産前産後のママの体は変化の連続。ホルモンバランスの乱れ、骨盤の歪み、授乳中の貧血などから起きる様々な体調不良…。ある程度は仕方がないと思っていても、そんな不調が産後1年経っても続くと不安になりますよね。そこで、産後ケアの専門家にママのセルフケアについてアドバイスをもらいました。
「血流の悪さ」と「免疫力の低下」が体調不良を招く

出産後、6〜8週間かけてママの身体は妊娠前の状態に戻ろうとし、子宮が収縮する時に「後陣痛」が起きたり、「悪露」が出たりします。この時期を「産後の肥立ち」期間と呼び、この期間を安静に過ごすか否かで、その後の体調に大きな影響を及ぼします。
しかし、産後の肥立ち期間を安静に過ごしたのにもかかわらず、産後1年が経っても体調不良が続く人も多いといいます。
「産後1年以上続く体調不良は主に、『血流の悪さから起こる症状』と『免疫力低下から起こる症状』の大きくは2つに分けられます」と言うのは、産後ケアのボディケア&フィットネス教室などを全国で展開するNPO法人マドレボニータ代表の吉岡マコさん。
「産後の肥立ち期には安静に過ごすことが大切なのですが、その期間は運動量が減少するため、筋肉が落ちてしまうんです。筋肉が落ちると血流も悪くなります。その状態で育児に突入してしまうため、身体が強ばった状態が続き、肩こり、腰痛、倦怠感、慢性疲労などの症状が出たりします。」
赤ちゃんとの生活の中では運動する時間がなかなか取れず、筋肉が回復しないまま産後1年が経ち、上記のような症状が続くというわけですね。
睡眠不足を放ってくと危険信号に
「さらに、夜中の授乳やオムツ替えによってママは慢性的な睡眠不足に陥りがち。睡眠のリズムが崩れると自律神経が乱れ、免疫力も低下します。免疫力が低下すると風邪を引きやすくなったり、炎症を起こしやすくなったりするんです。」
一般的に、赤ちゃんの睡眠リズムが安定するのは生後4カ月を過ぎたころ。しかし、4カ月の間にママの睡眠リズムはすっかり乱れてしまい、疲労感から赤ちゃんと一緒にお昼寝するなどの不規則な生活が続くと、産後1年が経ってもママの自律神経は乱れたままということに。
自律神経が乱れていると、吐き気をはじめ多汗、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、不整脈、めまい、不眠などの症状があらわれやすくなります。
「こうした数々のダメージを起こしやすい時期であるにもかかわらず、赤ちゃんのことにかかりきりで、自分のことは後回しにしてしまいがちなのが産後。自分の身体にもしっかり目を向け、適切なリハビリに取り組むことが必要です」と吉岡さん。
そこで、吉岡さんに家でも簡単にできるエクササイズを教えてもらいました。
産後のママの「だるおも」を改善するエクササイズ4選
■肩こり解消法
首から肩にかけての僧帽筋(そうぼうきん)をほぐし、血流を活発にします。

このセルフケアは肩甲骨(けんこうこつ:指をさしている位置)が動いていることを感じながら行うことが大切です。片方ずつゆっくり行ってください。


まず、体をまっすぐ保ちましょう。ひじを曲げ、肩の高さまで持ち上げます。そのままひじを前後に動かしてください。
ひじを後ろに引くと肩甲骨は背中の中央により、ひじを前に出すと肩甲骨は外側に移動します。

ひじを曲げたまま、ひじで円を描くように肩を回しましょう。肩甲骨がゴリゴリと動くのを感じるくらい大きく回してください。逆回しも同様に。
足を前後に開いて背筋を伸ばして立ちます。ひじを伸ばし、腕全体を縦方向に大きく勢いよく回してください。逆回し、反対の腕も同様に行ってください。

肩甲骨が動いていることを意識して行いましょう。首から肩、背中にかけての血流がよくなり、肩のラインもすっきりしてきます。
■自律神経を整える骨盤呼吸法
自律神経(交感神経=緊張、副交感神経=リラックス)のスイッチを切り替え、短時間でも質のよい睡眠がとれるように促します。

床や布団の上にあお向けになり、両ひざを立てます。肩の力は抜いてリラックスしましょう。

左手をみぞおちのあたりに、右手は指先が恥骨にふれるよう下腹部に置きます。鼻から息を吸い、お腹をふくらませながら骨盤をゆっくり恥骨の方向に傾けてください。腰が反り、床から浮き上がる動作と連動させて首も反らせ、あごを天井に向けます。このとき、首の後ろ側も床から浮き上がる格好になります。

吸った息を口から「スー」と少しずつ吐きながら、お腹がへこんでいく動きに合わせて、ゆっくり骨盤をみぞおちの方向に傾けていきましょう。腰が床につき、尾骨が浮き上がる動きに連動させて、首も後ろ側を伸ばし、あごを引いた状態にしていきます。
(2)と(3)を骨盤、背骨、頭がい骨の動作が呼吸と連動するように意識しながらくり返しましょう。就寝前の習慣にすると、寝つきがよくなり深い眠りが得られます。
■お腹と太ももの筋肉を鍛える抱っこスクワット
赤ちゃんを抱き上げる時、上半身の勢いや反動だけで持ち上げると、肩だけでなく、腰や膝の関節にもダイレクトに負担がかかり、腰痛・膝痛などのトラブルにつながることも。
抱き上げの動作をお腹と太ももの筋トレにすることで、関節痛を防ぎます。

骨盤を起こし、肩を下げます。

恥骨からみぞおちまでの下腹部のラインを床に対して垂直に保つようにしましょう。
続けることで、シェイプアップ効果も期待できます。
■骨盤を元の位置へ戻す正しい座り方
産後はお腹に力が入りにくいので、座っているときに骨盤が前か後ろに倒れてしまっている人が多くいます。正しい座り方をすることで、骨盤のずれが引き起こす腰痛を改善し、余分な脂肪を落とします。

骨盤が前に傾いていると、お腹の力が抜けて下腹部がぽっこり出てしまいます。さらに腰に反りが出来て腰痛を引き起こすこともあります。

逆に骨盤が後ろに傾いていると、背中は丸く猫背になります。お腹は恥骨からみぞおちまでの距離が短くなるので、行き場を失った脂肪がはみ出してぶよぶよの段々腹になってしまいます。

あぐらをかき、恥骨に手の指先を、下腹部に手のひらを当て、その部分が床に対して垂直になるように起こします。腹筋、背筋が常に使われ、恥骨とみぞおちの間が長くなるので、平らでスッキリしたお腹をつくることができます。
食事や授乳中など普段の生活の中でこの姿勢を心がけるだけで腹部や背筋の筋トレになります。
いかがでしたか? 少しの時間で簡単に試せるのでぜひ、今日から始めてみてください。赤ちゃんとの生活の中にも手軽に取り入れられる4つのエクササイズで、慢性的な「だるおも」を改善し、ハッピーな子育てライフを楽しみましょう。