かつては「生後3カ月になった赤ちゃんには果汁を与えましょう」との指導が一般的でしたが、現代は「離乳食スタート前の果汁は必要なし!」と180度の方向転換。これはいったいどういうわけ? 果汁はホントに必要ないのでしょうか?
少し前まで、生後まもないベビーに与えることを積極的に推奨されていた「果汁」。しかし、近年は厚生労働省の見解が「離乳食スタート前の赤ちゃんに果汁は必要なし」というスタイルに一転。2008年には母子手帳の生後3カ月~4カ月の赤ちゃんに関するチェックリストから「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」という記述が削除されました。
とはいうものの、離乳食をスタートする前に果汁をあげることで、「ビタミン補給になる」「便秘解消になる」「母乳から離乳食へスムーズに移行できる」というメリットを挙げる人も…。
あげるべきか? あげざるべきか? うーん、悩ましい! そこで、生後まもない赤ちゃんに果汁を与える必要があるのかどうか、子どもの栄養教育に詳しい帝京科学大学教授・上田玲子先生に聞きました!
「実は、大正から昭和25年にかけて、牛乳による人工栄養が多く行われており、不足しがちなビタミンCや水分の補給をする必要があったのです。そのため、果汁を与えることが奨励されていました。」
「しかし現在では、人工栄養で利用される育児用ミルクにはビタミンCをはじめとする必要なビタミン類が添加されています。もちろん、栄養素やエネルギーが十分足りているお母さんの体からつくられる母乳にもビタミンは十分含まれていますから、果汁からビタミンCを補給する必要はなくなったというわけです。」
「そうした指摘もありますが、一概に果汁がアレルギーの発症に影響するとは言えません。最近は、果汁をはじめ、食べ物は早く与えたほうがアレルギーになりにくいとの研究結果も出てきています。厚生労働省の指導方針が変更になったのは、アレルギーになるから与えてはいけないというより、栄養面で果汁は『必要ない』というニュアンスです。」
「甘い果汁は乳児が喜ぶことが多いのですが、多量に与えると血糖値が上昇してしまいます。結果として、食欲が抑えられ、おっぱいやミルクを飲む量が減り、必要な栄養素がとれなくなる恐れがあるのです。」
「また、果汁の与えすぎによる肥満の問題もありました。こうしたケースは海外の事例でしたが、日本でもこうした報告を重視し、離乳食開始前の果汁は『必要ない』とされるようになったのです。」
果汁に栄養のメリットを求める必要がなくなった現代では、食欲不振や肥満のリスクを負ってまで果汁をあげる必要はなさそうです。
「離乳食は、お米をトロトロの液体近いなめらかさにして与える”米がゆ”を与えることからスタートします。今まで液体しか飲んでなかった赤ちゃんは、味も形も違うものを口にするとびっくりして出しちゃうことも多いですよね。」
「でも、口から出したものをスプーンですくっては口に運び、すくっては運びを数回くりかえすと、ごくんと飲み込みます。それでもいやがる場合は、今まで飲んでいた母乳、またはミルクを少し足してみましょう。普段から親しんでいる乳の味にしてあげると、安心して食べてくれます。」
無理に果汁を使わなくても、新たな味に慣れるのは米がゆからで大丈夫。初めてのおかゆを食べ慣れた味にすることで、離乳食へとスムーズに移行できそうですね。
米がゆに慣れてきたら、煮た野菜をすりつぶしたり、裏ごしをして、湯などで柔らかくのばしてから与えます。カボチャやカブなど、ほんのり甘いものが赤ちゃんへのウケがいいようですよ。
赤ちゃんは離乳食を始めるタイミングになると、食べ物に興味を持ち始め、親が食べているものをじっと見つめたり、身を乗り出したりして『食べたい!』というサインを出すそう。そうしたサインを見逃さずに進めるのも上手な移行のコツのようです。
「離乳食中の赤ちゃんが食べられるフルーツの1回の目安量は、7カ月~8カ月で5g、9カ月~11カ月で10g、12カ月~18カ月で10g~15g。ここから果汁をしぼると、ちゅっと飲んだら終わってしまうくらいの少量ですね。」
「ちなみに、1日のトータルのフルーツ量の目安は、7カ月~8カ月で10g、9カ月~11カ月で30g、12カ月~18カ月で30g~45gです。そして、与えるときは、内臓への刺激を避けるためにも水や白湯で倍程度に薄めてあげてくださいね。」
離乳食開始前の赤ちゃんはママのおっぱいと育児用ミルクで十分栄養満点。無理して果汁を与える必要はないということ、離乳食開始後も与える量や果汁の濃さには十分注意するということを、ぜひ覚えておいてくださいね。
少し前まで、生後まもないベビーに与えることを積極的に推奨されていた「果汁」。しかし、近年は厚生労働省の見解が「離乳食スタート前の赤ちゃんに果汁は必要なし」というスタイルに一転。2008年には母子手帳の生後3カ月~4カ月の赤ちゃんに関するチェックリストから「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」という記述が削除されました。
とはいうものの、離乳食をスタートする前に果汁をあげることで、「ビタミン補給になる」「便秘解消になる」「母乳から離乳食へスムーズに移行できる」というメリットを挙げる人も…。
あげるべきか? あげざるべきか? うーん、悩ましい! そこで、生後まもない赤ちゃんに果汁を与える必要があるのかどうか、子どもの栄養教育に詳しい帝京科学大学教授・上田玲子先生に聞きました!
これまで果汁を赤ちゃんに与えていた理由
これまで、離乳食スタート前の生後3カ月の赤ちゃんに果汁をあげていたのはなぜなのでしょう?「実は、大正から昭和25年にかけて、牛乳による人工栄養が多く行われており、不足しがちなビタミンCや水分の補給をする必要があったのです。そのため、果汁を与えることが奨励されていました。」
「しかし現在では、人工栄養で利用される育児用ミルクにはビタミンCをはじめとする必要なビタミン類が添加されています。もちろん、栄養素やエネルギーが十分足りているお母さんの体からつくられる母乳にもビタミンは十分含まれていますから、果汁からビタミンCを補給する必要はなくなったというわけです。」
早くから果汁を与えるとアレルギーになる?
果汁といえば、「早くから果汁を与えすぎるとアレルギーになる」という怖いウワサを耳にすることも…。赤ちゃんに果汁は必要ないとされた背景には、こうしたアレルギー問題もあるのでしょうか?「そうした指摘もありますが、一概に果汁がアレルギーの発症に影響するとは言えません。最近は、果汁をはじめ、食べ物は早く与えたほうがアレルギーになりにくいとの研究結果も出てきています。厚生労働省の指導方針が変更になったのは、アレルギーになるから与えてはいけないというより、栄養面で果汁は『必要ない』というニュアンスです。」
「甘い果汁は乳児が喜ぶことが多いのですが、多量に与えると血糖値が上昇してしまいます。結果として、食欲が抑えられ、おっぱいやミルクを飲む量が減り、必要な栄養素がとれなくなる恐れがあるのです。」
「また、果汁の与えすぎによる肥満の問題もありました。こうしたケースは海外の事例でしたが、日本でもこうした報告を重視し、離乳食開始前の果汁は『必要ない』とされるようになったのです。」
果汁に栄養のメリットを求める必要がなくなった現代では、食欲不振や肥満のリスクを負ってまで果汁をあげる必要はなさそうです。
果汁がなくても離乳食へのスムーズな移行はできる!
離乳食のスタート前に果汁をあげる理由として、「ミルクとは違う味に慣れてほしくて」「スプーンでのごはんに慣らしたいから」と話すママも。事前に果汁を与えなくても、母乳から離乳食へスムーズに移行するには、どうすればいいのでしょう?「離乳食は、お米をトロトロの液体近いなめらかさにして与える”米がゆ”を与えることからスタートします。今まで液体しか飲んでなかった赤ちゃんは、味も形も違うものを口にするとびっくりして出しちゃうことも多いですよね。」
「でも、口から出したものをスプーンですくっては口に運び、すくっては運びを数回くりかえすと、ごくんと飲み込みます。それでもいやがる場合は、今まで飲んでいた母乳、またはミルクを少し足してみましょう。普段から親しんでいる乳の味にしてあげると、安心して食べてくれます。」
無理に果汁を使わなくても、新たな味に慣れるのは米がゆからで大丈夫。初めてのおかゆを食べ慣れた味にすることで、離乳食へとスムーズに移行できそうですね。
米がゆに慣れてきたら、煮た野菜をすりつぶしたり、裏ごしをして、湯などで柔らかくのばしてから与えます。カボチャやカブなど、ほんのり甘いものが赤ちゃんへのウケがいいようですよ。
赤ちゃんは離乳食を始めるタイミングになると、食べ物に興味を持ち始め、親が食べているものをじっと見つめたり、身を乗り出したりして『食べたい!』というサインを出すそう。そうしたサインを見逃さずに進めるのも上手な移行のコツのようです。
離乳食をスタートしてからの果汁の与え方
こうして離乳食をスタートした後は果汁を与えても大丈夫! ただ、この時期になっても、果汁の与えすぎには要注意。食欲減退や肥満の原因になるため、あげる量には気を配る必要がありそうです。「離乳食中の赤ちゃんが食べられるフルーツの1回の目安量は、7カ月~8カ月で5g、9カ月~11カ月で10g、12カ月~18カ月で10g~15g。ここから果汁をしぼると、ちゅっと飲んだら終わってしまうくらいの少量ですね。」
「ちなみに、1日のトータルのフルーツ量の目安は、7カ月~8カ月で10g、9カ月~11カ月で30g、12カ月~18カ月で30g~45gです。そして、与えるときは、内臓への刺激を避けるためにも水や白湯で倍程度に薄めてあげてくださいね。」
離乳食開始前の赤ちゃんはママのおっぱいと育児用ミルクで十分栄養満点。無理して果汁を与える必要はないということ、離乳食開始後も与える量や果汁の濃さには十分注意するということを、ぜひ覚えておいてくださいね。