4月に進学・進級し、新しい環境になって、早1カ月。子どもに友達ができているかどうかは、親としては心配な要素の1つです。そこで、教育評論家の親野智可等さんに親として、どう子どもをフォローすべきかをお聞きしました。
友達に好かれる子になるには、家庭での親子関係が大切
友達に好かれるのは、一緒にいて楽しい子、明るい子、さらにはスポーツが上手な子、勉強ができる子、見た目がいい子…などが思いつくかと思います。しかし、親野先生によれば1番好かれる子は、「思いやりのある子」なのだそう。
「思いやりがある子は、友達が嫌がることや傷つけることは言いません。自分勝手なことや自己中心的なこともしません。いつも相手の気持ちを考えて話したり行動したりできるので、多くの子に好かれます。」
では、我が子を思いやりのある子に育てるにはどうしたらよいのでしょうか?
「子どもは親にしてもらったのと同じことを人にするようになるので、親が子を思いやりながら育てることが大切です。そのためにはまず子どもの状態や気持ちを理解することです。」
「自分だったらどうか?」と想像して、子どもの状態や気持ちを理解すれば、自然と子どものしてほしいことを受け入れること(=受容)ができ、共感が生まれるそう。この「理解・受容・共感」の3つが「思いやりながら育てる」ためのキーワードだと親野さんは言います。
「例えば、朝の登校直前に、子どもが国語の教科書が見当たらないと言い出したとします。そういうときは、ぜひ一緒に探してやってほしいのです。『困るのもいい薬だから放っておこう』『自分が困れば直るだろう』というようなしつけ主義的な発想を優先していると、子どもは『冷たいな…』と思うようになります。」
「一緒に探して見つけてやって、まずは子どものピンチを救って安心させることが親の愛情です。ピンチを救ってあげたあとで、同じことを繰り返さないための具体的な工夫を考えればいいのです。」
子どもの話し方は親に似てくる!親の口ぐせを直そう
また、友達と楽しく上手に会話ができる子は、友達関係もうまくいくことが多いです。では、会話力を身につけさせるにはどうしたらいいのでしょうか。
「我が子の話し方を聞いていて、自分に似てきたなと思ったことはありませんか? 長年一緒に生活している家族なら、似てくるのも当たり前です。そして、話し方が似てくると同時に考え方も似てくるということを、親は頭に入れておくことが大切です。」
「脱いだ靴はそろえないといけないんだよ」「先に手を洗わないとダメだよ」というように、「ない」や「ダメ」などの否定的な言葉が入った言い方を親にされると、それが体に染みついてしまいます。否定的な言い方が口ぐせになっている子は、友達といい関係を作りにくくなる傾向があるそう。
「親は、日頃から『脱いだ靴をそろえておくと気持ちがいいよね』『先に手を洗うとすっきりするよ』と肯定的な言い方ができるように努めてください。そう心がけていれば、子どもとともに、否定的な口ぐせも直ることでしょう。また、子どもをほめることも心がけてほしいです。親にほめられている子は友達をほめるようにもなるので、いい友達関係を作ることができるようになります。」
友達との人間関係を調節する力=「友達力」をつけよう!
さらに、友達との人間関係を調節する力=「友達力」をつけるために、子ども同士の関わり合いである「友達体験」を増やすことも大事なのだそう。
「学校の休み時間や放課後に友達と遊ぶことは、もめごとやケンカがあったり、謝ったり、仲直りをしたりということを繰り返して、友達との関わり方を学んでいける貴重な時間なのです。しかし、今の子どもは、昔の子どもに比べて、ゲームやマンガなどの1人遊びの選択肢が増えたことで、友達体験が少ないために友達とのコミュニケーションがうまくいかない子が多いようにも感じます。」
そのため、親の働きかけで学校以外で友達体験を増やすこともおすすめです。
近所やクラスの友達と遊ぶ時間を保証してあげる
「近所やクラスの子どもたちとの友達体験を増やすために、明るいうちに遊ぶ時間を作ってあげることも重要です。『先に遊びに行ってもいいから、帰る時間は絶対守りなさい』と言って、遊びから帰ってきてから宿題をやることを約束すればいいのです。」
塾、習い事、スポーツ少年団などで友達体験を増やす
「子どもでも、集団の中ではいつの間にか決まったキャラを演じていることもあります。なので、知り合いがいない集団で、学校とは違う友達と出会うことで、新しい自分のキャラと出会うことできます。違うキャラになることで、子どもにとって自信になることもありますし、同じ活動をして友達体験を増やすことは、子どもの友達力を伸ばすのに役立ちます。」
「友達ができない=悪いこと」ではない
友達を作って、仲良くすることは大切です。しかし、もともと友達と一緒にいるより1人でいるほうが好き、という子もなかにはいると思います。その子には、無理に友達を作ることを勧めなくてよいのだとか。
「『友達といる力』と同じくらい『1人でいる力』も重要だと考えています。1人の時間に、自分のやりたいことをとことんやることは素晴らしいことです。自分の得意なところを伸ばして内面を豊かにし、個性を磨いて自分の世界を作ることができます。」
「自分の世界がある子は、必要以上に友だちに依存することもなくなります。友達とうまくいかないことがあっても落ち込みすぎたりしませんし、友達から『○○さんをいじめよう』などと誘われても断ることができます。また、その世界の中で独特の友達が持てるようにもなります。」
「友達ができないことは、悪いことではありません。いつでも大事なのは、人に対して誠実に接するということです。それを心がけていれば、今現在子どものまわりに馬の合う人がいなくても、これからたくさんの出会いがある中で自然にそういう人と出会えるはずです。」
「子どもに友達ができない」と不安がるよりも、まずは親子関係を見直して、子どもの友達力をつける努力から始めてみてはいかがでしょうか。1カ月後、3カ月後、半年後…、「学校が楽しくてたまらない!」と笑顔で登校する子どもの姿が見られるかもしれません。