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親子のお仕事体験はメリットだらけ! 子供の好奇心の伸ばし方も

掲載日: 2019年6月28日更新日: 2019年6月28日有馬巳姫

親子で育む体験や経験によって、子供の好奇心や興味を伸ばしたいと思う親は多いはず。さらに、「お仕事体験」のような大人の社会を疑似体験することは、子供にとっても貴重といえますよね。

東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授 Photo:Yoshinori Kurosawa

そこで今回は、脳医学者で東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授に、親子で参加する「お仕事体験」の魅力や、参加する際のポイント、子供の好奇心の伸ばし方について教えてもらいました。

親子の体験は脳の発達に重要!

いこーよでは、親子で一緒に参加する「お仕事体験」を夏休みに多数実施します。そこで知りたいのですが、専門家から見て、親子で一緒にお仕事体験をするメリットはどういったところにあるのでしょうか?

そもそも親子で一緒に何かを体験することは、脳の発達において非常に重要です。子供が何かを覚えるのは、基本的にすべて『模倣』です。言葉や運動を覚えたり、社会的ルールを身につけたりするのは、全て身近な大人の真似をして学びますよね。その模倣の一番重要な対象者は、当然保護者である親です」

「また、親子で同じ経験を共有することは、親子関係をとても豊かにします。近年の研究から、良好な親子関係は、子供の脳の発達を伸ばすことが明らかになっています。親子でさまざまな体験をして、より多くの時間を過ごすことは、子供の脳を健やかに発達させるためにもとても重要です」

親子で体験する上で大事なことはありますか?

「『お仕事体験』のような実体験を通して、子供に興味に持たせるには、一緒に体験して、親自身が楽しんでいる姿を見せることが一番大事です。親が楽しそうにしていることで、子供も『楽しそう。やってみたい!』と思うものです」

「また、親がやりたいことを選ぶのもおすすめです。子供がやりたいものが決まっている場合はいいですが、子供自身で選べない場合は、親がやりたいものを選べばいいのです。まずは、親が楽しみながら一生懸命にやっている姿を見せることが大切です

親子体験は子供にとってメリット大!

親子でお仕事体験を行うことで、子供にとってどのような影響をもたらすものでしょうか?

子供にとって一番の魅力は、夢と目標が生まれることだと思います。子供に勉強をしてほしいと願う親は多いですが、大切なのは子供が勉強を楽しいと思いながらすることです」

「世の中には勉強をつまらないと思いながら、仕方なくしている人も多いですが、夢があると何かを学ぶことは楽しいものです。幼稚園児に夢を聞くと、お医者さんやサッカー選手、ケーキ屋さん、バレリーナなど、沢山の夢が出てきます。ところが、大きくなるに連れて、その夢がなくなる場合が多いです。そうした時期を過ぎても、夢が明確にある子供は、ずっと楽しく勉強ができるのです

「さらに、勉強ができる人とできない人の違いは、頭が良いか悪いかではなく、明確にやりたいことがあるかどうかの違いが大きいと思います。そして、夢がリアルであればあるほど、目標に向かいやすいです。実際のお仕事に挑戦する職業体験は、まさにリアルな実像を描くのに最適です。社会で大人が働く姿を見ることは、子供が将来の目標を持つ一つのきっかけになると思います」

では、子供が体験する職業は慎重に選ぶ必要があるのでしょうか?

まずは、いろいろなことを学んで、興味関心を広げることが重要なので、子供が楽しいと思うことや、興味を持つことをさせることが大切です。漁師になりたいという子供に、漁師の職業を体験することは、もちろん素晴らしいことです。ただ、どんな仕事であっても、子供が何かに興味を持つきっかけを作ることはできます」

「例えば、実際に海に出て漁師の職業を体験する中で、仕事そのものに興味を持つ子供もいれば、温暖化や海の汚染など環境問題に興味を持ったり、海洋生物を見て生き物に興味を持つ子供もいます」

将来の仕事に直接関係なくても、子供の知的好奇心を伸ばしてあげることは、子供の成長過程においてとても重要なことです。何かを学ぶことが好きだとか、わくわくしながらやると、脳の記憶の定着が良くなります。つまり、伸びる子供とそうでない子の決定的な違いは、知的好奇心の差にあると言えます。知的好奇心を伸ばして、いろいろなことに興味を持たせることが、何をするうえでもすごく大切なことです」


脳科学的にみる職業体験のメリットは?

親子での体験が、子供にとって非常に有益なことはわかりました。では、職業体験がほかの体験と異なる点はどういったところでしょうか。

「さきほども触れましたが、知的好奇心を伸ばすためには、実体験が必要不可欠です。図鑑などを通して、さまざまなことに興味を持ちますが、実際の体験を超えることはなかなかありません」

伸びる子供の親が共通して行っていることは、子供が興味を持ったらできるだけ早いタイミングで、本物を見せてあげることです。図鑑という『バーチャル(仮想)』の知識と、本物という『リアル(現実)』の世界を結びつけることで、子供の理解や感動、楽しさはさらに大きくなります。バーチャルな知識が五感を刺激する本物の体験になることで、知的好奇心は何倍にも育つのです」

お仕事体験を脳科学的に考えると、どのようなメリットがありますか?

「脳の発達に重要なのは、環境の豊かさです。多くの刺激を与えていろいろな経験をすることは、脳の可塑性(かそせい)※を上げるので、子供の発達にとっても大変有効です

「だからこそ、環境を豊かにして、子供に1回でも多く、特別な体験をさせてあげることが大切です。子供のときの体験は、小さなことでもすごく心に残ります。非日常的な体験を親子で共有するお仕事体験は、子供にとても大きなインパクトを与えます。そういった子供の心に残る体験は、その先の人生に大きく影響するはずです」

※学習や記憶、神経の再生など、多くの現象にかかわるもの。脳の神経が損傷を受けた場合でも、リハビリなどで元の機能が回復することに影響すると言われている

子供の好奇心をさらに刺激するには?

子供の好奇心を伸ばすために、親ができることはどんなことでしょうか?

やっぱり一番重要なのは親が楽しむこと。それに尽きます。子供に何かをさせてあげるというスタンスでいるより、自ら楽しむ姿勢で参加することが大切ですね。親が楽しそうにしている姿に刺激されて、子供も体験が楽しくなり、興味関心の幅が何倍にも広がります」

「あとは、何か一つのこと、一言でもいいので、子供を『褒める』ことを意識してほしいですね。褒められた経験が多い子供は、困難から回復する力が強くなります。例えば、いじめを受けたり、大きな震災にあったりなど、人生で厳しい局面に立ったときに、そこから這い上がる力を持っています。親子で一緒に行う体験の中では、子供を褒めるチャンスがたくさんあるはず。ぜひ、子供を褒めることを意識しながら参加してください」

最後になりますが、親子で貴重な体験したあとに、その経験をさらに伸ばすにはどのようなことをするのがよいのでしょうか?

「一緒に体験したことについて、親子で話し合うことだと思います。一日の体験を振り返って、何が楽しかったか、何を感じたか、どんなことを思ったかなど、伝え合いましょう。このときのポイントは、親が子供に感想を聞くのではなく、親自身が体験を通して感じたことなどをどんどん積極的に話すことです。これを意識することで、親子のコミュニケーションがより豊かになると思います」

「さらに、次はこんなことをやってみようなど、親子で次につながる話ができると、子供の知的好奇心や、それに伴う体験がどんどん広がっていくと思います。そういう意味でも、バーチャルな世界をリアルな体験に変えられる職業体験は、子供の興味関心を広げ、知的好奇心を育むのにピッタリな体験だと思います」

お話を聞いたのは…

  • 瀧 靖之教授

    東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長、医学博士。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIは、これまでにのべ約16万人に上る。10万部を突破するベストセラーとなった「賢い子に育てる究極のコツ」の他、多数の著書を執筆。最新刊は「こんなカンタンなことで 子どもの可能性はグングン伸びる!」を出版するほか、メディア出演など幅広く活動中。

  • 瀧研究室

ライター紹介

有馬巳姫

「いこーよ」編集部。2013年に長女、2015年に長男を出産し、育児に奮闘する日々。家の中にいるのは苦手で、新しい場所やモノが大好きな「THEミーハー」体質。子どもたちにも、いろんな場所でさまざまな経験をさせるべく、家族のおでかけ計画をたてるのが日課。趣味は読書、ドライブ、DIY、写真撮影。

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