「シラミ」なんて終戦直後の不衛生だった時代の話でしょ? と思いがちですが、実は子どもたちの頭にシラミが再流行しているんだそうです。そこで「わかばひふ科クリニック」院長の野崎誠先生に、シラミの流行傾向や駆除方法などを伺いました。
毎日洗髪していてもシラミは感染する!
感染すると頭皮から血を吸って、かゆみや湿疹を引きおこすシラミ。
先日、東京在住の知人から「子どもの頭にシラミがいて、家族にも感染して大変だった」というショッキングな話を聞きました。シラミの存在を教科書でしか知らないというママも多いと思いますが、近年、全国の幼稚園や小学校でシラミが流行しているそうです。
実際、シラミに感染しやすい生活習慣、季節など感染の傾向はあるのでしょうか? 虫なので、湿度の高い時期に増えそうなイメージですが。
「頭に寄生するのは『アタマジラミ』と呼ばれる種類で、直接感染、つまり頭髪同士の接触により感染します。清潔さや栄養状態はまったく関係ありません。栄養状態や衛生環境がシラミの流行に関係したのは戦後すぐの時代だけで、今は誰でも感染します。欧米では学童の5%〜10%に感染していると言われていますが、日本でも幼児から小学生にかけて多いですね。」
「シラミは、季節とはあまり関係がなく、年間を通じて感染が見られます。当院を受診されるのは月1人程度ですが、秋から冬にかけては少し多くなります。おそらく夏に感染したシラミが秋になってかゆみを生じさせているせいでしょうね。夏はタオルを共有したり、合宿やキャンプなど子どもたちが一緒に過ごして接触する機会が多く、感染しやすいのでしょう。」
子どもはよく頭を寄せ合って遊びますよね。その時に成虫がピョン! と飛び移るんだとか。シラミは卵から1週間でふ化して吸血を始め、2週間〜3週間で成虫になり、成虫の間(1カ月程度)に100個〜200個の卵を産むのだとか…ゾッとしますね。
シラミは早期発見・早期駆除が一番
シラミに感染しないための予防策はありますか? 毎日の洗髪では予防にならないんですよね?
「洗髪=シラミ予防にはなりませんが、もちろん頭髪は清潔にしておいた方がいいです。予防策は、誰かに付いているシラミを早く見つけて駆除すること。シラミは弱い虫なので、髪に寄生していないとすぐに死んでしまいます。つまり周囲の環境にはいない生物なんですね。ですから早期に発見して駆除する、今のところそれしかありません。」
しかしシラミかどうかを見分けるのは難しそう。シラミと判断するポイントはどこですか? かゆみ?
「シラミによるかゆみが出るのは、感染してから数週間後と言われています。だからその間にどんどん他の子に感染してしまうんですよね。また成虫は素早く動くので発見が難しいです。」
「一番わかりやすいのはシラミの卵です。髪の毛の一部にくっつくようにキラキラ光る透明な粒を見つけた場合は、シラミの卵だと考える必要があります。ちょうど蝶のサナギが木の枝に付くように髪の毛に付着していますよ。
シラミの卵が最も多く見えるのは、後頭部から側頭部。髪の毛の長い子ほど感染しやすいので髪の毛をかき分けて探しましょう。」
「するなら皮膚科専門医がベストです。肉眼でははっきりしない卵も、顕微鏡やダーモスコープという拡大鏡を使うことで簡単に確認できますよ。」
シラミの成虫は体長2mm〜4mm、卵にいたっては0.5mm〜1mm程度と極小サイズ。もしも子どもの頭に光るものを見つけたら、シラミを疑った方がいいかも。季節にかかわらず、子どもの頭をこまめにチェックすることも大切ですね。
子どもの頭にシラミ発見! どうする?
いよいよ子どもの頭にシラミを見つけてしまったら、どうやって駆除すればよいのでしょうか? 普通のシャンプーでゴシゴシこすってもシラミはとれないんですか? それとも教科書で見た写真のように、白い粉(DDT=殺虫剤)を頭に振りまいたり、丸坊主にしなければいけないとか!?
「現在の日本ではDDTは使われていませんし、成虫も卵も、普通のシャンプーで洗うぐらいではとれません。」
「対処法は、成虫と卵でそれぞれ異なります。成虫にはスミスリンという駆虫剤のシャンプーが市販されていますので、薬局で購入して使用するとよいでしょう。成虫がいた場合、その数にもよりますが、スミスリンを使い始めて早ければ5〜10日ぐらいで駆除できます。もちろん髪の毛をすべて取り除く=丸坊主にするのも、シラミには簡単で有効な方法です。」
「卵の場合は、付着している髪の毛を見つけたら根本から切って捨ててください。卵の中に虫が残っているかどうかは判断できないので、髪の毛を一房一房かきわけ卵を見つけて取り除く必要があります。一度すべての卵を取り除いた後に新たな卵が見つかれば、頭に成虫が残っているという判断ができます。その場合にはスミスリンで駆除しましょう。ただしスミスリンに抵抗力を持っている成虫もいるので、卵の段階で駆除することはとても重要です。」
シラミは頭を離れてしまえば、長くても2日〜3日程度しか生きられないので、切った髪を捨ててしまえば大丈夫。また、目の細かいシラミ駆除用のクシも販売されているので、そちらも活用するといいですね。
シラミが流行しないための対策は?
そのほかシラミを完全撃退するために気をつけるべきことはありますか?
「非常に高い確率で兄弟姉妹、母親にも感染しますので、1人でもシラミに感染している人がいた場合は、家族全員でシラミのチェックをする必要があります。」
「そして家族間でも、タオルや寝具は共有しないこと。タオルや寝具に付いたシラミが気になる時は熱湯に浸けた後に洗剤で洗いましょう。床も落ちたシラミはあまり長くは生きられませんが、念のため掃除機をまめにかけるといいですね。」
「また、学校や保育園、幼稚園などへの報告の義務はありません。学校を休む必要はありませんし、プールは髪の毛を隠せば問題ありません。しかし感染の拡大を防ぐという観点から、学校や習い事(特に運動系)の先生には連絡をしたほうがベターです。」
余談ですが、野崎先生いわく「しらみつぶし」という言葉はここから来ているんだそう。シラミは、虫嫌いのママたちにとっては大きな試練ですが、まさしく「しらみつぶし」に駆除するほか道はありません。根気強くがんばりましょう!