「正座をすると足が短くなる、足の形が悪くなる、膝が悪くなる」など、悪いイメージを持っている人も多いのでは? ところが、専門家の先生によると科学的根拠はないそう。西新宿整形外科クリニックの医師・本間重行さんと、『朝30秒の正座で腰痛が治る』(ダイヤモンド社)の著者で、聖和整骨院の院長でもある金聖一さん、のお二方に聞いてみました。
『正座が足に悪影響』は科学的根拠なし

「現在のところ、正座によって足の形や長さに悪影響があるというエビデンス(科学的根拠)はありません。」と、本間さん。
ではなぜ、正座をすると足が短くなるといった風説が生まれたのでしょうか?
「生活様式が欧米化する前は、正座をする機会は今より多かったと考えられます。当時と現代で比べると、日本人の平均身長が明らかに高くなっているため、『正座のせい』という風説が流布したのかもしれません。しかし、平均身長が伸びた要因は、戦後に栄養状態が改善したことが最も大きいでしょう。特に、3歳〜4歳の栄養状態はその後の成人身長に大きな影響を与えます。ただし、身長や足の長さは、8割が遺伝的に決定しており、残りの2割が環境的要因です。」(本間さん)
日本人が正座をしなくなったタイミングと、平均身長が伸びたタイミングが偶然一致したということなんですね。
正座をすると足が痛むのは、身体のゆがみやねんざが原因
正座が足の長さに影響がないのは分かりましたが、年配の方の中には、正座をすると足が痛むという人も多いと思います。正座は、やはり膝などに負担をかけているのでしょうか。柔道整復師の金聖一さんに訊いてみました。
「正座と足の痛みは関係ありません。年を取ってきて、足が悪くなったり関節が固くなってくると、正座をしたときに痛いと感じるようになります。病院で『正座をすると膝が痛む』と相談すると『では、正座をしないでください』と言われるでしょう。そのため、「正座」=「足が痛くなる」という考えになったのではないでしょうか。」(金さん)
「正座で痛みを感じる人には、ねんざをしっかりと直さないまま放っておいたり、生活習慣によって身体がゆがんで、足の骨や関節が曲がったままで過ごしている人が多く見受けられます。普段は痛みがなくても、関節や骨が曲がったままなので、30秒でも正座をすると痛むのです。」(金さん)
正座で足に悪い影響はなく、ねんざなど怪我をしたらしっかりと直すとともに、正しい姿勢を保つなど、生活習慣の見直しが大切なのですね。
間違えた姿勢の正座は膝を痛める危険性も

金先生によると、間違った正座を続けていると身体がゆがむこともあるそうです。正しい正座とはどんなものなのでしょうか?
「長い時間正座をするなら、かかとを少し広げて座ってかまいません。足を少し重ね、ときどき左右の足を入れ替えます。よくないのは、足が重ならないくらいかかとを広げてしまうこと。足をねじ曲げている状態になり、膝を痛めます。腰が沈むので、姿勢も悪くなります。ただし、『足が痺れる』というのは正常。足の甲には太い血管が通っているので、圧迫されれば痺れます。」(金さん)
また、金さんが著書などで推奨している「かかとを揃える正座」を毎朝30秒行うことは、さらによい影響があるのだとか。
「私が推奨している正座は、かかとをぴったりと付ける座り方。つま先が1センチほど離れるといいのですが、くっついていてもいいでしょう。30秒が目安です。かかとを揃える正座をすると、足がまっすぐにリセットされます。そして、身体の交感神経を高め、血流が促進されます。下半身に圧がかかって血流が悪くなることで、身体が血を流そうと働き始めるのです。」(金さん)
目覚めの悪い子どもなどは、朝正座をすると目覚めがよくなるそうです。
最近は、和室がない家庭も増えてきて、子どもたちが正座をする機会も減ってきています。しかし、正座は書道や茶法の他、柔道・剣道など日本文化に欠かせないもの。日本人の礼儀作法を学ぶきっかけにも繋がります。正座を通し、心身ともにまっすぐゆがみのない身体で成長して欲しいものですね。