泣いている赤ちゃんを抱っこすると「抱き癖がつくから、抱っこしないほうがいいよ」と言われたことはありませんか?でも、そもそも抱き癖とは何でしょうか?抱き癖はつけないほうが良いのでしょうか?泣いても抱っこしないほうがいいの?専門家に聞きました。
「育児が大変になるかも」の恐れが抱っこを躊躇させた!?

「抱き癖とは、『抱っこを繰り返すことで、抱っこするとすんなり赤ちゃんが泣き止むようになること』です。でもそれは、決して悪いことではないのです。」
そう話すのは、小児科専門医であり、四国こどもとおとなの医療センターで児童心療内科医長を務める牛田美幸さん。
それでは、なぜ「抱き癖がつくのは悪いこと」「抱っこするのはよくない」と言われ始めたのでしょうか?
「赤ちゃんの不安にこまめに応えていると、『癖になるんじゃないか』『ずっと抱っこしていないといけなくなるんじゃないか』『今後の育児が大変になるんじゃないか』と思われたのではないでしょうか。」
「また、50年ほど前に流行したアメリカの育児書、『スポック博士の育児書』の影響もあったかもしれません。そこには『泣いたからといってすぐに抱っこはしない』『添い寝はしない』などと書かれていました。」
「でも最近は、積極的に抱っこすることが勧められるようになってきています。その方が、むしろ自立を早めるとさえ言われるようになってきました。昔と今では、専門家の方の考え方もずいぶん変わってきていますね。」
抱っこで子どもの自立がスムーズに

泣き出した赤ちゃんは、抱っこをしたほうがいいのでしょうか?
「そうですね。赤ちゃんはおなかがすいたこと以外に、寂しい、不安ということでも泣きます。寂しい、不安なときは、やはり赤ちゃんはママに抱っこしてほしい。抱っこすると赤ちゃんは安心します。抱っこで安心する経験を繰り返して、ママは赤ちゃんの『心の安全基地』になっていくのです。赤ちゃんは安全基地を持つことで、外の世界に挑戦できるようになっていきます。それが自立につながっていくのです。」
不安を受け止めてくれる場所があるという安心感がベースにあってこそ、子どもは好奇心のまま、いろんなことにチャレンジしていけるのだとか。そしてそのチャレンジこそが自立心のあらわれ。抱っこはそのベースを作ってくれるのです。
抱っこでママの子育てもスムーズに
さらに、泣いている赤ちゃんを抱っこすることは、ママの子育てもスムーズにすると牛田さんは話します。
「赤ちゃんが泣き出したとき、すぐに抱っこした場合と、すぐに抱っこしなかった場合で、泣き止むまでの時間が違うというデータもあります。すぐに抱っこした赤ちゃんのほうが泣き止むまでの時間が短いのです。」
確かに、なかなか泣き止んでくれないよりも、早く泣き止んでくれたほうが子育てはスムーズ!
また、抱っこは子どもがストレスに耐える力を持つことにもつながっていくそうです。
「子どもの心が安定していると、ちょっとしたことで泣いたり怒ったりすることが減っていきます。そして、大変なことや地味な作業をくじけずにやっていく力も培われます。我慢強い子に育ちやすいと思います。」
ほかにも、抱っこで生まれた安心感がコミュニケーションの土台になり、親の言うことを聞き入れやすくもなるのだとか。コミュニケーションがスムーズになることで、子育てを楽しむ土台もできるのです。
抱っこの1番のコツはタイミング

最後に牛田さんは、抱っこのコツも教えてくれました。
「抱っこの1番のコツはタイミングです。赤ちゃんがママを求めているタイミングで、しっかり応えてあげてください。赤ちゃんの気持ちを感じるようにすればうまくいくでしょう。」
そして、首のすわった赤ちゃんは縦抱きが良いそう。赤ちゃんの胸とママの胸が密着することで、赤ちゃんが安心します。
「縦抱きは呼吸も楽にできて、視界も広くなりますよ。」
赤ちゃんの自立を促し、親と子のコミュニケーションの土台も作る抱っこ。泣いているときは、躊躇せずにどんどん抱っこしてあげたいですね。