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【育児の新常識】赤ちゃんの日光浴は必要ない!? 

掲載日: 2016年6月11日更新日: 2016年6月11日伊地知由理

昔は赤ちゃんの健康に不可欠とされてきた「日光浴」。けれども、1998年に母子手帳から日光浴を推奨する文章が消え、「外気浴」に変わりました。なぜ日光浴から外気浴に変わったのか、日光を浴びなくても大丈夫なのか、専門家に聞きました。

なぜ「日光浴」から「外気浴」に変わったの? 

「日光浴」とは、日光を身体に受けることを目的にしているのに対し、「外気浴」は赤ちゃんを新鮮な空気にふれさせることを目的としたもの。現在は生後1カ月頃から、庭やベランダで5分程度の「外気浴」を始めることが推奨されています。

「母子手帳の記載が『日光浴』から『外気浴』に変わった背景には、大きく2つの理由があります。」

こう話してくれたのは、聖マリアンナ医科大学の特任教授、井上肇先生。1つ目の理由は、オゾン層破壊などで昔より紫外線を浴びやすくなっているという「環境的な問題」です。

日光浴をやめましょうというのは世界的な流れです。オゾン層の破壊で紫外線の皮膚への到達率が高まり、特にヨーロッパやオーストラリアなど、紫外線の影響を受けやすい白人系人種が多い地域で、皮膚がんなどの健康を害するケースが増えているのです。そうした世界的な流れと、大人に比べて皮膚が薄い赤ちゃんへの影響を重くみて、『日光浴』の表記を削除し、『外気浴』に変更したのです。」

これに加えて、時代の変化に伴う「日本の栄養状況の変化」も理由の1つだとか。

「骨の成長にはビタミンDが必要です。でもこのビタミンDは、紫外線にあたって活性型ビタミンDに変化しないと効果が出ません。昔は栄養が不足していたので、物が少ない環境の中で僅かなビタミンDでも効率よく利用するために日光浴が推奨されていました。紫外線を浴びることで、骨の形成に必要な血中のビタミンDを活性化していたのです。今は飽食の時代で、粉ミルクも完全栄養のものが多く、ビタミンD不足はあまりないということも、影響しています。」

昔に比べて栄養状況が改善した結果、日光を長時間浴びる必要がなくなったのですね。


外の空気に触れる「外気浴」は赤ちゃんの健康に有益

日光を浴びすぎると体に悪影響があるとのことですが、まったく日光を浴びる必要はないのでしょうか? 

「日差しの強い時期に何時間も外にいるなど、過度に日光を浴びることは控えるべきですが、室内にずっとこもって過ごすのも、健康を害する原因となります。」

赤ちゃんをずっと一定の温度の部屋で過ごさせてしまうと、皮膚が外界の環境に適応できなくなってしまいます。例えば寒いと手足が赤くなったり、冷たくなったりするのは、外気の温度や環境に合わせて毛細血管が拡張・収縮し、体温を一定に保つ役割を果たしているからです。外気(自然環境)から完全に遮断すると、そういった自律神経の調節(環境適応)ができなくなってしまうのです。」

外気による刺激で、皮膚に一定のストレスを与えることは、赤ちゃんの健康のために必要なのですね。

骨の形成に必要なビタミンDと紫外線との関係は? 

また、栄養状況が改善して以前ほど日光を浴びる必要はなくなったとはいえ、最近は活性型ビタミンDが不足している子どもが増えているそう。

「ビタミンDは、骨の成長に必要なカルシウムを体内に取り込みやすくし、骨化を正常に進ませる働きがあります。しかし、近年血液中の活性型ビタミンDが不足する子ども存在し、骨の発育不良を起こす『くる病』もしくはその予備軍が増えています。この背景には『日光を過度に避けること』が原因としてあります。」

井上先生によれば、日常生活において、常に日焼け止めを欠かさないということも紫外線を遮断してしまうので「過度」にあてはまるようです。

「皮膚にある色素細胞は、紫外線を感知すると、過度の紫外線から体を防衛するために、黒色のメラニン色素を作り出します。これが日焼けという現象で、黒い皮膚は紫外線から体を守った証拠。多少の日焼けは大丈夫ですよ。」

活性型ビタミンDは、紫外線を10分程度浴びただけでも形成されるそうなので、外遊びやお散歩など、短時間の外出は積極的に行いたいものですね。


不足しがちなビタミンDを補うには「しらす」がおすすめ

ビタミンDは食事でも摂取することができます。

「ビタミンDは魚の肝臓に多く含まれていますが、毎回肝料理を用意するのは難しいです。イワシやサバなどの青魚もいいですが、ビタミンDが豊富でカルシウムも摂れる『しらす』が特におすすめです。」

サメなどの肝臓から抽出した液体やそれを濃縮した脂肪分である「肝油」が、昔は幼稚園などで配られていましたが、現在は食事に取り入れるのは難しいもの。その点、しらすは塩抜きをすれば離乳食から使えますし、ご飯や卵焼きに混ぜたり、おひたしなどに和えたりするなど、バリエーションも豊富で使いやすい食材ですね。

ただ、食事による摂取で成長に必要なビタミンDをすべて賄っても、それは活性化されていないビタミンD。あくまで、骨の発育に必要な活性型ビタミンDは外気浴(紫外線)があって作られるもの、食事も重要ですが、外気浴も積極的に取り入れるようにしましょう

日光は浴びすぎても、浴びなくても、どちらもよくありません。お散歩や外遊びなどの「外気浴」で新鮮な空気や日光を適度に浴び、赤ちゃんの抵抗力や骨の成長を促して、元気に日常生活を過ごしていきましょう。

お話を聞いたのは…

  • 井上 肇 先生

    聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。

ライター紹介

伊地知由理

1977年生まれ。広告制作会社のライターとして活動中。1児の母。子ども服の着回し術や、毛玉になりにくい素材を探し歩き、研究するのが趣味。親子コーデもチャレンジ中。

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