子どもに「背が高くなって欲しい」と思うパパやママは多いのでは? 見た目はもちろんのこと、スポーツなどで有利になる場合もありそうです。昔から「寝る子は育つ」と言われますが、科学的根拠はあるのでしょうか? 西新宿整形外科クリニックの医師、本間重行さんにお伺いしました。
睡眠中の「成長ホルモン」の分泌が大事

子どもの身長を伸ばすために、どのようなことが大切なのでしょうか。
「まず、身長や足の長さは8割が遺伝的、つまり生まれつき決定しています。残りの2割は栄養状態や睡眠、運動などが関係します。乳幼児期は栄養状態が特に重要ですが、小学校高学年から中学生くらいの前思春期は成長ホルモン、中学・高校くらいの思春期は性ステロイドホルモン(男性ホルモンや女性ホルモン)が大きく関わってきます。」
「ホルモン」が大きく関係しているのですね。「寝る子は育つ」と言いますが、たくさん寝ることで促進されるのでしょうか?
「子どもの身長を伸ばす上で重要な役割を果たす『成長ホルモン』は、子どもの骨の両端にある軟骨組織に働きかけ、骨を伸ばす作用があります。分泌されるのは一日を通して一定ではなく、睡眠中がもっとも多くなります。」
「眠りには深いノンレム睡眠と、浅いレム睡眠があり、交互に繰り返していることはご存じかと思いますが、特にノンレム睡眠の時に成長ホルモンの分泌が活発になると言われています。睡眠が足りないと、ぐっすり眠れず成長ホルモンが十分に分泌されないため、身長の伸びに悪影響があるのです。」
やはり「寝る子は育つ」は本当だったのですね! 成長ホルモンの分泌を活発にするためには、深い眠りをしっかり取ることが大切ということ。では、成長ホルモンが影響するのは何歳くらいまでですか?
「成長ホルモンが大きな影響を与えるのは思春期の前くらいまでです。個人差はありますが、思春期が始まるのは平均で男子が11歳6カ月、女子が9歳9カ月。これくらいの年齢までの睡眠時間が大切ということです」
睡眠時間が確保できれば、早寝早起きは必要ない!?

成長ホルモンがしっかり分泌されるためにはどれくらいの睡眠時間を確保すればいいのでしょうか。
「小学生では8時間以上、中学生以上では7時間以上が目安と考えていいと思います。実は、しっかりと寝られれば時間帯はあまり関係ありません。」
「午後10時から午前2時までに成長ホルモンが分泌されるから、その時間に寝ていないとダメ」という説をよく聞きますが…。
「成長ホルモンは、時間によって分泌されるものではありません。昼間でも深い睡眠が取れれば、十分に分泌されることがわかっています。成長ホルモンの分泌に関しては、早寝早起きがよい、夜更かしが悪い、とは一概には言えないのです。それよりも、十分な睡眠時間で良質な眠りが得られるようにすることが大切ですね。」
夜更かしが悪いわけではなく、夜更かしによって睡眠時間が削られたり、良質な眠りが得られないことが問題だったのですね。とはいえ、毎日学校へ通ってしっかりと勉強に励むためには、早寝早起きの生活習慣がベストと言えそうです。
良質な睡眠を得るために心がけたいポイントは?

では、しっかりと深く眠るためにはどうしたら良いのでしょうか? 深い良質な睡眠を取るためのさまざまなコツを教えてもらいました。
睡眠環境を整える
布団やマットレスが固すぎたり柔らかすぎると、深く眠ることができません。適切な姿勢で、自然に寝返りのできる寝具を用意してあげましょう。また、子どもは汗っかきですから、快適に過ごせるように汗を吸収しやすいパジャマで、こまめに洗濯をしてあげましょう。
生活リズムを整える
朝の光を浴びて日中を活動的に過ごし、夜は同じ時間に眠るようにすると、寝付きがよくなりぐっすりと眠れます。
夕食は就寝の2時間前まで
寝ている間は消化機能の能力が低下します。寝る直前に食事を摂ると、食べ物が消化しきれず、眠りが浅くなります。深く眠れない原因になるのです。
就寝前に入浴する
人は眠りに就く際、身体の深部体温が下がります。その下がり方が急速であるほど深い眠りに就くことができるため、寝る15分〜30分前に温めのお風呂にゆっくりつかり、身体を芯から温めておくとよいのです。
寝る前にテレビやスマホを見ない
夜になると眠くなるのは「メラトニン」というホルモンのせい。メラトニンは朝に明るい光を目にしてから14時間〜16時間ほど経つと分泌されるという特徴がありますが、周囲が暗くならないと分泌されません。寝る直前に明るい部屋で過ごしたり、テレビやスマホの明るい画面を見るとメラトニンの分泌を妨げてしまいます。寝る前はテレビやスマホを見ずに、照明を落とした部屋で過ごすようにしましょう。
昔から言われている「寝る子は育つ」は本当だったのですね。そのためには、子どもを上手に睡眠へ誘導してあげることがポイントのよう。特に成長ホルモンが身長に大きく影響する中学生くらいまでは、しっかり眠れるように親がサポートしてあげましょう。