癬は昔からある病気ですが、治りにくいともいわれているのはなぜでしょうか。

ヒゼンダニ成虫(雌)※転載禁止

「ヒゼンダニの生態はよくわかっておらず、症状もさまざまなため、十分に解明されている病気とはいえません。かぶれや湿疹、アトピー性皮膚炎など、よく似た症状の病気が多いので、専門医でも診断が難しい場合があります

「疥癬の場合、もし誤った診断をしてステロイド剤を使うと症状が悪化してしまうので、正確な診断と適切な治療がとても大切です

夏秋先生によると、皮膚科専門医でも判断が難しいという疥癬。専門医以外が診断するのはまず無理ということなので、疥癬の疑いがある場合は小児科ではなく必ず皮膚科を受診しましょう

「周囲に痒がっている人がいる、親族が入所中の介護施設で疥癬が流行しているといった情報は、医師にとって疥癬を疑う大きな判断材料になります。受診の際は些細なことでも必ず話してください」

さまざまな発疹があるなかで、どう疥癬と見極めるのでしょうか?

「疥癬の診断は、かゆみや皮膚の症状や周囲の流行状況、患者との接触の可能性などを考慮したうえ、皮膚を特殊な拡大鏡で観察したり、皮膚の表面を削って採取したものを顕微鏡で観察したりしてヒゼンダニを確認します

「ヒゼンダニの体や卵、糞などが見つかれば疥癬であることが確定します。ただし、初期には見つからないこともあるため、慎重に経過をみたうえで疥癬が強く疑われる場合は、治療を始める場合もあります」

疥癬と診断された場合は、どのような治療を行うのでしょうか。

症状の強さや患者の年齢のほか、ヒゼンダニの産卵サイクルにあわせて、塗り薬や内服薬を使います。塗り薬としてはフェノトリンという殺虫成分が入ったローションを1週間に1回、原則として計2回、全身に外用します」

「内服薬はイベルメクチンという殺虫成分が入った錠剤を1週間に1回ずつ計2回、服用します。通常疥癬の場合、外用か内服のどちらかの治療を正しく行えばヒゼンダニは1〜2週間で死滅します。重症の場合は内服と外用を併用することもあります

「角化型疥癬の場合は角質層が厚くなるため、それを除去するプロセスも加えながら3〜4週間は治療を継続します。ただし、ヒゼンダニが死滅してからもアレルギー反応はしばらく続くため、発疹やかゆみが数カ月から1年ほど続く場合もあります。その場合はかゆみや発疹などの症状に対する治療を続けます」


日常生活で気をつけることは?

家族の誰かが感染した場合や、その疑いがある場合、どのような点に気をつけたらよいのでしょうか。

「家族に感染者が出たら、感染力の強い角化型疥癬かどうかをまず確認しましょう。通常疥癬であれば、寝具の共用やスキンシップを避けるだけでかまいません。角化型疥癬の場合は、部屋の殺虫や布団の消毒、洗濯前の熱処理などが必要です。医療機関の指示に従ってください」

「家庭内のほか、子どもが通う保育園、家族が通う介護施設など、身近なところで疥癬が発生した場合は、最初の感染者が出てから潜伏期間が過ぎるまでの間は注意と観察を続けましょう。もし家庭内で複数の感染者が出た場合は、全員が同時に治療してヒゼンダニを全滅させないと誰かの皮膚に生き残ったヒゼンダニによって感染が続いてしまうので注意しましょう」

また、ペットと暮らしている場合にも注意が必要だそう。

「イヌやネコなどペットがヒゼンダニに感染する場合もあります。一緒に暮らしている人間にも皮膚症状やかゆみが出るケースがあるので、感染源との接触を避けることが大切です。ペットの治療は獣医師に任せ、人間はかゆみや発疹などの症状に対する治療を行います。動物に寄生するヒゼンダニは別種ですので、人間の皮膚で繁殖することはなく、そのヒゼンダニに対する薬は必要ありません」

正確な診断と適切な治療が大切な「疥癬」。皮膚トラブルが起きた場合のひとつの可能性として覚えておきたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 夏秋優先生

    兵庫医科大学皮膚科学准教授。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本東洋医学認定会漢方専門医・東洋医学指導医。専門は虫による皮膚病、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、漢方治療。著書に『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(学研メディカル秀潤社)がある。

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ライター紹介

高柳涼子

雑誌編集部勤務を経てフリーランスに。ライティングと校正を中心に、ときどき編集もやる3児の母です。これまでに関わった分野は、求人、進学、ウェディング、アート、手芸、田舎暮らし、食育、仏教、料理など。

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