おんぶに抱っこ、炊事に洗濯、買い物をこなしていくなかで、腰への負担は計り知れません。「子育てを始めてから、腰痛持ちになった」というママパパは多いのではないでしょうか。そこで、産後の腰痛に悩む女性への施術も多く行っている「北柏のぞみ整体院」の院長・氏原大貴さんに、子育て中に起こる腰痛の原因と対処法についてお話を聞きました。
意識的に脱力する「猫背」のすすめ
ママが子育て中に感じる腰痛の多くは、妊娠中の姿勢を出産後も引き継いでいることが原因なのだそう。
「妊娠中は、おなか側の重さと釣り合いをとるために、やむなく後ろに反った腰に負担のかかる姿勢をとりがち。出産後もこの姿勢が癖になっているなか、さらにお子さんを抱っこするなどの負荷がかかって腰を悪くするケースが多いようですね」
腰に負担がかかる姿勢とは
「腰に負担がかかる姿勢」とは、以下の写真のような姿勢です。必要以上に胸を張った結果、腰に負担がかかっていることがわかります。

「体に一本の線が通ったように、胸はしっかり張って…といった、筋肉に緊張を強いる姿勢が、よく言われるところの『良い姿勢』ですよね。ですが、実はこれは腰に負担をかけている姿勢でもあります」
「妊娠や出産を経験した女性は、体型の崩れをカバーしようとたり、少しでも良く見せようと『良い姿勢』を無理してでも保とうとします。これが、トラブルのもとなんです」
体への負担が少ない姿勢とは
では、普段からどんな姿勢を意識すればよいのでしょうか?
「腰、体のためにもっと楽をするべく、猫背気味の姿勢でいいんですよ。『無理に猫背にするべき』という話ではなく、もっと楽な姿勢で良いということです」

「座るにしろ立つにしろ、筋力でなく骨で支えるのが体に一番負担が少ない、つまり楽な姿勢なのです。直立した状態を例にとると、横から見た場合に『くるぶし、腰、首』の3点が垂直線上に並んだ状態が理想です」
「ですが、『良い姿勢』をイメージすると、そこからさらに胸を張り、後ろに反った腰に負担のかかる姿勢をとってしまいます。ポイントとなる3点が垂直線状に並んでいるなら、そこから脱力するべきです」
意識的に背筋を伸ばすのではなく、意識的に脱力していいとは…。目からウロコのお話ですね。ちなみに、これは男性の腰痛でも同じく言えること。胸を張った姿勢を無理に続けることで腰痛になる人も多いようです。
子どもを持ち上げるときはなるべく体の近くで
育児中では、とっさに持ち上げる動作をとることが非常に多く、腰痛やぎっくり腰の原因になりがちです。通常、重いものを持ち上げる時は、自分の体を近づけて全体で持ち上げますが、育児中となると腕先だけで持ってしまうことも。
たとえば、ベビーベッドで泣き出した赤ちゃんを抱こうと、つい離れた位置から腕だけを伸ばして持ち上げてしまう。そんな不意の動作が腰痛を招くようです。
「赤ちゃんや子どもを抱っこするときに限りません。育児は普段から腰に負担をかけていますので、不意の無理な動作、さらなる負荷には体が対応しきれません。何か持ち上げる、抱えるといった動作をするときは『自分はこれから重いものを持つのだ』と意識し、なるべく自分の体に近いところで行うようにしましょう」
腰の痛みを和らげる「ふくらはぎ」のマッサージ
腰の痛みを感じ始めた時に効果的なのが「ふくらはぎ」のマッサージなのだそう。腰の痛みと、ふくらはぎ。一見関係ないように思えますが、ふくらはぎの筋膜の歪みが腰痛の原因になっていることもあるため、患部である腰に直接の刺激を与えることのない、ふくらはぎのマッサージは効果的なのだとか。

ふくらはぎマッサージのやり方
- 脚を組んだ状態を作る
- 上にある足のふくらはぎを、下にある足の膝にあててグリグリとマッサージ
- 足を組み替えつつ2の動作を繰り返す
腰の痛みが和らいできたと感じたらやめどきです。一度に欲張って長時間やるのは逆効果とのこと。
また、このマッサージで痛みが緩和するか否かは、急ぎで病院に行く必要があるかどうかの目安にもなるそうです。
では、簡単なマッサージでは痛みが取れないような本格的な腰痛になってしまった時にはどうすればいいのでしょう?
「ぎっくり腰や腰の痛みと同時に足のしびれを感じるようであれば、個人でできることはほとんどありません。すぐに信頼できる専門施設や整形外科で対処してもらいましょう。瞬間的な痛みを取ってくれるだけでなく、普段の姿勢についても適切なアドバイスを受けらえるかどうか、これも通院先を選ぶ目安にしてくださいね」
楽な姿勢で力を抜いて、子育てを楽しみたいですね。