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イス生活は床より子供の成長にいいの? 座り方&家具の選び方も

掲載日: 2019年7月22日更新日: 2019年7月22日飯田友美

小さな子供がいるファミリーでは、イスとテーブル中心の生活か低いソファなどで床中心の生活か、どちらが子供の成長にいいのか気になる人も多いはず。「イスだと脚が長くなる」「床だとO脚になりやすい」など、いろいろな意見を耳にします。

そこで今回は、千葉県こども病院整形外科の柿崎潤先生に、床とイスに座るときのそれぞれのメリットやデメリットなどを聞きました。正しい座り方や家具の選び方も一緒に紹介します。

「床」と「イス」で子供の成長に違いは出るの?

日々の生活の中で、「床」の生活と「イス」の生活では、子供の成長に何か違いが出てくるのでしょうか。

子供たちの体の成長に関しては、床であってもイスであっても違いが出ることはないと思います

イスの生活だと「脚の形がきれいになる」「脚が長くなる」、正座をすると「脚がO脚になりやすい」といった意見を聞きますが、これは本当なのでしょうか。

「そういった話はよくあるものの、実際に医学的根拠はありません。日本人などのモンゴロイドの成人は平均的には軽度X脚ではなく、軽度O脚になるという事実があります。ですが、遺伝子の関係なのか、正座などの生活習慣によるものなのかについては、いまだ解明されていません。イスでの生活で脚が長くなることも同様に、解明されていないのです」

柿崎先生によると、生活を送る上で、床に座ってもイスに座っても、子供の成長には違いが出ないようです。


「床」「イス」それぞれのメリットとデメリットとは?

では、床の生活とイスの生活でそれぞれのメリットとデメリットや注意点はどういったものでしょうか。

床に座る生活のメリット

「正座の場合、腰から背中の姿勢が良くなりやすいので、腰・首・肩への負担が減ります

床に座る生活のデメリット・注意点

正座をするときに必要以上に姿勢を良くしようと背中を反らせると、かえって腰から背中の筋肉に過度な負担をかけてしまうため、腰痛などの原因になる可能性があります。長時間にわたり正座をすると脚がしびれてくると思いますが、これは足の神経や血流への影響の結果です。したがって、長時間の正座は避けた方が良いと思います」

「また、あぐらは骨盤が後ろに傾き、猫背になりやすくなります。猫背になると、首や頭の位置が体幹(腰〜背中の部分)より前にきます。頭が体幹より前に出るため、頭を支える首や肩に負担がかかってしまいます」

「さらに、腰の筋肉(背筋)が働いていないのに安定した状態になってしまうので、背筋が鍛えにくくなり、背筋が低下して猫背になりやすくなる可能性もあるので、こちらも長時間は控えた方が良いでしょう」

イスに座る生活のメリット

「イスの生活は床とは異なり、外くるぶしや足の甲など、あぐらや正座で体重がかかる部分に局所的な体重がかからないため、痛みが生じにくいです」

「床に比べると、座面の高さや奥行、背もたれ、机と座面の距離などを調整できるので、ひとり一人に合った家具を選ぶことができます。ちなみに、姿勢良く座ったときに股関節が90度で膝が90度、かかとが床につくような座面の高さが一般的にちょうど良いとされています

イスに座る生活のデメリット・注意点

座るイスの高さや、座面の奥行きなどが体に合っていないと、姿勢が悪くなりやすいです。それを続けることで、日常生活上の習慣に悪影響を与えることもあります」

「イスに座るときは、正座よりもあぐらの姿勢に近くなりやすいので、猫背になりがちです。とくに背もたれに寄りかかろうとすると、その傾向は強くなります」

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子供の年齢によって適切な座り方はある?

では、子供の年齢によって向いている座り方はあるのでしょうか?

「体の成長の観点からは、何歳ごろからこの座り方が良いということはないと思います」

箸の持ち方や鉛筆の持ち方などを覚える時期には、生活の中でいろいろな習慣や癖を身に付けていくと思います。それと同じころの幼児期から学童期に、机の高さやイスの高さといったことに気を遣う必要はあると考えます

「また『日本文化』という視点で考えると、さまざまな場面で正座が必要になると思います。小さいときからイスでの生活だけではなく、正座なども取り入れて、床に座ることに慣れておくということも必要ではないかと思っています

床であってもイスであっても、どちらでも正しく座れるようにしておくことが大事ですね。


家具の選び方は?

では、子供の成長を鑑みて、どのような家具を選べば良いのでしょうか。

床に座る生活の場合

床と机の差はどのくらいでしょうか?

「正座・あぐら・座布団を使用するなど、座り方で多少変わってきます。ですが、姿勢よく座らせて肩の力を抜いた状態で、肘を机に置いたときに、肘の曲がりが90度程度になることがひとつの目安になります」

「とはいえ、机の高さは調整でいないものも多く、大人と子供が同じ高さの机を使うことになるので、座布団の枚数で高さを調節するなどしましょう」

イスに座る生活の場合

イスと机の差はどれくらいでしょうか?

イスも同じく、姿勢良く座らせ肩の力を抜いた状態で、肘を机に置いたときに肘の曲がりが90度程度になることがひとつの目安です。高さは、股関節を90度にして膝も90度に曲げた格好で、かかとがちょうど床につく高さが良いでしょう

バランスチェアなどもありますが、使っても大丈夫でしょうか?

「全く問題ないですね。バランスチェアは、床に正座したときのような行儀良い姿勢を作りやすくなるイスです。座面が斜めなので骨盤よりも太ももが下がり、骨盤や腰にとって自然で負担の少ない良い姿勢になると思います」

クッションや座布団は使ったほうが良いのでしょうか。

必ずしもクッションや座布団はいらないと思います。ですが、硬いところに長時間座っているとお尻や脚が痛くなりますので、硬い床面や座面であれば使用してもいいでしょう。高さを調整するためにクッションや座布団を使うことも有効です。子供用の骨盤矯正クッションなどもありますが、普通のクッションや座布団で十分です

柿崎医師によると、床でもイスでも子供の成長に影響を与えることはないようです。ですが、座り方や姿勢によって猫背になったり、首や肩に負担がかかったり、筋力低下につながることはあることがわかりました。子供が座る姿勢に普段から目を向けてあげたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 柿崎 潤さん

    千葉大学医学部卒業後、千葉大学整形外科に入局。2011年から千葉県こども病院に赴任し現在に至る。整形外科専門医。専門分野は小児整形外科。

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ライター紹介

飯田友美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

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