いつの間にか、おへそにたまる正体不明の「へそのゴマ」。子どものおへそにこれを見つけて、取るべきか、取らないべきかを悩む親もいるのでは? そもそも、へそのゴマが何かを知らない人も多いはず。そこで、「へそのゴマ」の正体や対処法について、小児外科医に聞きました。
子どもの「でべそ」は病気なの? 原因・基礎知識・治し方も紹介「へそのゴマ」の正体は何?

誰が言い出したのかわかりませんが、「へそのゴマ」とはいったい何でしょうか?
「へそのゴマは、おへそに落ち込んださまざまな汚れが固まったものです」
そう話すのは、小児外科を専門とする奥山宏臣医師。
「汚れの内容は、本人の垢や皮脂などが中心。ほかにも、小さなホコリや、お腹に当たっていた服の繊維が落ち込んでいることもあります」
へそのゴマがある場合、身体にはどんな影響を及ぼすのでしょうか。
「へそのゴマはいろいろな汚れの塊ですから、その中には多数の細菌が存在しています。ですが、単にへそのゴマがあるだけなら、それが原因で病気になることはないと思います」
「おへそにトラブルが起こらない限り、その細菌が体内に入ったり感染症を引き起こしたりすることは、まずないと言っていいでしょう」
では、へそのゴマ自体が原因になって、おへそにトラブルが起こることはあるのでしょうか?
「そういうケースも、ほとんど考えられません」
なるほど。とりあえず、へそのゴマを過度に気にする必要はなさそうですね。
「へそのゴマ」は取った方がいい?

へそのゴマは汚れやゴミの塊。病気や不調の原因にはなりにくいといっても、「不潔に感じる」と思う人も少なくないはず。
清潔を保つという意味でも、へそのゴマは取った方がいいのでしょうか?
「いいえ。気になるのはわかりますが、私は放置しておく方がいいと思います。少なくとも、積極的に取る必要はありません」
どうしてでしょうか?
「へそのゴマそのものより、それを取ろうとしておへそをいじることの方が、健康上のトラブルにつながりやすいからです」
「おへその汚れは、取りにくいからこそ『へそのゴマ』になるわけです。無理に取ろうとしてこすったりすると、おへその中や周囲の皮膚が傷ついてしまうかもしれません」
「場合によっては、おへそにできた傷に細菌感染が起こり、炎症、化膿などにつながる危険があります」
そういえば、昔から「おへそを触るとお腹が痛くなる」と言われることもありますね。
「それは、『おへそのいじりすぎは感染につながり、危険である』ということを知恵として伝えてきた言葉なのではないでしょうか」
「おへそを閉じている組織(瘢痕組織:はんこんそしき)の下は、臓器を包んでいる膜(腹膜)に直結しています。ですので、おへその傷からの感染は、ひどいときにはお腹の中にまで影響を及ぼすことがあるのです」
お腹は、腹壁、腹筋、脂肪、腹膜という層構造で守られています。ところが、おへそのところだけは脂肪や筋肉がなく、「守りが薄い」状態なのだそうです。
つまり、おへそは弱点なのですね。むやみに触ったり刺激したりするのは、避けた方がよさそうですね。
安全な「おへそのケア」方法

とはいえ、汚いのをどうしても見られたくなかったり、掃除したいときには、どうしたらいいのでしょうか?
「おへそにオリーブオイルやベビーオイルなどを入れてから掃除する方法が有効です。オイルを入れて20分ほど置いておくと、汚れがやわらかくなって浮いてくるので、そっと拭き取ってあげてください」
「拭き取るときは、おへそや周囲の皮膚を刺激しないよう、綿棒やガーゼなどを使うことをおすすめします」
ケアそのものは意外に簡単そうです。
「ただ、無理に行わないでください。おへその掃除を喜ぶ子も、オイルを入れた状態でじっとしていてくれる子も、あまり多くはないでしょう。手術前に子どものおへそをケアするときは、麻酔がかかってからするくらいです」
掃除をしている最中に動いてしまって、おへそを傷つけてしまっては大変ですね。
「そうですね。繰り返しになりますが、へそのゴマを取る必要性はあまりないのです。どうしても行う場合、子どもが眠っているときを見計らうなど、タイミングを工夫してください」
へそのゴマは、基本的には放っておくべきもの。きれい好きなママパパは、お掃除したくてうずうずするかもしれませんが、子ども自身が気にしていなければ、そっとしておくのがベターなようです。