トイレトレーニングが終わっても、おねしょ・おもらしが治らない…。そんな悩みを抱えるパパ・ママは多いと思いますが、小学生になっても治らないと親子ともに不安になりますね。子どもの排尿トラブルに詳しい昭和大学藤が丘病院小児科の池田裕一先生にお聞きして対処法をまとめました。
おねしょとおもらしは別モノ
まず、おねしょと昼間のおもらしでは、とるべき対応がまったく違うそう。
「おもらしは膀胱や尿道の機能や神経に問題がある場合も多く、医学的治療が効果的なケースも。一方、おねしょは科学的にはまだ原因がはっきりせず、生活改善が中心となります。また、おねしょもおもらしも複数の原因があることが多く、遺伝的な要素や精神的な要因など原因もさまざま。お子さんに合わせた検査や治療が必要ですから、正しい知識と理解が不可欠です」
池田先生によると、おねしょとおもらしを同一に扱ってしまったり、一過性のものと軽視してしまう医療機関も少なくないそう。かかりつけを受診して「心の問題」「大きくなれば治る」「育て方が悪い」などと言われ、ほとんど診察してもらえなかった経験を持つ方もいるのではないでしょうか。
まず、受診のめやすと内容は以下の表の通りです。

「経過観察」=家庭でしばらく様子を見てOK
「生活改善」=受診した上で生活指導に従う
「治療開始」=生活改善と合わせて医学的治療を開始
ただし、本人が気にしている場合や宿泊をともなう行事の予定がある場合は、早めに受診するのがベター。もし新年度で、入学や進級のストレスで一時的に悪化したと思われる場合は、GW明け頃まで様子を見てOKです。
おもらしの基礎知識と対策
では、まず最初に「おもらし」の原因と治療法からお聞きしました。おもらしの場合、医学的治療が必要になるケースも多いそうです。
おもらしの原因はさまざま。6歳以上ならまずは受診を
おもらしでは、週に1回以上起きてしまう子どもが平均して100人中5〜6人程度。4歳〜5歳から割合が増え、意外にも7歳〜9歳頃にピークになるそう。おねしょにくらべ医学的治療が必要になるケースが多いといいます。
「原因がはっきりしない場合も多いですが、膀胱や尿道、腎臓の機能や、背中や骨盤の神経の形態に問題があり、放置すると尿路感染を繰り返したり、腎障害を起こすケースも。専門医による診断と治療が不可欠です」
おもらしには「行きたくなるとがまんできない」「おしっこが1回で出切らず頻繁にトイレに行きたくなる」「おしっこの回数が少なすぎる」などさまざまなタイプと原因があり、素人判断は禁物。まずは受診してみましょう。
病院ではレントゲンやエコーで原因を見極めます
血液・尿・お腹(背骨)のレントゲン撮影とエコーなどの検査、おなか(背骨)の触診、背中とお尻の形・皮膚の状態の診察、問診をして、どんなタイプのおもらしか見極めます。診断結果によってはさらに精密検査が必要になる場合もありますが、ここまでに痛い検査や診察はありません。その後、検査の結果によって、家庭での生活改善やトレーニングを行ったり、膀胱や尿道、腎臓の機能に問題がある場合には投薬や手術が必要になるケースもあります。
受診は専門医がいる大学病院や小児専門病院へ
上記のような検査や診察が必要になる場合が多いので、設備や臨床データが整った泌尿器専門の小児科医がいる大学病院や小児専門病院などを受診するのが確実。判断に迷う場合やすぐに受診するのが難しい場合は、かかりつけや近隣の小児科を一度受診し、紹介をお願いするのもいいでしょう。
おねしょの基礎知識と対策
では次に、「おねしょ」の原因と治療法をお聞きしました。おもらしの場合と違い、おねしょは生活改善をすることで治ることも多いそうです。
おねしょの直接的な原因はわかっていない
おもらしにくらべて病気が隠れている可能性は低いのが、おねしょ。一般的には週1回以上のおねしょが続くと「夜尿症」と診断されますが、こちらは何が原因なのでしょうか。
「睡眠中のおしっこの量をコントロールする『抗利尿ホルモン』の分泌量が少なかったり、自律神経の働きや睡眠の状態が影響すると考えられています。一般的には育て方や本人の性格、さらに精神的な問題などに原因があると言われることもありますが、医学的には、そういったことが原因になっているとは言えません」
治療は生活改善からスタート
機能的な異常が原因の場合は多くないため、まずは食事や寝る前の水分の摂り方、睡眠環境など家庭での状況を問診し、診察と尿検査・血液検査を行います。問診の結果をもとに生活改善からスタートし、次の受診までに改善しない場合や、尿検査・血液検査で異常が見つかった場合には、精密検査や抗利尿ホルモン投薬治療などを検討します。
夜尿症の治療をしてくれる小児科や泌尿器科へ
規模の大小に関係なく夜尿症の診療をハッキリとうたっている小児科や泌尿器科へ。HPや電話などで診療内容を確認すると確実です。
ただし、おねしょの場合も、ごくまれに脳腫瘍や糖尿病・腎盂炎などの病気が隠れていることがあるため、以下のような症状がある場合はCTや超音波、MRIなどの検査が可能な医療機関を受診すると安心です。
- 発育の遅れが見られる
- 注意欠損や多動があるか学習障害を指摘されたことがある
- 尿路感染症や膀胱炎にかかったことがある
- 昼間のおもらしが多い
- 背骨(腰椎)やお尻の皮膚に異常がある
- 頑固な便秘や便のおもらし(便失禁)がある
- 睡眠時に息を止めたり、大きないびきをかく
日誌をつけて克服までの最短ルートを

また、受診とともにおもらし・おねしょの改善に有効なのが、日誌をつけること。おねしょ・おもらしの状況や食事の内容、尿意の有無、時刻、出たおしっこの量などを記録するものです。
「おしっこのトラブルのパターンや重症度などさまざまなことがわかって診察の際の参考になるだけでなく、コントロールにも大いに役立ちます。余裕があるときだけでもいいので、ぜひ続けてみてください」
おもらし・おねしょとも成長につれて治ることが多いとはいえ、子どもの日常生活に大きな影響を与え、心にも大きく影を落としてしまうもの。専門家の手を借りた適切な対応で一刻も早く克服し、親子とも自信を持って過ごせる毎日を手に入れましょう。