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2歳を過ぎてもおっぱいを飲ませてOK?

2016年1月26日青柳直子

子供が2歳ごろになると周りには卒乳しているお友達も増え、このまま授乳を続けてよいものかと迷ってしまうママも多いですよね。そこで、『10人産んだスーパー助産師のストレスゼロで続けられる!母乳育児の本』 の著者で、ばぶばぶ助産院院長のHISAKO先生にお話を聞きました。

厚生労働省の指針変更で「断乳」から「卒乳」へ

日本では2001年頃まで『1歳を過ぎたら断乳』がスタンダードな指導でしたが、2002年に母子健康手帳から『断乳』という言葉が削除され、厚生労働省の指針でも赤ちゃんの個性に合わせて自然に卒乳の方向へ持っていきましょう、という流れになってきています」とHISAKO先生。

ではなぜ、親の意思で授乳を止める断乳から、子供が自分からおっぱいを吸わなくなるのを待つ卒乳へと流れが変わったのでしょうか。

以前は食事から栄養がとれる1歳以降、母乳は不要だと思われていた

「1歳で断乳がすすめられていた理由として、『1歳以降の母乳に栄養はない』なんて話もよく聞きますが、それは間違いです。母乳は小さな赤ちゃんにはそれなりの、6カ月児にはそれ相当の、そして1歳児には1歳児に見合った成分になっています。」

「母乳はママの血液から作られます。栄養のかたまりである血液の加工品の母乳が、水みたいに薄くなるはずはありません。抗アレルギー物質、ビタミンやミネラル、たんぱく質や脂質などを、飲ませ続けるかぎりずっと子どもに与え続けることができるようになっています。」

「ただし、1歳児が母乳だけで必要分の栄養を摂取しようとすれば、1日約2リットルも飲まなければいけないので、もちろんきちんと食事を摂ることも必要です。」

母乳には栄養以外に免疫成分も含まれているので、できる限り授乳を続ける方がいいのだとか。

「産後1年経っても2年経っても、母乳には免疫成分が含まれています。子どもの免疫機能がしっかりしてくる2歳ぐらいまでは母乳を続けたほうがよい、というのがWHOの見解であり、そしてそれ以降も子どもが欲しがるのなら授乳を続けましょう、と提言しています。」

1歳になり、食事からしっかり栄養がとれるようになっても、免疫成分の獲得という面では、母乳を続けたほうがいいのですね。


子どもに精神的安定をもたらす「おっぱい」

こうした母乳に含まれる成分としてのメリット以外に、子どもの精神面でも授乳を続けるメリットは大きいのだそう。

「1歳を過ぎ、ヨチヨチとひとり歩きをし始める頃からの子供は好奇心でいっぱい!ところが、思うようにできないことも多く、その分、いろいろな葛藤が芽生えます。甘えたい依存の気持ちと自分でやりたい自立の気持ちのコントロールがきかずストレスを抱えます。いわゆるイヤイヤ期の始まりです。ふと不安になったとき、悲しくなったり、眠くなったとき、心を充電するガソリンスタンド的存在が、おっぱいなのです。」

このような理由から、1歳を過ぎた頃から今まで以上におっぱいへの執着心が増して、授乳回数が増える場合もあるのだとか。

かつては栄養補給の手段としてのみ捉えられていた母乳ですが、免疫獲得や子どもの精神的安定にもおおいに役立つとして、無理に『断乳』するのではなく、子ども自身が『卒乳』するのを待とうという方針に変わったのですね。

世界の子どもの卒乳平均は4.2歳!

しかし、そんな流れの中で「いまだに健診や予防接種などで医療者から長期授乳を否定されることもあるようです」とHISAKO先生。断乳から卒乳へが全体の流れではあるものの、医療者の認識の違い=指導内容の違いがママたちを悩ませている要因のひとつのようです。

「日本はどうも、子どもに早熟を要求してばかりのような気がします。子どもの個性を尊重しましょう、と言うわりに、歩くのも、おむつ外しも、卒乳も…。なんでも早くできることが偉い!みたいな風潮がありますね。しかし驚くなかれ、世界の卒乳の時期は、平均4.2歳だというWHO/ユニセフの調査があります。」

4.2歳とは日本でいえば、幼稚園の年中さんの年齢。これには驚きですね。

「世界平均ということは発展途上国も含まれるので、衛生状態や食糧事情など日本とはったく違う国と比べるのは極端な話かもしれません。しかし、先進国であれ発展途上国であれ、2歳以降も子どもが欲しがる限り、授乳を続けることが推奨されていることには変わりありません。」

子どもへのメリットが大きく、世界平均でも4.2歳まで続けている授乳。周りが卒乳したからといって「早く卒乳しなきゃ!」と無理に焦る必要はないようです。


長期授乳のママへのメリットは?

長期授乳が子どもにとってよいことは分かってきましたが、実はママにとってもメリットがあるのだとか。

「一般的に母乳育児期間が長ければそれだけ無月経期間が長くなります。このことにより、ママにもメリットがあります。それは、更年期障害が軽く済む傾向にあるということ。母乳育児期間、無月経期間の長さと更年期症状の関連についてさまざまな研究が行われていて、子どもが3歳以上になるまで授乳を続けた人、1歳以上まで授乳を続けた人で比較すると、3歳以上まで授乳を続けた人のほうが更年期障害が起きにくいという結果が出ています。」

「無月経期間が長いということは無排卵の状態が長く続くということ。つまり、卵巣の機能が冬眠中で女性ホルモン(エストロゲン)が低い状態で安定、継続されていることを意味します。このことにより、その後のホルモンバランスが調整され、後の更年期障害が軽く済むようです。」

長期間授乳を続けることは、子どもだけでなく、ママの健康にも大きなメリットがあるのですね。


授乳期間や方法よりも、ママが育児を楽しむことが大切

このように、長期授乳にはたくさんのメリットがありますが、勘違いしてはいけないのは「長期授乳してもいい」のであって「長期授乳しなくてはいけない」わけではないということ。

「子どもの年齢にとらわれず、子どもが自分から卒乳するまで授乳を続けることは、子供にとってもママにとってもとても素敵なことです。しかし、おっぱいに執着する子供との毎日がママのイライラの原因になっていることが明らかなのであれば、義務感で授乳を続ける必要は決してないと思います。なぜなら、子供にとって一番大切なのは母乳育児ではなく、ママが楽しくおおらかな気持ちで接して子供に接してあげることなのですから。」

同じように、必ずしも「母乳でなくてはいけない」わけでもないとHISAKO先生。

母乳の素晴らしさが見直され、母乳育児が推進されればされるほど、粉ミルクを使うことに罪悪感を抱いているママも多いはず。しかし、「粉ミルクで育てているママが『努力が足りない』『愛情が足りない』わけではなく、母乳でも粉ミルクでも、赤ちゃんが元気に育ってくれるのなら栄養法の違いにこだわる必要はありません。粉ミルクにも多くのメリットがあります」とHISAKO先生は言います。

粉ミルクで育てるメリット

  • 腹持ちがよく赤ちゃんにひもじい思いをさせずに済む
  • 赤ちゃんがぐっすりまとめて眠ってくれる
  • 人に預けやすくなる
  • 母乳育児よりも一般的に生理の再開が早いので、次の妊娠計画を立てやすい
  • ママが病気の時でも安定的に授乳でき、薬を飲んでも影響がない

授乳方法や期間だけでなく、育児のお悩みは多く、どうしても他人の意見を気にしてしまいがちですが、自分の育児方法に自信を持って、幸福感、肯定感のある育児をできるといいですね。

お話を聞いたのは…

  • HISAKOさん

    『助産院ばぶばぶ』院長。10人産んだ子だくさんママ。
    総合病院小児科・産婦人科・NICU病棟で助産師としての経験を積む。5人を年子で出産した後『助産院ばぶばぶ』を大阪市阿倍野区に開院。妊産婦のケアを行うかたわら、NHK総合テレビでも放映された「いのちの授業」ほか、政府や県庁からの依頼を受け全国で講演活動を行う。著書に『10人産んだスーパー助産師のストレスゼロで続けられる!母乳育児の本』(すばる舎)、『9人産んじゃいました』(幻冬舎エデュケーション)、『みんな違っていいやん』(角川書店)。

  • 「助産院ばぶばぶ」ホームページ
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ライター紹介

青柳直子

ライター暦16年。神戸生まれ・育ち・在住のアラフォー世代。芸能・インタビュー、舞台・コンサートレポをメインに、子育て関連、街取材まで“守備範囲を広く”がモットー。小学1年生の長男、1歳の長女、ヨーゼフ(ハイジの犬)似の夫+猫2匹と、毎日てんやわんやな暮らしぶり。娘が歩けるようになったのを機に、家族キャンプ再デビューを計画中。

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