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子どもの便秘が増加中?原因と対策は?

掲載日: 2016年4月12日更新日: 2017年5月16日宇佐見明日香

昨年、横浜の病院が市内の約6,000人の幼児・児童を対象に行った排便に関する調査によると、対象者の20%が治療を必要とする慢性的な便秘症に分類されたそう。子どもの便秘の原因は何なのでしょうか。専門家に伺いました。

1カ月続いていたら危険!子どもの便秘の主な症状

今回、お話をうかがったのは、東京都立小児総合医療センター消化器科の村越孝次先生。先生の元を訪れる患者さんの3分の1も便秘を理由とした受診だと言います。

「以下のような症状が1カ月以上続いていれば、消化器科の受診・治療が必要です」と村越先生は言います。

  • 1週間に2回以下の排便
  • 排便時に痛みをともなう、または肛門が切れて血が出る
  • コロコロ便や軟便が少しずつ日に何回も出る
  • トイレが詰まるくらいの大きなうんちをする

「下痢と勘違いしやすいのが便失禁です。便のかたまりが肛門を塞いでいるために、水っぽい便が脇漏れしてくるのが便失禁。かなり深刻な便秘症状になります。ご家庭で見分けるのは難しいので、小児科を受診しても1カ月以上症状が続くようなら消化器科を受診しましょう。」

子どもが便秘を重症化させやすい理由のひとつは、「子どもは大人と違って、嫌なことはしないから」と村越先生。

「うんちをするとき肛門が痛い。トイレに座ってうんちができないと怒られる。学校で個室のトイレに行くのが恥ずかしい。こういった排便にまつわる痛み、怖さ、恥ずかしさなど嫌なこと避けようと、うんちを我慢してしまうことが便秘につながっています。」

便意を我慢するとどんどん悪化し、深刻な健康被害も…!

2日〜3日に一度、鹿のフンのようなコロコロしたうんちをするのですが…と、我が娘(5歳)の排便状況を説明すると、村越先生は「それは立派な便秘ですね」と即答。

「本来であれば、直腸に便が溜ると便意が生じます。しかし、様々な原因・理由によって便意がおこりにくかったり、便意を我慢してしまったりすると、直腸が広がって便をどんどんため込んでしまいます。そして、腸にとどまり続ける便は、腸に水分を吸収されて硬くなり、ますます出づらくなってしまう。一過性と軽く見て便秘を放置しておくと、この二重の悪循環によって、あっという間に慢性的な便秘症になってしまうのです。」

悪循環を繰り返し、便秘症をほっておくとどうなるのでしょう?

「巨大結腸症といって腸が異常に膨らんでしまったり、便失禁といって肛門付近を便の大きな塊が常にふさいでいることで、液状の腸内容物がわき漏れしてしまう、うんちのおもらしが続く状態になることもあります。」


便秘症の子どもの傾向となりやすい時期

では、便秘になる原因は何なのでしょうか。前述の排便調査によって、慢性的な便秘症と分類された子どもたちには、以下のような特徴がありました。

  • 肥満傾向が高い
  • 脂質の摂取量が多く、食物繊維摂取量が少ない
  • ショ糖、ジュース、アイスクリームの摂取量が多く、野菜、果物、水分の摂取量が少ない
  • 19時以降の夕食、21時過ぎの就寝
  • 間食時間が決まっていない
  • 排便時間が午前中ではない、または決まっていない

「子どもの便秘症は、親の子どもに対するしつけ(子育ての考え方)と生活スタイルに寄るところが大きいと個人的には思います。『好き嫌いなく食べなさい』『ジュースではなくお水を飲みなさい』『子どもはもう寝る時間です』。言い方や誘導の仕方は違っても、こういう昔からのしつけを貫けない、またはそういう時間の取れない親御さんが増えたことが、子どもの便秘症の要因のひとつではないでしょうか。」

また、村越先生によれば便秘を発症しやすい時期やきっかけとして多いものには、以下の3つがあげられるそう。

便秘を重症化しやすい3大要因

  1. 母乳から人工乳への移行、あるいは離乳食の開始
  2. トイレトレーニング開始
  3. 通園・通学の開始や園内・学内での排泄の回避

「1」は水分や食物繊維量が不足することが直接の原因ですが、「2」「3」は子どもの精神面が大きく作用するようです。

「特にトイレトレーニングを始めたばかりの幼い子にとっては、トイレが怖かったり、恥ずかしかったりすることが、便秘症への第一歩。人に限らず動物も、安心空間でしか排便できません。カーテンに隠れたり、部屋の隅で踏ん張ったりして、おむつやパンツの中にしかうんちをしようとしないのは、そこがお子さんの安心空間だからです。」

「そんな時は、無理にトイレへ連れて行こうとせず、急かさず気長に待ち、自発的にトイレに座ったり、そのまま排便に成功したりしたら精一杯褒めましょう。便意は怒られるよりも、褒められた方が素直に働くものです。」

また、不安な時、悲しい時も便秘になりやすいと村越先生。

「通園・通学の開始、弟や妹が生まれるなど、環境の変化によっても腸の動きは鈍ります。繊細な子どもの心に寄り添うことで便秘を回避したいですね。」


うちの子のうんちを学ぼう!

便秘にならないために、積極的に食べた方がいいもの、飲んだ方がいいものはあるのでしょうか?

「うんちをやわらかくする食材はあります。でも、それは人により千差万別なんです。プルーンが合う子もいれば、オリーブオイルが合う子もいる。柑橘類、ヨーグルト、乳酸菌飲料など、一般にいいといわれている食べ物や飲み物を取り入れてみて、その日に出るうんちの状態を見てみる。そうやって親御さんにはぜひ、自分の子どものうんちを学んで欲しいんです。」

何を食べると、どんなうんちが出るのかを日々チェックして、“うちの子のうんち学”を学ぶことが大切なのですね。食べているものは変わらないのに、うんちが出ない、便の硬さ違うのは、体や心の調子を崩している時かもしれません。

「私の患者さんには排便日誌をつけてもらうのですが、子どものうんちをよく観察することによって、今までにはない綿密なコミュニケーションがとれる、とおっしゃる親御さんも多いんです。」

4月は進学・進級など環境の変化により普段以上に便秘になりやすい時期。こ時期に排便日誌をつけるなどして、親子がともにうんちに関心を持ち、食習慣とともに朝型の生活を心がけて、ゆとりを持ってトイレに座る時間を確保するなど、生活習慣の見直しにも役立てたいですね。」

お話を聞いたのは…

  • 村越孝次さん

    東京都立小児総合医療センター/消化器科。消化器科の“じぃじ”と子どもたちから慕われる、小児外科出身のベテラン医師。一般診療ほか便秘専門外来(毎週月曜)を行い、直接メール(takatsugu_murakoshi@tmhp.jp)での相談も受付けている。『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン』協力者。

  • 東京都立小児総合医療センター

ライター紹介

宇佐見明日香

1979年8月生まれ、埼玉県出身。フリーランスの編集者・ライター。2011年3月生まれの女の子のママ。「質問」でコミュニケーションを深める『しつもんかるた』(税込2160円)を制作。しつもんかるた公式サイト:situmon-karuta.com

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