子どもが膝や足の痛みを訴える「成長痛」は、小学校高学年から中学生くらいの子どもに起こるイメージですが、実は幼児でも痛みを訴える場合があるようです。そこで今回は、「成長痛は何歳からあるのか」「親にできる対処法はあるか」など、日本整形外科学会専門医で原田リハビリ整形外科の院長を務める原田英男さんに詳しく聞きました。
成長痛ってそもそも病名?

成長期に原因不明の足の痛みを訴える成長痛。ネットなどでは「成長痛は存在しない」という意見もありますが実際はどうなんでしょうか。
「成長痛という呼称を病名として用いるのは不適切とする意見はありますが、日本整形外科学会では、他に適切な病名がないので、そのように呼称しています。そうした意味で、『成長痛はない』と言う方がいるのかもしれません。ですが、日本だけではなく、世界の整形外科学会でも、成長期に表れる原因不明の足の痛みが存在することははっきりと認められています」
病名としての扱い方では意見が分かれるようですが、医学的に見ても「成長痛」は存在するようです。
成長痛と骨の成長は無関係

では、成長痛とは一体どういったものでしょうか。
「3歳〜12歳頃までの子どもが、夕方から夜間にかけて足の痛みを訴える病態で、しばらくすると自然に痛みが治まり、翌朝には何事もなかったようにケロッとしている場合が多いです。」
原因は何でしょうか。
「現在のところ、原因はわかっていません。骨の成長による痛みだという意見もあるようですが、生物学的に骨の成長に伴う痛みは存在しませんし、身長の伸びが旺盛な時期に生じるわけでもないので、今は様々な推論を検証しているのが実情です」
なりやすい年齢は何歳ごろからでしょうか。
「成長痛がもっとも多いのは4歳〜6歳で、13歳頃になると成長痛による症状はほとんど見られなくなります」
小学校高学年から中学生くらいの子どもに多い印象ですが、実際はもっと小さい年齢なんですね。
「スポーツなど運動のしすぎで足が痛くなることを成長痛と呼んでいる人がいます。ですが、これは成長期に起こる“使いすぎ症候群”で、成長痛ではありません。骨や筋肉が未熟な成長期には使いすぎ症候群になりやすいため、混同されがちなのだと思います」
ケガや病気との見分け方
では、子どもが足を痛がっていた場合に、成長痛なのか、ほかのケガや病気の可能性があるのかを見分けるにはどうしたらよいのでしょうか?
成長痛の主な特徴は下記です。
・夕方から夜間にかけて、足(特に膝周辺)の痛みを訴える
・痛みの程度はさまざま。泣くほど痛がることもあれば、そこまで痛がらないこともある
・痛みが続くのは、一般的には30分〜1時間程度が多い
・翌朝には痛みを訴えない
・不定期に繰り返し起こる
・特に生活に支障がない
上記の症状に加えて、痛みを訴えている場所に腫れや赤み、熱を持つなどの症状が見られなければ、成長痛と考えてよさそうです。
病院を受診すると、レントゲンや超音波、血液検査などを行う場合もありますが、そこでも異常が認められなければ、やはり成長痛と診断されるよう。
成長痛の場合は、しばらくすると痛みを訴えることはなくなるので、心配はいらないと原田先生。
「ただし、翌朝になっても痛がっていたり、足を引きずっているなどの症状が見られた場合、痛みが8時間以上続く場合や14歳を越える子どもが痛がっている場合は、ケガやほかの病気が考えられます。そのときは、きちんと病院で診てもらってください」
痛みの緩和にはスキンシップが効果的

しばらく経てば自然と痛みがなくなるという成長痛。とはいえ、子どもが痛がっていたら、親としてはなんとかしてあげたいですよね。痛みを和らげる方法はないのでしょうか。
「残念ですが、特別な方法はありません。ただ、クリニックで患者さんの話を聞いていると、抱っこしてあげたり、痛がっているところをさすってあげたりすると、痛みが緩和されるケースが多いようです。痛いと子どもは不安でしょうから、安心させる意味でもスキンシップは効果的かもしれません」
子どもが成長痛で痛がっているときは、寄り添ってあげるだけでも気が紛れるかもしれませんね。
「また、保冷剤で冷やしたり、ストレッチを行うことも良いとされています。ただ、これらの方法はすべての子どもに効果があるわけではなく、有効と証明されているものではないことはご理解いただきたいです」
医学的に解明されていない点も多いですが、たしかに存在するという「成長痛」。翌朝にケロッとしているようならあまり心配しすぎず、寄り添いながら様子を見てあげたいですね。